261: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:43:39.51 ID:FLcWsv7Mo
◇
ナナが私の手を放したのは、アラガミの視界からある程度離れて、すぐの事だった。
彼女は立ち止まると、私にアンプルを差し出す。
262: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:45:15.15 ID:FLcWsv7Mo
単純な話だ。
人を信じるというのなら、まずはそう想える程の自信を持たなければならない。
私には、それがない。
彼らを信じていられたのも、"喚起"と副隊長の地位があれば見てもらえるという、依存があったからだ。
263: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:48:12.84 ID:FLcWsv7Mo
目標地点に向かうと、そこには既に、私達を待ち構える影があった。
先の鳥人型に似通った形状ながら、張り出した乳房にハイヒール状の両足と、女性的な要素を強調したシルエット。
水色の体毛に覆われたその全身は、妖艶な雰囲気を醸し出していた。
264: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:53:16.02 ID:FLcWsv7Mo
下僕を誑かされた怒りなのか、"感応種"は一際大きな声を上げ、新たな眷属を生み出す。
出現した2体を私に向かわせると、"感応種"自身は空高く駆け上った。
神機使いでも届かない上空から、2体を同時に串刺しにした私目がけ、体当たりを仕掛けてくる。
265: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:57:14.70 ID:FLcWsv7Mo
未だ、鼓動は高鳴っている。
だけど、その心境は不思議なほど、落ち着いていた。
ずっと探し求めて、徐々に見えてきた、私の輪郭。
266: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 03:01:41.87 ID:FLcWsv7Mo
「避けてっ!!」
ナナの叫びが、契機となった。
神機から、より大きく、鋭く研ぎ澄まされた、真紅の槍が生成される。
267: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 03:04:07.80 ID:FLcWsv7Mo
◇
――宣言通り、何事もなく生還した2人と合流したのは、それからしばらくしての事だった。
268: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 03:06:07.02 ID:FLcWsv7Mo
「……ふふ」
他愛もない、いつものやりとり。
だけど、その光景が、ひどく懐かしく感じられて。
269: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 03:08:13.11 ID:FLcWsv7Mo
彼らが見ている私と、私の望み。
それは自覚していなかっただけで、同じものだったのかもしれない。
けれど、過去に揺れて、孤独に戻ろうとした弱さを、否定したくはなかった。
それもまた私の本質で、なかったことにはできない。
270: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 03:13:35.85 ID:FLcWsv7Mo
「……シエル、渡してやれ」
「ここで、ですか?」
271: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 03:18:20.89 ID:FLcWsv7Mo
「ジュリウス以外は副隊長に助けてもらってるだろ、ってね……私は、みんなに助けてもらっちゃったけど」
「あいつは無茶な事しか言わないから、結局そんな小物に落ち着いちまったがな」
「それに……渡すまで、時間もかかっちまった」
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