210: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/12(火) 02:03:25.10 ID:sot8cAHCo
「ぐ、う……あぁぁぁ……!!」
悶え苦しむ私を眺めるアラガミの口の端が、大きく吊り上がった、ように見えた。
ひと思いに潰してしまえばいいものを、徐々に力を強めてくる。
このアラガミは、捕喰を楽しんでいる。
人間から感情を学習し、自らの間近で人々がもがき苦しむさまを、心底悦んでいる。
直前に垣間見た記憶は、やはりヤツのものだった。
与えられ続ける恐怖と痛みで、私の顔がアラガミの望み通りに歪みかける。
せめてもの抵抗に顔を伏せると、足元に転がっていた、顔だったものと目が合った。
虚ろな瞳は、持ち主の無念を表すようでいて。
……私を見ようとしない、彼のそれに似ているような気がした。
辛うじて神機が置かれていただけの右手に、力が宿る。
例え消滅させることが出来ないにしても、このアラガミを野放しにするわけにはいかない。
彼らを無事に帰らせるまで、死ねない。
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