256: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:35:59.60 ID:FLcWsv7Mo
◇
――砂塵舞う、無人の居住区。
私達はあの時と同じ地に立つ、一体のアラガミと相対していた。
257: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:38:00.59 ID:FLcWsv7Mo
撃ち出したオラクルはアラガミに命中するも、眼前で組まれた両腕の盾によって、直撃は阻まれていた。
それでも、こちらの狙いに沿えてはいる。
やや前方に着地した私は神機を変形させ、隙のできた前脚の関節部に、槍を突き立てた。
……その行動理念は、やはり父の言葉と似通ったものになっているかもしれない。
258: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:39:22.62 ID:FLcWsv7Mo
その、一瞬だった。
私達が先ほどまでいた地点に、いくつもの落雷が発生する。
八つ当たりとも取れる尾針の乱打を抑え、未だ屈辱に逆巻くアラガミは、怒号と共にその身を屈めた。
259: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:40:42.53 ID:FLcWsv7Mo
――アラガミの奇声が、私の思考を一時的にかき消す。
私とナナから離れた、ギル達の組に標的を定めたアラガミは跳躍し、その質量で彼らを押しつぶそうとする。
当然彼らはそれを避け、そのままヤツとの近接戦闘に移行した。
飛んできた尾針の突きを受け止め、地に足跡をつけたギルの視線が、私の方へ向く。
260: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:42:02.12 ID:FLcWsv7Mo
叫びと共に、シエルの短剣がアラガミの槍を跳ね上げる。
『君の導いてきた、"ブラッド"が……』
261: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:43:39.51 ID:FLcWsv7Mo
◇
ナナが私の手を放したのは、アラガミの視界からある程度離れて、すぐの事だった。
彼女は立ち止まると、私にアンプルを差し出す。
262: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:45:15.15 ID:FLcWsv7Mo
単純な話だ。
人を信じるというのなら、まずはそう想える程の自信を持たなければならない。
私には、それがない。
彼らを信じていられたのも、"喚起"と副隊長の地位があれば見てもらえるという、依存があったからだ。
263: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:48:12.84 ID:FLcWsv7Mo
目標地点に向かうと、そこには既に、私達を待ち構える影があった。
先の鳥人型に似通った形状ながら、張り出した乳房にハイヒール状の両足と、女性的な要素を強調したシルエット。
水色の体毛に覆われたその全身は、妖艶な雰囲気を醸し出していた。
264: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:53:16.02 ID:FLcWsv7Mo
下僕を誑かされた怒りなのか、"感応種"は一際大きな声を上げ、新たな眷属を生み出す。
出現した2体を私に向かわせると、"感応種"自身は空高く駆け上った。
神機使いでも届かない上空から、2体を同時に串刺しにした私目がけ、体当たりを仕掛けてくる。
265: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 02:57:14.70 ID:FLcWsv7Mo
未だ、鼓動は高鳴っている。
だけど、その心境は不思議なほど、落ち着いていた。
ずっと探し求めて、徐々に見えてきた、私の輪郭。
266: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/02/19(金) 03:01:41.87 ID:FLcWsv7Mo
「避けてっ!!」
ナナの叫びが、契機となった。
神機から、より大きく、鋭く研ぎ澄まされた、真紅の槍が生成される。
534Res/441.23 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20