202: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/12(火) 01:47:00.63 ID:sot8cAHCo
ひとたび立ち止まれば、額に汗が滲み、息も乱れる。
頭を垂れ、膝を手についたその全身は、鉛の重さにも似た倦怠感に覆われていた。
自分だけでなく、神機にまで影響をもたらす"ブラッドアーツ"の発動は、肉体に少なからず負担を強いる。
短期決着に固執した、先の戦いでの"ブラッドアーツ"の連発により、私の身体には通常の戦闘以上の疲労が蓄積していた。
203: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/12(火) 01:48:37.39 ID:sot8cAHCo
――"……父さんには僕の方から言っておく……どうせ聞き入れてはもらえないだろうが"
"ただ……母さんのことは、恨まないでやってくれ"
"……大丈夫だよ、お兄ちゃん……嫌いになんて、ならない"
204: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/12(火) 01:50:22.01 ID:sot8cAHCo
――屋内に足を踏み入れた途端、異臭が鼻腔を突いた。
思いつく限りの有機物と鉄を煮詰めて腐らせたような、今すぐにでも蓋をしてしまいたい臭い。
嗅ぐだけで吐き気がこみ上げてくるほどだけど、この場では何とか持ち直す。
当然ながら、中に人の気配はない。
205: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/12(火) 01:52:36.48 ID:sot8cAHCo
最初に見たのは、右胸から生えた腕だった。
次に見たのは、半分ほどもない顔だった。
一面の血だまり。
206: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/12(火) 01:54:40.51 ID:sot8cAHCo
床を蹴り、血の上った頭でアラガミとの距離を詰める。
敵の存在を認めたアラガミは、真っ先に斬りかかるこちらの攻撃を、横っ飛びで軽々とかわしてみせた。
ヤツはその巨体にとって不利であろう狭所を物ともせず、むしろ跳んだ先の壁をバネにすることで、私に急襲を仕掛けてくる。
間一髪で攻撃をかわし、神機を振り下ろすも、既に着地を終えていたアラガミは再度その場から飛び退いた。
207: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/12(火) 01:56:20.08 ID:sot8cAHCo
――戦火に包まれ、混迷の様相を呈した街。
群衆は一様に何かを見上げ、怯えた顔で逃げ惑う。
その人々は無情にも、大小の手足に踏み潰されていく。
208: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/12(火) 01:58:33.31 ID:sot8cAHCo
肉を轢き潰し、骨を砕いた時に生じる、この快感は何だ。
痛みと恐怖に怯え、引き攣った顔を眺め見た時の、この高揚感はどうだ。
……タノシイ。
そう、タノシイだ。
209: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/12(火) 02:01:03.18 ID:sot8cAHCo
――視界が、ぐにゃりと歪む。
意識がここに引き戻された時、待っていたのはアラガミの反撃だった。
脇腹に直撃をもらい、後方に吹き飛ばされる。
私はまともに受け身も取れないまま、壁に背中を叩き付けた。
210: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/12(火) 02:03:25.10 ID:sot8cAHCo
「ぐ、う……あぁぁぁ……!!」
悶え苦しむ私を眺めるアラガミの口の端が、大きく吊り上がった、ように見えた。
ひと思いに潰してしまえばいいものを、徐々に力を強めてくる。
211: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/12(火) 02:04:48.50 ID:sot8cAHCo
「……ぁあああああっ!!」
銃形態に移行させた神機をアラガミの顔面に押し当て、残留していたオラクルを全て吐き出す。
油断しきっていたアラガミは思わぬ反撃に戸惑い、煙を上げながら後ずさった。
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