【女の子と魔法と】魔導機人戦姫U 第14話〜【ロボットもの】

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498 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:08:42.56 ID:V0zga9kFo
月島『さて……前々から言いたかったのだが、
   ギガンティックウィザードはその名の通り巨大な魔術師……つまり魔導師の身体を拡張した物だ。

   それを量産機ならばまだしも、個々人の専用に作られた物をやれ武装の性能だ、やれ機体の機能だ、
   と余計な物ばかりに頼るのはいかがな物かと常々考えていたのだよ』

 月島は辟易したように呟きながら“まあ、それが個人専用ワンオフ機の特徴でもあるがね”と自嘲気味に呟いた。

 そして、気を取り直してさらに続ける。

月島『仮にも魔導師ならば、君の妹のように、
   ギア代わりの装備一つと魔導師本来の技で戦うべきだと思うのだよ……私は』

 月島の言葉と共に、カレドブルッフは背中から一対のショートロッドを取り出し、構え直す。

臣一郎「その構え……!?」

 カレドブルッフの構えに、臣一郎は愕然と漏らした。

 ショートロッドを二刀流のように構える姿には、臣一郎にも見覚えがある。

 無論、その構えをする人物自身を見た事はない。

 だが、教導映像で幾度も見た事があるその構えは、
 おそらく、十人に八人は“世界最強”と推すだろう人物の構えだった。

月島『カレドブルッフには君ら世代のデータに加え、
   父母、祖父母らの世代のデータも入力されている。

   中でも私は彼女の戦い方が最も“魔導師として美しい”と考えている……そう、フィリーネ・ウェルナーの戦い方がね』

 月島が恍惚とした声音で呟くと、瞬時にその周囲に無数の多重術式が展開される。

月島『さあ避けてみたまえ! 三世代前の最強を討ち破り、
   英雄すらも超えた最強の魔導師が最も得意とした儀式魔法、リヒトファルケンをっ!』

 カレドブルッフが多重術式の一つをショートロッドで叩くと、術式の表面から無数の光のハヤブサが舞った。

 カレドブルッフ……月島の指し示す通りに舞う光のハヤブサは、上空からクルセイダーに襲い掛かる。

臣一郎「デザイア! E.B.G.S、出力全開だっ!」

デザイア『イエス、ボスッ!』

 叫ぶような臣一郎の指示に応え、デザイアはブラッドの圧力を上昇させた。

臣一郎『本條流魔導格闘術奥義! 円ノ型壱・改! 流水・円舞掌ッ!』

 そして、臣一郎は本條流魔導格闘術奥義の中でも守りに優れる円ノ型の一つ、
 円舞掌【えんぶしょう】に水を纏い、振り払うような動作で閃光変換された魔力のハヤブサを防ぐ。

 閃光変換は通常の純粋魔力よりも威力が高い分、遮蔽物や水のように乱反射、屈折させる物に弱い。

 臣一郎の選択肢は的確と言えただろう。

 だが、リヒトファルケンを前にして、ベストな選択肢はベター以下に成り下がる。

臣一郎「ッ、ぐっ!?」

 防ぎきれぬほどに大量の光のハヤブサは、防御の隙を縫って確実にクルセイダーの全身に降り注ぐ。

 次々と襲い来るハヤブサの連撃に、臣一郎は苦悶の声を上げた。

月島『さあ、次はこのリヒトビルガーをどう防ぐ!』

 月島が次に三つの多重術式を連続で叩くと、その術式から一羽ずつ、光のモズが一直線に飛翔し、
 避ける間も無くクルセイダーの腹、胸、腿へと直撃する。

臣一郎「ぐぁ……ッ!?」

 臣一郎はたじろぎながらもすぐに体勢を立て直した。

 クルセイダーは大型だが、格闘戦を想定しているため、決して鈍重な機体ではない。

 リヒトビルガーは威力を引き換えに速度を高めた、回避の難しい超高速の鳥型魔力弾だ。

 同じく回避の難しい絨毯爆撃のような鳥型魔力弾のリヒトファルケンと組み合わせれば、
 タイミング次第では回避困難の魔法は回避不可能の魔法へと姿を変える。
499 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:09:10.57 ID:V0zga9kFo
月島『ギガンティックウィザードは素晴らしい……。

   私のような魔導戦の凡夫でさえ、本来ならば多量の魔力を要する
   多重術式の複数展開・待機すら意図も簡単にやってのけさせ、
   数々の魔法すらこうして思った通りに発動可能となる』

 月島は感慨深く呟きながら、次々と術式を起動させて行く。

 光のハヤブサが、光のモズが、次々とクルセイダーに襲い掛かる。

 上空から、正面から、右から、左から、時には回り込んで背後から……
 文字通り縦横無尽に蹂躙されてしまう。

 E.B.G.Sで防御――ブラッド・プリズンを展開しようにも、
 噴出させた瞬間にブラッドを相殺されてしまっては元も子もない。

 臣一郎も必死に円ノ型の防御を続けるが、次第に受ける攻撃の数が増えて行く。

 そして、実戦では負け無しを誇った210Xが、遂に膝を突く瞬間が訪れた。

 左膝への側面と背後からの同時攻撃に、左膝の関節が悲鳴を上げる。

臣一郎「ぬぅ、ぐぅぁ……!?」

 気合だけで痛みを堪える余裕もない波状攻撃に、臣一郎は食いしばった口元から苦悶の呻き声を漏らす。

 自重を支える事の出来なくなった左膝が下がり始めると、一気に防御に隙が生まれる。

 そこを逃さず、上空から一斉に飛来したリヒトファルケンと、正面から五連発のリヒトビルガーが襲い掛かった。

 片脚だけでは十分な踏み込みも移動も出来ず、その殆どがクルセイダーに直撃する。

 装甲やブラッドラインはひび割れ、全身から流血のように青藍に輝くエーテルブラッドが溢れ出し、
 クルセイダーはその場に膝を突いた。

臣一郎「デザイア、ブラッドの入れ替えを、急いで……くれ」

デザイア『ブラッド損耗率九〇パーセントオーバー、ブラッドを排出しつつ新規ブラッド注入開始』

 絶え絶えの声で指示を受けたデザイアは即座にブラッドを入れ替えようとする。

 機体がボロボロでも結界装甲の出力を定常値まで復帰させ、
 ブラッド・プリズンを展開できればまだまだ耐える事は出来る筈だ。

 しかし、そんな臣一郎とデザイアを嘲笑うかのように、無傷のカレドブルッフが彼らの前に仁王立ちになる。

月島『その機体がそこまでボロボロになるのは、無人状態の所を攻撃されて以来か……。

   だが、第二世代型に改修後、起動状態でここまで傷だらけになったのは初めてではないか?
   ……正に、歴史的瞬間だな』

 月島は殊更に感慨深く言いながら、ショートロッドの先端に作り出した集束魔力刃で、
 クルセイダーの背から伸びる二本のケーブルを……タワー型タンクからブラッドを供給しているソレを切り裂いた。

 高圧でブラッドを送り込んでいたケーブルは、まるで大蛇がのたくるように暴れ回り、
 辺りに鈍色のブラッドを撒き散らし、二機の頭上から雨のように降り注ぐ。

 正門前で戦うクルセイダー最大のアドバンテージは、ほぼ無限に供給されるブラッドにある。

 それを失い、僅かな純度のブラッドしか持たないクルセイダーに勝ち目は無い。

 だが――

臣一郎「悪いが……シミュレーター訓練を勘定に入れるなら、
    この間、僕らを中破まで追い込んだ子がいたよ……」

 臣一郎は苦しそうに漏らし、全身を痛みで震わせながらも立ち上がろうとする。

月島『ほぅ……? 油断でもしていたかね? それか、相手はあのハイペリオンイクスか?』

 微かに驚いたような溜息を洩らすと、月島は怪訝そうに尋ねた。

臣一郎「性能でしか考えられないのか……。
    センチメンタルな持論を言う割に、意外とロジカルなんだな……あなたは」

 臣一郎はそう答えて、“ふっ”と鼻で笑う。

 それが、今できる精一杯の抵抗だった。

 戦いには負けたが、心は折れていない。

 拳を握る力は無くとも、抗う意志は砕けていない。
500 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:09:47.69 ID:V0zga9kFo
月島『何か、おかしいのかね?』

臣一郎「ああ……性能だけで考えている割に、半分は当たりだ……。
    僕らを追い込んだのは朝霧空君“たち”だ……」

 微かに不機嫌さを漂わせた月島の問いに、臣一郎は意味ありげに応える。

 “たち”と強調された言葉に、怪訝そうに短く唸り、月島は溜息混じりに口を開く。

月島『……何を言い出すかと思えば。

   ハイペリオンイクスは確かに高性能だが、スペックではその210と大差は無い。

   あちらの戦場はリアルタイムで観察していたが、
   204と205は大破同然、201も無視できないダメージがある。
   203は無事なようだが、たった二機のギガンティックで何が出来る?』

 月島は言葉通り、もう一つの戦場であった第四フロートでの戦闘を観察していた。

 生憎、スクレップは二機とも破壊されてしまったが、
 ハイペリオンイクスをギリギリまで追い込んでいたのは確かだ。

 事実、空達はレミィ達を置いて、こちらに向かっている。

 クルセイダーを討ち破り、ハイペリオンイクスが使用不可能になった今、
 五体満足で動けるギガンティックの中に、カレドブルッフと互角以上に戦える機体など存在しない。

月島『私はもう……目的のほぼ全てを果たしたよ。

   あとは君と210を生け贄にして、この世界に新たな守護者の誕生を高らかに宣言するだけだ。
   ……カビの生えた古い守護者は必要ない、とね』

 月島は感慨深く呟く。

 月島の目的は既に彼自身の口からも語られた通りだ。

 アレクセイ・フィッツジェラルド・譲羽と言う一人の科学者が作り上げた伝説に、巨大な風穴を開ける。

 開けた風穴から吹き込む新風で、伝説を薙ぎ倒す。

 もう、その目的は最後の一手を残す所まで来た。

 月島はコントロールスフィア内に据え付けられたシートに座り、
 数多のコントロールパネルに囲まれながら、自嘲とも感嘆とも取れる複雑な溜息を洩らす。

月島「私はね……君らの祖父であるアレクセイ氏に敬意を払っているよ……。
   生涯でただ一人、本気で愛した女性の父親だ……。
   無論、研究者や技術者としても尊敬している……」

 朗々と呟く月島は、どこか遠くを見るように自らの手を見遣った。

月島「だがね……彼の作り出した物だけでは、
   世界は……………全て守りきる事は出来ない。

   必要なのは誰でも扱える汎用性と、今以上の性能だ」

 そして、手を握り締める。

月島「それを誇示するために……君にだけは、その機体と共に死んで貰おう」

 月島の声に応えるかのように、スクレップは膝を突いたままのクルセイダーを右手で吊り上げた。
501 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:10:13.89 ID:V0zga9kFo
 全身から溢れる青藍のブラッドがしたたり落ち、次第に鈍色に変わる水たまりを広げて行く。

 既に幾らかの魔力リンクが切断されており、臣一郎とデザイアに抵抗する術は無かった。

 ただ、心だけは負けない。

 無駄な、だが、決して無意味ではない抵抗を続けるだけ。

 微かに動く身体を捩り、まだ辛うじて動く左腕で拘束を解除しようと試みる。

 しかし、その間にも刻一刻と死は迫っていた。

 カレドブルッフは左手で手刀の形を作ると、
 それをクルセイダーの胸……コントロールスフィアとハートビートエンジンのある位置に向ける。

 手首から先を覆う魔力刃は、停止寸前のクルセイダーを意図も貫くだろう。

 予行演習とばかりに、抵抗を続ける左腕を貫手で切り落とす。

臣一郎『っぐぁぁ………ッ!?』

 必死に堪えても堪え切れない苦悶が、臣一郎の口から零れる。

月島「ここまで来たのだ……一層、残酷に……行こう」

 月島は目を細め、感情を押し殺すようにしてそう酷薄に呟くと、両脚を切り落とした。

 その度に、臣一郎の口から短い苦悶が上がる。

 既に抵抗など出来ずにだらりと下がった右腕には目もくれない。

 切断された四肢の付け根から、大量のブラッドが溢れ、ブラッドの水たまりをさらに広げて行く。

 支え持っている頭部は潰さない。

 頭を潰すのは最後……ドライバーとエンジンを貫いてからだ。

月島「長かった……長い、四十年だった」

 最後の瞬間が近付き、月島は感涙寸前と言った表情で呟く。

 もう誰も、自分を赦す者はいないだろう。

 だが、それでいい。

 自分が生み出した結果にだけでも、価値を見出してくれる人間がいれば、それだけでいいのだ。

 純粋に研究者であり、技術者であり続けた男の、切なる願い。

 月島は左腕のリンクを接続すると、自らの手を引き絞った。

 最後の一撃だけは、自らの手で行いたい。

 それが贖罪なのか、感傷なのかは月島本人にも分からない。

月島「伝説よ……終われ」

 だが、突き出した手と共に不意に口をついた言葉で、それが感傷だったと理解した。

 突き出された貫手が、クルセイダーの胸を貫かんとする。
502 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:10:44.68 ID:V0zga9kFo
 その瞬間――

?『させないっ!!』

 鋭い叫びと共に、虹色の輝きがスクレップの貫手と激突した。

 エールだ。

 クルセイダーに貫手が接触する寸前、
 リコルヌシャルジュで突っ込んで来たエールが、カレドブルッフの貫手を受け止めたのである。

月島「むっ!?」

 突然の出来事に、さしもの月島も息を飲む。

 だが、それだけでは終わらない。

??『02、イグニションッ!』

 エールとは逆方向から走り込んで来たクライノートが、
 加速された二つ拳でカレドブルッフの手首を激しく強打した。

 当たり所が悪かったのか、それとも一方の腕だけリンクを接続していためか、
 衝撃で手首の関節がエラーを起こし、クルセイダーを放り出してしまう。

 片腕と両脚を失ったクルセイダーはそのまま叩き付けられるかと思われたが、
 飛び込んで来た一機のギガンティックがソレを受け止める。

 クレーストだ。

 突風・竜巻と共に粉々にされたと思われていたクレーストが、
 ボロボロになったクルセイダーを受け止めていた。

茜『兄さん、無事!?』

臣一郎『あ、茜……か……お前こそ、無事だったのか……?』

 慌てて問い掛ける茜に、臣一郎は絶え絶えの声で問い返す。

クレースト『激突の衝撃で短時間の機能停止はしましたが機体への影響は軽微です』

 それに答えたのはクレーストだ。

月島「なんとも……撃破を確認しなかったのは誤りだったか」

 周囲の状況を見遣りながら、月島は溜息がちに呟く。

 あの時、全身ヒビだらけの突風・竜巻をクレーストに投げつけたが、
 どうやらあの時に粉々になったのは突風・竜巻だけだったらしい。

 考えてみれば当然だ。

 ヒビだらけのガラスを同じ強度を持った無傷ガラスに叩き付けても、
 粉々になるのはヒビだらけの方で、もう一方には大きな被害は出ない。

 機体同士の激突と壁面に叩き付けられた衝撃で一時的に機能停止には陥ったが、
 月島は確認する事なくすぐに立ち去ってしまったため、追い討ちされる事は無かった。

 完全に無傷と言うワケではないが、それでも戦闘可能には違いない。

月島「……ええいっ!」

 自らの犯した凡ミスに苛立ち、月島はエールとクライノートを力任せに振り払う。

 二機は何とか空中で衝撃を受け流すと、クレーストとクルセイダーを守るように地上に降り立った。

 クレーストも離れた位置にクルセイダーを下ろすと、クライノートとは逆の位置でエールの隣に並び立つ。
503 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:11:24.35 ID:V0zga9kFo
 仲間達と並び立った空は、コントロールスフィアの中で冷や汗を拭っていた。

空(話には聞いていたけど、凄い……。
  リコルヌシャルジュを受け止めた上に、簡単に振り払われるなんて……)

 肌で感じ取った敵の強さに、空は心中で舌を巻く。

 あと一瞬でも遅ければ臣一郎を助ける事も出来なかったが、それだけに敵の恐ろしさが際だつ。

 防御不可能のアルク・アン・シエルの派生魔法が受け止められ、振り払われたと言う事は、
 魔力の上で敵がこちらを完璧に圧倒していると言う事だ。

 その上、ここに来るまでに茜から聞かされた話では、
 敵は風華達をオモチャを玩ぶかのように圧倒して見せたのだと言う。

 来る途中、残骸となってしまった仲間達の愛機は見て来た。

 性能的にはエール達も仲間達の機体と大差は無い。

 愛機が破壊されるのは目に見えている。

 だが――

空「……ごめんね、エール……ここは、引けないから」

エール『分かっているよ……空』

 決意を込めて呟く空に、エールは鷹揚に頷くように答えた。

 エールの返事を受けて、空は小さく頷いてから一歩踏み出す。

 ブライトソレイユを払うように構え直し、そびえ立つカレドブルッフを見上げる。

 白地に赤黒い輝きを纏う機体は、恐ろしい力を聞かされたせいか、見た目以上の恐ろしさを感じさせた。

 合同演習の際、幾度戦っても倒す事の出来なかったクルセイダーを、たった一機で呆気なく倒してしまった機体。

 それだけで彼我の戦力差が理解できると言う物だ。

 だが、それでも退くワケにはいかない。

 レミィとフェイが、自分達を信じて送り出してくれた。

 二人の信頼がこの背を押してくれている。

 だから退けない……いや、退かずにいられる。

 どんなに恐ろしい敵が相手でも、前に進む事が出来るのだ。

空「ユエ・ハクチャ……いえ、月島勇悟っ!」

 空は気合を入れ直すように月島の名を叫ぶと、さらに続けた。

空「あなたはこれまでに多くの人を傷つけ、今回もまた、私達の仲間を傷つけました。
  ……どんな理由があっても、それを赦す事は出来ません!」

 自らの目的のために多くの人間を貶め、傷つけて来た月島。

 人の思いを、命を玩び、踏みにじる彼は、やはり空が自分で斯くあるべきと願う信念の対極の存在だ。

月島『赦しなど最初から望んでいないよ……。

   私は私の目的のために為すべき事を為した、そのために必要な物は全て利用して来た。
   そうでなければ辿り着けない高みだからね』

 月島は空の断罪の言葉に淡々と返す。

 微かな後悔にも聞こえる言葉は、だが、決して赦しは望んでいなかった。

 そして、さらに続ける。

月島『……本当に赦しを乞わなければならないのは、
   たった一人の研究者の作り出した物に頼らなければならない、この世界そのものだ。

   この世界は歪んでいる……たった十人に頼らなければ生き延びる事が出来ない、
   たった十人にしか乗れないギガンティックなど、おぞましい歪みだ!』
504 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:11:52.66 ID:V0zga9kFo
空「ッ……」

 月島の言葉に、空は小さく息を飲む。

 その通りだ。

 そんな思いが空にも微かに存在していた。

 法をねじ曲げ、幼子すら戦場に駆り出す世界の構造。

 それは確かに歪んでおり、空にもその点は反論できない。

空「……だからと言って、あなたのやった事は正当化されません!
  そう思うなら、やるべき事が違ったでしょうっ!」

 空は怒りを吐き出す。

 世界が歪んでいるなら人の命を玩んでも良いワケがない。

 世界の歪みを正すためなら人の思いを踏みにじっても良いワケがない。

 自分が気に入らない歪みのために、多くの人を歪めて良いワケがない。

空「世界が歪んでいても、世界の歪みの中にいても……それでも必死に生きている人がいる!
  自分達で歪みを正しながら進もうとしている人達がいる……!」

 空は先日の真実の口から聞かされた、彼女の家族の事を思い出す。

 市民階級と言う制度で歪んでしまった真実の家族は、その歪みを正して家族の絆を取り戻した。

 世界全体の歪みに比べれば、小さな歪みだったかもしれない。

 だが、歪みを正して、親友の家族は共に歩み出したのだ。

 それは可能性であり、希望だ。

空「世界が歪んでいるなら、私は誰かと力を合わせてその歪みを正して行きます……!」

月島『大きな口を叩くのは構わないが、勝つ気でいるのか?』

 空が力強く言い切ると、月島は驚き半分呆れ半分と言った風に問い返した。

 繰り言だが、彼我の戦力差は圧倒的だ。

 そして、やはり繰り言だが退くワケにはいかない。

月島『私の目的は210とそのドライバーを殺す事……それ以外に用は無い。
   さあ、退いてくれないかね?』

 結果は決まったのだから面倒事はもう十分だと言いたげに、
 月島はカレドブルッフに手で人払いをするような仕草をさせた。

空「私達は、負けてなんかいないっ!」

 空は一喝する。

月島『ここに来て負け惜しみか……』

空「負け惜しみなんかじゃない! あなたは臣一郎さんとクルセイダーを殺せなかった!
  私達はみんなの力で間に合ったんだっ!」

 言いかけた月島の言葉を遮って叫ぶ。

月島『………何を言うと思えば、考えた方が飛躍し過ぎているな。

   カレドブルッフの足止めすら出来なかった者達の力で間に合った、とはね……。
   片腹痛いと言うんだ、そう言う屁理屈は』

空「レミィちゃんとフェイさんが送り出してくれた……!
  風華さん達はあなたを止めるために戦った………!
  誰が欠けても、私達は間に合わなかった!
  みんなが……みんなと一緒に繋いで来たんだ!」

 苦笑うかのような月島の言葉に、空は反論する。
505 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:13:13.15 ID:V0zga9kFo
 あの瞬間、あと一瞬でも遅れたら臣一郎は助けられなかった。

 あと一瞬、風華達が足止め出来ずにいたら?

 振り解かれたマリアの拘束は、だが確かにカレドブルッフの侵攻を押し留めた。

 苦し紛れの瑠璃華とクァンの攻撃は、それでもカレドブルッフを僅かに押し留めた。

 風華と茜は確実にカレドブルッフを遠ざけた。

 レミィとフェイが間に合い、美月の援護がなければ二機のスクレップは倒せなかった。

 二人が自分達を置いて行けと言ってくれなければ、
 クレーストの再起動をしようとする茜と合流し、この場に間に合う事は出来なかった。

 臣一郎が全力で抗わなければ、“あと一瞬”を後悔の言葉にしていただろう。

 自分達だけではない。

 軍や警察の多くのギガンティックドライバー達が、
 その“あと一瞬”を作るために全力を尽くしてくれた。

 戦場で戦った者達だけでなく、前線のドライバーを支援したオペレーターや、
 早急な戦力展開のために素早く避難した市民。

 おそらく、その誰か一人が欠けても間に合わなかった。

 最後の一撃を空が押し留める瞬間に間に合ったのは、
 多くの人々の意地や誇り、協力があったればこそだ。

 誰の行動も、誰かが通そうとした意地も、決して無駄などではなかった。

茜『……そうだな……全部が繋がっているんだ……』

 先ほどから押し黙っていた茜が、不意に口を開く。

茜『無駄な事なんて何も無かった……!
  どれ一つ欠けても、私達はここに揃ってはいない!』

 茜はそう言い切ると槍と短刀を構え直す。

美月『みんなが信じて戦ってくれた……。
   だから私もみんなの信頼に応えるため、全力を尽くします』

 美月も進み出て、全ての武装を起動する。

 無駄な抵抗かもしれない。

 だが、無意味ではないのだ。

 二人の言葉に後押しされて、空はまた一歩、進み出る。

空「あなたはオリジナルギガンティックを……エール達が歪んでいるとも言いましたね?」

月島『ああ、言った……言ったとも。
   自らが認める者しか乗せようとしない機体など……君はおぞましいとは思わんかね?』

 空の問いに、月島は頷くように答え、疑問を呈するかのように問い返した。

 空は、確かに世界の歪みには納得したし、同意もする。

 だが、コレだけは譲れない。
506 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:13:41.13 ID:V0zga9kFo
空「エール達は私達を選んでくれた……」

 空は朗々と言葉を紡ぎ始める。

 血の繋がり、意志の同調、魔力の同調。

 様々な理由で、彼らはドライバーを選んだ。

空「私達の思いを知って、一緒に戦ってくれている……!」

 居場所を守るため、大切な人のため、誇りのため……。

 彼らはその思いに応えてくれた。

空「エール達は……私達の大切な仲間だ!
  エール達は歪んでなんかいない!
  エール達と私達も繋がっている……!

  エール達を乗り継いで来た人達の思いと私達の思いも、エール達で……繋がっているんだ!」

 空は力強く、その思いの丈を叫ぶ。

 結・フィッツジェラルド・譲羽。

 姉である朝霧海晴。

 その二人が守ろうとした物を……大切な人達がいる世界を守りたいと願った思いは、空にも繋がっている。

 それは茜と美月も同じだ。

 初代ドライバーである奏・ユーリエフ、母である本條明日華。

 愛する人のために剣を取った二人の思いは、憎しみを振り切った茜の中にも確かに息づいている。

 クリスティーナ・ユーリエフの大切な人のためになら戦えると言う勇気は、
 仲間のために戦おうとする美月の思いにも通じる。

 みんなが、そうなのだ。

 風華と突風、瑠璃華とチェーロ、クァンとカーネル、マリアとプレリー、臣一郎とデザイア。

 彼らの思いは、何処かで歴代のドライバー達と繋がっている。

 レミィとヴィクセン、フェイとアルバトロスの思いも、
 きっと未来へと……新たなドライバー達へと繋がって行く。

 空達とエール達にとって、それは決して歪みなどではない。
507 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:14:09.57 ID:V0zga9kFo
空「あなたが歪んでいると言うなら、あなたにとっては歪んでいるのかもしれない……。
  それでも、私達にとってそれは繋がりで、エール達との大切な絆なんだ!」

 選んだのでも、選ばれたのでもない。

 繋がるべくして、お互いの意志が繋がったのを、結果的に選び、選ばれたと言っているに過ぎない。

 そして、繋がって来た意志は、きっと未来へと繋がるのだ。

 この場でこの身が砕かれようとも、多くの人々との繋がりで紡いだ一瞬は無意味ではない。

 この繋がりは、いつかきっと意味のある物に変わる。

 その確信が、空にはあった。

エール『空……』

 その確信は、魔力と言う繋がりを通じてエールにも伝わる。

 エールに……いやエール達にあったのは喜びだった。

 特定の誰かしか選ぶ事の出来ない自分達。

 それを繋がりと……絆だと、言ってくれた。

エール『僕も……空に、空達に応えたい』

 真っ暗な闇の中から救い上げてくれた、再び温かい気持ちを与えてくれた新たな相棒に、応えたい。

クレースト『茜様の思いに、もう一度……』

 大切な人を思って涙し、諦めながらも絶望せずに手を伸ばし続けた思いに、応えたい。

クライノート『美月、私もあなたの力に……』

 苦しみすら乗り越えて、大切な人のために戦うと誓った誇りに、応えたい。

 特攻などさせない。

 彼女達の意志を、彼女達自身に、もっと先まで繋げさせたい。

 その思いがエール達の中で渦巻く。

 もっと彼女達のために……今の、主達のために。

 たった、それだけで良かった。

『Mode Release』

 その思いに応えるように、無機質な音声と共に三条の光の柱が立ち上った。
508 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:14:51.94 ID:V0zga9kFo
―8―

 ギガンティック機関、司令室――


アーネスト「状況は!? どうなっているんだ!?」

 突如の事態にアーネストは驚きの声を上げた。

春樹「わ、分かりません!?
   01、02、03、各機の機体コンディションがモニター不可能になっています!?」

 春樹は混乱しつつ応えながら、クララと共に異常の原因を探ろうとチェックを続けている。

メリッサ「各ドライバーのバイタルはモニター可能です!
     心拍数の上昇は確認できますが許容範囲内!」

 春樹の告げた異常に自らの担当区分にも異常が無いか確認していたメリッサは、
 先ほどまでと変わらないモニターを確認して報告した。

タチアナ「外部カメラで機体の異常は確認できる!?」

エミリー「外観の変化は確認できません!」

 タチアナの問い掛けに、正門前広場の各種監視モニターを確認していたエミリーが応える。

明日美「…………」

 クルセイダーすら討ち破る巨大ギガンティック、月島の出現、そして、エール達に訪れた変化と、
 立て続けの異常事態にざわめく司令室を視線だけで見渡しながら、明日美は沈思していた。

 一体、今度は何が起きたのか?

 考えていても埒の無い事だが、考えなければならない。

明日美(考えられる可能性は……一つだけ……)

 明日美はその考えに思いを巡らせる。

 だが、その考えが浮かんだ瞬間、微かに頭を振った。

 そんな事はない。

明日美(そうよ……あの機能は完全に失われていた。
    第二世代に改修された際に、構造として失われた筈……)

 明日美は自らの出した考えを、自ら否定した。

 月島勇悟も居合わせた、多くの技術者立ち会いの下で確認している。

明日美(XXXは……もう存在しない……)

 明日美はそう言い聞かせるように、自らを納得させた。

春樹「モニター異常回復! 各機コンディション確認可能です!」

 春樹はそう告げると同時に、各機のコンディションを再確認する。

クララ「嘘……何これ……!?」

 同時に確認作業を始めていたクララが、愕然と漏らす。

アーネスト「報告は明確に!」

クララ「!? は、はい! それが……三機の内部構造が大きく変化しています!
    主要部はそのままですが可動部の増加と一部構造の不明な強化が確認できます!」

 アーネストの言葉に気を取り直したクララだったが、
 自分で自分の言葉が信じられないと言いたげに報告した。

 機体の内部構造の変化。

 芋虫が蛹を経て蝶になるように、内部の構造が全く別の物に置き換わっているのだ。
509 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:15:55.65 ID:V0zga9kFo
リズ「何これ……01……いえ、エールから緊急回線での通信が入っています!」

 一瞬驚いた様子のリズだったが、すぐに落ち着きを取り戻してそんな報告を上げた。

アーネスト「エールから? エールからの直接通信と言う意味か?」

リズ「いえ……これはデータの送信?
   大容量のデータが司令室のメインフレームに転送されています!」

 状況確認を続けていたリズは、アーネストの問いに驚き混じりに応える。

 司令室のメインフレームとは、以前に茜が美波と共に入った、
 司令室の真下の部屋でアクセス可能なアレだ。

アーネスト「司令……」

明日美「……え、ええ」

 アーネストに促された明日美は、僅かに声を上擦らせて返す。

 諜報部員や各部門主任にはメインフレームに専用端末を介して間接アクセスが許可されているが、
 司令室からの直接アクセスが許されているのは司令である明日美だけだ。

 だが、明日美が声を上擦らせたのはそんな事に対する緊張などではなく、別の理由から来る緊張だった。

 エール……つまり、エールのAI本体から転送されたデータの正体に、明日美は気付いている。

 確実に“コレだ”と言えるワケではないが、それでも九分九厘は当たっているだろう。

 明日美は震える手で手元のパネルでメインフレームにアクセスすると、転送されて来たデータを展開した。

 展開されたデータは、即座に司令室正面のメインモニターに開かれたウインドウに表示される。

 真っ暗な画面にただ一文“虹の意志を継ぐ者達へ”とだけ、英文で書かれた簡素な画面。

 それが僅か数秒表示された直後、再び別な英文が浮かび上がった。

明日美「我が生涯の全てを、亡き最愛の妻の愛機の心を開き、彼らと心を通わせた者達に託す……。
    願わくば、悪魔の兵器を超越した彼らを託すに足る者が再びこの地に現れん事を……」

 明日美は朗々と、半ば茫然としつつ読み上げる。

 それは父、アレクセイ・フィッツジェラルド・譲羽の直筆と思われる文字をスキャンした文章だった。

 明日美がその文章を読み終えると、即座に無数のウインドウが同時に展開する。

 全て図面や論文の類だ。

春樹「コレは……改装時のオリジナルギガンティックの図面……それも完全版!?」

クララ「この図面……形は……は、ハートビートエンジンの詳細図面と開発データです!?
    オリジナル十一基、全て揃ってます!」

 それらを確認していた春樹とクララが驚愕の声を上げる。

 無理もない。

 解析不可能、分解不許可、ジャンク品同然になりながら整備を続ける他なかったオリジナルギガンティック、
 その全てのブラックボックスが一斉に開かれたのだ。

 情報はそれだけではなない。

 オリジナルギガンティックの改装図面、全OSSの設計図、それらに加えて不明な機体の設計図も存在している。

 ギガンティック機関にとっては宝の山だ。

アーネスト「司令……これは」

明日美「父の……四十年越しの置き土産、かしら……」

 愕然とするアーネストの問い掛けに、明日美は震える声で呟いた。
510 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:16:27.27 ID:V0zga9kFo
アーネスト「明日美さん……?」

明日美「え? ……ああ」

 戸惑うような声でアーネストに名前を呼ばれ、そこで明日美は初めて、自分が涙している事に気付く。

 思わず頬に手を当て、慌てて涙を拭った。

明日美(ああ……そうか……私は嬉しかったのか……)

 困惑の中、微かに胸の奥で息づく喜びに気付き、明日美は感慨深く溜息を洩らす。

 母の死で狂い、人類の生命線たるギガンティックを誰にも扱えぬ物に仕立て上げたと思っていた父。

 しかし、違った。

 そうではなかった。

 父は、本当に人類の生命線を……
 イマジンすら凌駕する兵器を預けるに足りる人物の再来を望み、未来に託したのだ。

 それはそれで身勝手だったかもしれない。

 だが、それでも復讐に取り付かれた若き日の自分と違い、
 父は人類の守護者に相応しい人物の再来を信じ、そのために最期まで尽くしたのだ。

 その事が、誇らしくもあり、嬉しくもあり、自分がその事に今の今まで気付けなかった事と、
 その対象となるに至れなかった心苦しさと悔しさもあった。

明日美(勇悟……あなただけでなく、私もまた、間違っていたようだわ……)

 涙を拭った明日美は、気を引き締め直し左側にいる春樹達メカニックオペレーターに向き直る。

明日美「現在の01達の状態と改修直後の01達の設計図に符合する点はありますか?」

春樹「現在確認中…………01、02確認!
   構造は第二世代改修直後の他、改修前の設計にも合致する点が存在します」

クララ「03も確認できました、誤差有りません!」

 春樹とクララの返答に、明日美は驚きの表情を浮かべながらも深く頷いた。

アーネスト「司令……では?」

明日美「ええ……朝霧副隊長、及び他二名に伝達! XXXへの合体を許可します!」

 明日美は促すようなアーネストの問い掛けに頷いて答えると、立ち上がって指示を飛ばす。

 すると、その指示の内容、特に“XXX”と言う単語に主任級のオペレーター達がざわつく。
511 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:16:55.90 ID:V0zga9kFo
 そのざわめきは、空達にも伝播していた。

空「とりぷる、えっくす……?」

 聞き慣れない単語に、空は怪訝そうに首を傾げる。

春樹『正式名称GWF001……いや、GWF201XXX−エール・ソヴァール。
   機能そのものが第二世代改修時に失われたと思われていた、エール本来の合体形態だ』

 空の疑問に答えたのは春樹だ。

 エール達に異変があった事で月島も警戒しているのか、睨み合いのような状態は今も続いている。

クララ『機体状態は問題無し、むしろ内部構造の変化で内装ダメージも回復しているから、
    今がチャンスだよ』

茜『確かに先ほどよりも動き易くはなってはいるが……』

 後押しするクララの言葉に茜は戸惑い気味に漏らす。

 内部構造の変化など、どんな技術を使えば良いのか分からない。

 おそらく、瑠璃華ならばマギアリヒトによる内部構造体の変化を分かり易く説明してくれただろうが、
 今はそれどころではない事態だ。

春樹『ただ、合体には最低でも二秒間、無防備になる時間が存在するみたいだ。
   その時間を上手く稼がないと……』

 春樹が申し訳なさそうに漏らす。

美月『二秒も無防備に……』

 美月は不安げにその言葉を反芻する。

 二秒あればカレドブルッフの手で完全にスクラップにされてしまう。

 だが、それ以外に反撃に転じる方法が無い。

 これでは状況は好転したとは言えなかった。

???『二秒で……いいん、だな?』

 しかし、不意に絶え絶えの声が空達の元に届いた。

 臣一郎だ。

 臣一郎は魔力リンクを幾分か遮断された事で、まだ意識を保っていたらしい。

臣一郎『僕とデザイアで時間を稼ぐ……その隙に合体するんだ!』

 臣一郎の声と同時に、足もとに撒き散らされた夥しい量の鈍色のエーテルブラッドが、
 一気に青藍の輝きに包まれた。

 臣一郎の魔力波長の輝き……
 そう、撒き散らされたエーテルブラッドがクルセイダーの制御下に置かれた証拠だ。

茜『に、兄さん!? そんなボロボロの機体で無理をすれば……』

 茜は愕然と叫び、臣一郎を止めようとする。

 だが――

臣一郎『……見せてやるんだ……アイツに……!
    多くの人の命を奪い、もっと多くの人を騙してまで作り上げた物よりも、
    アレックス御祖父様が僕らを信じて託してくれた物が……エールと君達の方が上だと……!』

 臣一郎は気合で痛みをねじ伏せ、叫んだ。

 その言葉に、茜は息を飲む。

 そう、証明しなければならない。

 月島に、世界に……エール達は歪んでなどいない、
 人との繋がりの果てに生まれる物こそが、人類を守る守護者だと。

臣一郎『朝霧君! 茜! 美月君! 頼むっ!』

 臣一郎が叫ぶと、青藍に輝いていた大量のエーテルブラッドが舞い上がり、
 空達と月島の間に、高く、分厚いエーテルブラッド結晶の壁が生まれた。

月島『ほう………まだこんな事をする余力があったか』

 驚き、感心するように漏らす月島だが、その声音は言葉よりも驚いてはいない。

 その証拠に、早くも壁を破壊しようと、何発もの殴打を繰り返す。
512 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:17:48.79 ID:V0zga9kFo
臣一郎『い、急いでくれ!』

 自らの作り出した障壁から伝わる重い一撃に、臣一郎は苦しげに叫んだ。

茜『……迷っている暇は無いな、急ごう!』

美月『はい……!』

 兄の悲鳴じみた声に不安を隠せない茜の言に、美月も頷いて応える。

 押し黙っていた空も大きく頷き、目を見開く。

空「エール……臣一郎さんが作ってくれたチャンス、無駄に出来ないよ!」

エール『……了解、空! 君が指示を……モードXXXの起動を!』

空「うん!」

 空はエールに促され、軽く深呼吸をすると前を見据える。

空「モードXXX、セットアップ!」

エール『了解、モードチェンジ、承認!』

 空の声にエールが応え、三機が変形を開始する。

 三機は高く跳び、エールは下半身を腰部の付け根から下部を九十度後方に折り曲げ、
 腕部は折り畳まれた肩部装甲によって覆われた。

 クレーストは頭部を含む胸部が分離し、残る全身が左右に分割され、
 腕部は肩部装甲内へと折り畳まれながら下方へとスライドし、足底部から拳が突きだす。

 クライノートは下半身が左右に展開し、膝を折り畳むようにしつつ、
 こちらも折り畳まれた腕部と接続され、上下を逆にした凹字型へと変形する。

 エールの背面にクレーストの胸部が接続され、折り畳まれたエールの足でカバーされ、
 クライノートはエールの腰部へと連結された。

 側面を向いたエールの左右肩部ジョイントに変形したクライノートの身体が接続され、
 クライノートの下部に前後で折り畳まれたヴァッフェントレーガーが接続される。

 三機と一機のOSSが集合し、五〇メートル近くなった巨体の各部に、
 クライノートの武装が装着されて行く。

 左右に分割されたドゥンケルブラウナハトは足となって脚部となったヴァッフェントレーガーの下部に、
 ロートシェーネスは上腕となったクレーストの脚部の先に前腕として、
 ブラウレーゲンとヴァイオレットネーベルは肩部に連装砲として、
 左右が連結されたオレンジブリッツは胸部装甲となり、
 逆に左右に分割されたグリューンゲヴィッターは左右の腰側面に装着された。

 スニェークとゲルプヴォルケを連結器として繋がり、長大なツインランスとなった
 ブライトソレイユとドラコーンクルィークを握り締めると同時に、
 背面に光背状となったプティエトワールとグランリュヌが再接続され、
 エールの翼とモールニヤが大きく展開し、空色の魔力が翼のようになって噴き出す。

クレースト『各部、各システム接続確認、ブラッドライン正常』

クライノート『全兵装オンライン確認、トリプルハートビートエンジン接続確認』

エール『トリプルハートビートエンジン、起動!』

 クレースト、クライノート、そして、エールの言葉が響くと、
 エールの一角獣のような頭部ブレードアンテナがV字に展開し、全身のブラッドラインが空色に輝いた。

空「トリプルエックス……エール・ソヴァール、合体完了っ!」

 空の宣言と共に合体を終えた三機……いや、エール・ソヴァールが再び正門前広場に降り立つのと、
 カレドブルッフによって障壁が砕かれるのは同時だった。
513 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:18:18.85 ID:V0zga9kFo
月島『お、お……おおおぉぉ……!?』

 障壁の向こうから現れた姿に、月島は驚愕と感嘆の入り交じった声を上げる。

月島『XXX! ……そうか、先ほどの変化はコレだったのか!

   マギアリヒト構造体の変容性を活用し、構造そのものを機体内部に秘匿、
   特定条件によって本来の構造に戻る機能か……!

   素晴らしい!

   あなたは一体、どこまで人知を超えた物を遺したのだ!
   アレクセイ・フィッツジェラルド・譲羽ぁぁッ!』

 そして、歓喜と驚愕、羨望、憤怒、それら全てを含む複雑な感情を声に乗せ、
 躁状態になったかのように叫ぶ。

 今までと明らかに違う月島の変貌ぶりに、空達も微かにたじろぐ。

月島『………気が変わった。XXXがいるならば、ソレと戦わせて貰おう!
   いや、それを超えてこそ、アレクセイ・フィッツジェラルド・譲羽の伝説を打ち破れると言う物だ!』

 微かに冷静さを取り戻しても、それでも興奮冷めやらぬ様子の月島は、
 トリプル・バイ・トリプルエンジンの出力を上げる。

 すると、周囲に赤黒い魔力が噴き出し、まだ足もとに残っていた微かなエーテルブラッドを消し飛ばす。

 おそらく、エンジンの安全制限を解除したのだろうが、凄まじい出力だ。

空「一気に押しやるよ、美月ちゃん!」

美月「分かりました、ソラ。各部スラスター最大出力です……!」

 しかし、空は怯える事もなく冷静に美月に指示を飛ばすと、
 夥しい量の魔力を噴き出すカレドブルッフに向けて、合体した愛機と共に跳ぶ。

 エール・ソヴァールの全高は五十二メートル。

 クルセイダー以上の巨体となっても、未だカレドブルッフの九〇メートルには届かない。

 圧倒的な体格差の二機がぶつかり合う。

 その瞬間、予想外の事態が起きる。

月島『なっ!?』

 月島の驚きの声と共に、カレドブルッフが一気に押しやられて行く。

 カレドブルッフの両肩に腕を突っぱるようにして、
 倍近い体格を誇る巨体をエール・ソヴァールは易々を押しやってしまっているのだ。

月島『と、トリプルハートビートエンジンだと!?
   これがあのハイペリオンイクスと同出力だと!?

   まるで別物……異次元の出力差じゃあないか!?』

 恍惚とも驚愕とも取れる月島の叫び声を残しながら、
 エール・ソヴァールはついにカレドブルッフの巨体を浮かび上がらせた。

空「上部隔壁を開けて下さい! 早く!」

 空は通信機に向け、司令室に指示を出す。

 決して、自らと愛機の生み出した現場に驚いてはいない。

 全てのブラックボックスが解放されたエールと繋がった事で、空は理解していた。

 エーテルブラッドは魔力となって自分の身体の中をも循環し、愛機の体内を巡っている。

 そして、自身と愛機の間を巡るブラッドが伝えてくれた。

 真の姿を取り戻したエール・ソヴァール【翼の救世主】は、この程度の事を造作もなくやってのける、と。

明日美『ギガンティック機関司令権限でメインフロート第一隔壁展開!』

リズ『は、はい! 隔壁展開を要請します!』

 明日美の声に続き、困惑気味のリズの声が聞こえる。
514 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:18:51.90 ID:V0zga9kFo
 しばらくすると、上昇しながらカレドブルッフを押し続ける空達の正面で、
 天蓋の一部が開き始めた。

 かつては第一層内部の空港に入る航空機の出入り口であった、
 四十四年前に閉じられた三百メートル四方の隔壁の一つだ。

 エール・ソヴァールはカレドブルッフを押しやりながらその隔壁から外部へと飛び出し、
 そのまま第一フロートを飛び越えてインド洋の凍り付いた大氷原の上空まで突き抜けた。

 グリニッジ標準時のドーム内ではまだ夕刻だが、インド洋上は既に真夜中だ。

 幸い吹雪は小康状態で、二機はそのまま真夜中の氷原へと着陸する。

月島『なんと……最早……これが結界装甲とハートビートエンジンを得たXXX……。
   旧世界で唯一、イマジンを撃破したギガンティックの第二世代改修型か……』

 体勢を崩しながらも着陸に成功したカレドブルッフから、畏怖するかのような月島の声が聞こえる。

 かつてイマジン事変に際して、世界に初めて現れたイマジンを撃破した唯一のギガンティック。

 圧倒的な魔力を誇るイマジンを、それを上回る魔力係数と出力で
 辛うじて撃退したギガンティック、その第二世代改修機。

 それこそが、このGWF201XXX−エール・ソヴァールであった。

 僅か十数分でメガフロート外へと飛び出し、大氷原にまで到達する。

 それも自らよりも巨大なギガンティックを押し出しながらだ。

 畏怖せざるを得ない性能差だった。

空「もう力の差は分かった筈です………降参して投降して下さい、月島勇悟」

 空は武器を構え、威嚇しながらも降参を促す。

 ここまで性能差が圧倒的なのだ。

 彼の挑戦はここで終わりだ。

 だが、月島も引き下がらない。

月島『なんの宗旨替えだね?
   私は生きていてはいけないとまで、傲慢に言い放った君が!』

 カレドブルッフは両腕に魔力刃を展開し、ショートロッドを構えながら無数の術式を展開した。

 月島の言葉はただの理由付けの一つと挑発に過ぎない。

 彼の真意は別にある。

 そう、これは挑戦なのだ。

 王者が強ければ挑戦を諦めるなど、最初からそんな殊勝な心構えならば、
 自らの計略で戦争状態を作り出し、それを利用してまでカレドブルッフを開発などしていない。

 クルセイダーと言う挑戦相手が、本来挑戦すべきだったエール・ソヴァールに戻ったに過ぎないのだ。

 まだ、アレクセイ・フィッツジェラルド・譲羽と言う伝説に風穴を開ける月島の挑戦は、終わっていなかった。

空「………茜さん、氷結変換でお願いします」

茜「分かった……。魔力変換、セット!」

 諦めたように呟いた空に茜が答えると、
 空色に輝いていたエール・ソヴァールのブラッドラインが、一瞬だけ茜色に輝く。

月島『さあ、最期まで付き合ってくれ!
   君らの仲間が私を足止めしたように、私の無謀な挑戦にっ!』

 月島は自虐のような覚悟の声を放ち、それと同時に術式を叩いた。

 五条の光のモズがエール・ソヴァールに襲い掛かる。

空「セット・フリーズッ!
  フリージングスナイパー、ファイヤッ!!」

 空が右手の人差し指と中指を揃えて突き出して叫ぶと、
 右肩の付け根に装着されていたブラウレーゲンから氷結変換された魔力砲弾が放たれた。

 魔力砲弾は五発放たれ、その全てがカレドブルッフの放ったリヒトビルガーを凍てつかせて弾ける。
515 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:19:41.81 ID:V0zga9kFo
月島『属性変換機能か!? その機体で唯一にして最大の忌々しい機能だ!』

 月島は吐き捨てるように叫ぶ。

 エール・ソヴァールは三機のハートビートエンジンが完全同調接続されている。

 それがハイペリオンイクスすら凌ぐ出力を引き出しているのが、恩恵はそれだけではない。

 本来、エールを十全に使いこなす無限の魔力の持ち主は、閃光以外の属性変換が不可能となる。

 だが、クレーストとクライノートのドライバーに他の属性変換が可能なドライバーが登場していれば、
 装着された武装を媒介とする事に限定して、変換された魔力を射出可能となっているのだ。

 魔導師本来の能力を拡張したギガンティックウィザード、と言う思想の月島にとってみれば、
 彼の理想とするギガンティックの対極に位置する機能だろう。

 月島は怒りに任せ、一気に三発のリヒトファルケンを解き放った。

 クルセイダーに襲い掛かった倍以上の数の光のハヤブサが、エール・ソヴァールに襲い掛かる。

 しかし、空は慌てず、左手の人差し指と中指を揃えて突き出す。

空「セット・フラッシュッ!
  アルク・アン・シエル……イノンブラーブルッ!!」

 今度は左肩のヴァイオレットネーベルから、自らの魔力特性を活かした魔法を放つ。

 無数に拡散するアルク・アン・シエルが、同様の拡散弾であるリヒトファルケンを消し去り、
 さらにはカレドブルッフの周囲に浮かぶ術式すら消し去った。

月島『ッ………性能差がここまでとは……』

 月島は舌打ちと共に悔しそうに呟く。

空「まだ……降参してくれませんか?」

 空も苦しそうに呟く。

 圧倒的過ぎる力を持って、空は初めて気付いた。

 エール・ソヴァールが開発者であるアレックスによって封印されて来た理由だ。

 この機体は世界を滅ぼした魔導弾やイマジンを軽く凌駕する破壊力を持っている。

 人類を守るだけならば、十分とは言えないまでも、
 それまでのオリジナルギガンティックだけで何とか守れたのだ。

 だが、エール・ソヴァールの力は守るだけでは収まりきらない、相手を滅ぼす事すら出来る絶対の力だった。

 抑止力と言えば聞こえは良いが、大量破壊兵器に分類される、究極の魔導兵器なのである。

 それでも、その封印を解き、未来を願って託された人間として、
 この力を正しく使わねばならないと言う使命感が、月島への降参を促すのだ。

月島『君も言っただろう!? 私は生きていてはいけない人間だと!
   ああ、実にその通りだ!

   私は何十年、何百年かけてでも、何千人、何万人を犠牲にしたとしても、
   必ず、その機体を上回る機体を作り出す!

   最悪の事態に備えた保険もある!』

 しかし、月島は興奮した様子で叫び散らし、さらに続ける。

月島『フロート内に連れ帰られた瞬間、私は自爆して次の私に機会を託す!

   今、この場だ!
   この魔力の吹雪によって通信を阻害された外の世界でだけ、私は完全な死を迎える!

   こんなチャンスが二度もあると思うな!』

 月島はそう言い切ると、ショートロッドと拳の魔力刃を同調させ、
 長大な剣と化した魔力の刃で斬り掛かって来た。
516 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:20:10.00 ID:V0zga9kFo
空「この……分からず屋っ!
  美月ちゃん、腕部セーフティ解除! 茜さん、炎熱変換を!」

美月「はい、ソラ……腕部セーフティ解除します」

茜「……魔力変換セット」

 涙を滲ませる空の言葉に、美月と茜も静かに答えた。

 両前腕が空色の炎に包まれる。

空「セット・ファイヤッ!
  ファイヤーロケッター、ダブルッ!!」

 空はその炎に包まれた腕を、突き出すようにして放った。

 前腕となっていたロートシェーネスは切り離され、
 炎を纏った噴射拳となって魔力刃を掲げたカレドブルッフの腕を貫いた。

 空色に燃えさかる拳はカレドブルッフの腕を吹き飛ばし、
 バランスを失ったカレドブルッフは盛大に氷原へと突っ込み、深い溝のような大穴を穿つ。

空「……もういいでしょう! これで終わりです!」

 空は最早、泣いていた。

 涙は堪えていたが、今にも溢れ出しそうなほどだ。

 託された力……思いを、こんな暴力のように使わなければならない事実が、胸を締め付ける。

 繋がって来た思いは、人間同士で争うための力ではない。

 イマジンから人々を守り、未来を切り開く力なのだ。

月島『この力が……この力が最初から使えれば……!
   誰もが扱える万能の力であったならば!』

 月島は悔しそうに叫ぶ。

 だが、月島の願いような叫びが実現した世界は恐ろしい世界に他ならない。

 科学者としての月島の矜持は分からないでもない。

 誰もイマジンに怯えない世界、誰もがイマジンに抗える世界。

 そうであったならば世界は滅ばなかった。

 空も、姉との出会いがあったどうかを別にしても、姉を喪う事は無かっただろう。
517 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:20:44.21 ID:V0zga9kFo
 しかし、この過ぎたる力は人間には重すぎる。

 この力を扱う者、その全てが善人でも賢者でも無いのだ。

 争いは避けられない事も多く、怒りや憎しみを収めて生きる事は難しい。

 そんな世界に誰にでも扱える平等な滅びの力が与えられた日には、世界は最短で滅ぶ。

 しかし、それを望む声がある。

 世界を滅ぼしはしない。

 だから与えてくれ、と。

 誰もが怯えぬ世界のために……。

 両腕を失ったカレドブルッフは、赤黒いブラッドを撒き散らしながら立ち上がり、
 尚もエール・ソヴァールに迫る。

 たった一人の男の挑戦と言う名の祈り。

 この祈りは……この祈りで手に入れた力は、いつか世界を壊す。

 多くの人々の命を奪い、人生と心を歪めたように……。

 この祈りと、男の命と共に摘み取らねばならないのだ。

 この力は、誰かの祈りを未来に繋げる力だと言うのに……。

空「エール………ごめんね……こんな使い方は……もう、二度と、しないからっ!」

 空はついに涙を溢れさせ、愛機に……そして愛機にこの力を託した者に謝罪する。

 果たして、エールは優しい声で答えた。

エール『空……僕は君の翼だ……。
    君が望むなら、君が選ぶなら……僕はどこまでも君と飛ぶよ。
    君が迷わないよう、君がいつまでも飛べるように』

空「エールぅ……ッ!」

 穏やかに語りかけるエールに、空は涙も拭わずに返した。

 そして、刃を構える。

 長大なツインランスを切り離し、両手で前に突き出す。

 翼から空色の魔力が溢れ出し、
 光背からも多量の魔力がエンジンから放たれる炎のように伸び、暗い雪原を空の色で満たす。

 絶対の死を目前にしながら、両腕を失ったカレドブルッフは幽鬼のような歩みを止めない。

 そして――

空「リュミエール……リコルヌシャルジュ……ッ!!」

 虹の輝きを纏ったエール・ソヴァールが、幽鬼のように迫り来るカレドブルッフを、貫いた。
518 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:21:22.04 ID:V0zga9kFo
―9―

MC『それでは、月島と言う人物はギガンティック機関技術開発主任、
   山路重工の技術研究開発室の主任を歴任し、政府主導の特殊労働力生産計画に携わり、
   しかも60年事件の黒幕だった、と』

女性コメンテーター『頭の良い人の考える事はよく分かりませんねぇ……』

男性コメンテーター『僕はね、彼は政府転覆でも狙っていたんじゃないかと思いますよ』

MC『それは、どう言ったご意見で?』

男性コメンテーター『インテリの考えそうな事ですよ。
          ちょっと頭がいいから極端から極端にしか行かない。
          色々と後ろ暗い物でも見て来たんでしょう?

          特にこの間から騒がれている特殊労働力生産計画なんてその最たる物じゃないですか』

MC『つまり、60年事件の動機はそこにある、と?』

男性コメンテーター『断定はできませんがね、政府と皇族王族の関係は今や持ちつ持たれつだ。
          政府の顔に泥を塗るには丁度いいターゲットだったんじゃないですかね?』


MC『テロリスト側から亡命した一人の研究者が持っていた資料の中には、
   ホン・チャンスの手記があったそうですね?』

専門家A『今時珍しい手書きの手記だったそうです。
     ネットワーク上で誰かに読まれるのを危ぶんでの事でしょうか?』

専門家B『ただ、この手記によると息子……
     ホン・チョンス死刑囚の魔力の低さを常日頃から嘆いていたようですね』

MC『それが月島勇悟の誘いに乗った……政府転覆と支配権を欲した動機だったと?』

専門家A『子供の事を思う気持ちは分からないでもないですが、あまりにも極端過ぎますね……。
     連続強姦や殺人の罪がそれで軽くなるワケではありませんし』

専門家B『まあ、既に病死していた以上、改めて罪に問う事も難しいワケですが……』


アナウンサー『……をもちまして、明日美・フィッツジェラルド・譲羽氏がギガンティック機関総司令を辞任を発表、
       後任人事には現副司令のアーネスト・ベンパー氏の就任が最有力とされています』

アナウンサー『これと合わせまして本日、ギガンティック機関は201のドライバーを正式に公表。
       現在の201のドライバーは朝霧空さん、十五歳。

       昨年四月に亡くなられた朝霧海晴さんの血縁者と言う事で、専門家の間でも話題となっています』


MC『ギガンティック機関は発見された資料を山路重工他、
   関連企業への開示を決めたようですが、皆さんはどう思われますか?』

専門家C『今まで機関への負担は大きかったですし、
     去年末のイマジン大量出現は凄まじい有様だったじゃないですか?

     あれを考えれば資料公開は妥当だと思いますよ』

専門家D『ただ、ギガンティック機関は徐々に用済み、って形になるんじゃないですかね?
     ハートビートエンジンが軍や民間にまで行き渡る形になるでしょうし』

MC『そうなると政府がどこまで管理できるか、
   と言う責任問題にもシフトして行く形になるでしょうか?』

専門家D『将来的にはそうでしょうね』


 憶測、推測、邪推、事実……月島による皇居正門襲撃事件から一週間、
 メディアを通して様々な意見や言葉が飛び交った。

 的を射た言葉もあれば、下世話な自称専門家による誘導など、様々な言葉は多くの波紋を生み、
 世界は争い事の終わった平穏さに比して騒がしさを増していた。
519 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:22:24.02 ID:V0zga9kFo
 8月28日、水曜日の早朝。
 ギガンティック機関、司令執務室――


アーネスト「本当に、お辞めになるので?」

明日美「ええ……そろそろ引き継ぎも始めないとね」

 納得できないと言いたげに、自身の端末に届いた辞令と明日美を
 交互に見遣りながらアーネストが尋ねると、明日美は小さく肩を竦めながら呟いた。

 アーネストの元に届いた辞令と言うのは他でもない、
 ギガンティック機関司令への昇進を報せる辞令だ。

 日付はおよそ三ヶ月後の12月1日。

 それまでに明日美は全ての引き継ぎを終え、退職する予定となっている。

 アーネストが何処か納得いかない様子なのは、司令官と言う要職に対する重圧よりも、
 明日美が辞職すると言う件に関してだった。

アーネスト「考え直された方がよろしいのでは?」

明日美「……朝霧副隊長と月島の会話ログは、貴方も聞いたでしょう?」

 もう何度目になるか分からないアーネストの問いに、明日美は溜息勝ちに答え、さらに続ける。

明日美「月島……勇悟は、誰にでも扱えるギガンティックを求めていたわ……」

アーネスト「ですが、だからと言って貴女が責任を感じる問題ではないでしょう」

 どこか後悔を滲ませた様子の明日美をアーネストは宥めた。

 だが、明日美は聞き入れない。

明日美「私はね……自分の復讐に目が眩んで……彼の側を離れたの……。
    彼があそこまで追い詰められる前に、彼を止められる場所にいたにも拘わらず……」

 月島は確かに“誰にでも扱える万能の力ならば”と言った。

 “ならば”……そう、つまり、それを願う理由が……願いを抱く前の段階が確かにあったのだ。

 名誉欲か、研究者としての純粋な探求心か、それとももっと別の理由があったのか……。

 それは、もう本人以外には及び知らぬ事だ。

明日美「だから……一人で静かに考えてみたいの……。
    勇悟が力を求めた理由を……彼のためにも、ね」

 それが、明日美の思いつく、歪んで行く勇悟から離れた……
 彼を見捨てた自分に出来る、最大限の償いだった。

 無論、彼がその事を受け入れてくれるか、望んでくれているかは分からない。

 贖罪など言うのも自分勝手な物で、要は明日美は自身が納得できるだけの理由が欲しいのだ。

アーネスト「貴女はまだ……――」

 ――月島勇悟を、愛しているんですか?

 その言葉を、アーネストは飲み込んだ。

 その事を尋ねる女々しさと、その答えを聞く勇気を、アーネストは持ち合わせていない。

明日美「…………少し司令室の様子を見て来るわ」

 明日美にもアーネストが尋ねんとしている事は分かっていたが、
 彼女はそれに答える事なくその場から逃げるように去った。
520 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:22:50.34 ID:V0zga9kFo
 明日美が執務室から出ると、待機室方面から出て来たばかりの空と鉢合わせとなる。

空「司令……!」

 肩にドローンのエールを乗せた空は、慌てた様子で明日美に駆け寄った。

空「あの、司令……お辞めになるって、本当なんですか?」

 戸惑い気味に問い掛ける空に、明日美は“またか”と苦笑いを浮かべて肩を竦めてから口を開く。

明日美「情報が早いわね。誰から聞いたのかしら?」

空「その……瑠璃華ちゃんから」

 問い返した明日美の言葉を肯定と取ったのか、空は戸惑い気味に返した。

 既に各部署の主任には伝達済みだ。

 風華か瑠璃華、どちらかからドライバー達に情報が漏れるのは時間の問題だっただろう。

明日美「昼に全員に内部メールで伝達する予定でいたのだけれど……」

 明日美はそう言って僅かに考え込んだ後で“そうよ”と改めて肯定した。

 全オリジナルギガンティックの内半数以上の七機が大破同然と言う状況で、
 恒例の早朝ブリーフィングも開けない有様だ。

 多忙な時に人を集めて宣言するよりは、僅かでも混乱が少ないと考えての処置だった。

明日美「そんな事よりも……本当に良かったの?
    秘匿義務は無いとは言え、名前を公表して……」

空「……はい」

 明日美に問われ、空は僅かな間を置いて応えた。

 僅かな間は、戸惑いと言うよりは決意に近かったように明日美は感じていた。

空「託された物を、しっかりと背負うって決めましたから」

 そして明日美の感じた通り、空は真っ直ぐとこちらを向いてそう言い切った。

明日美「……そう」

 空の頼もしげな様子に、明日美は目を細めて満足そうに頷く。

 たった一人の家族であった姉を殺された復讐のために戦う事を選び、
 姉がくれた愛を知って人を守る事を誓い、先日は大きすぎる力を背負う事になった。

 まだ十五歳のあどけなさの残る少女とは思えない、壮絶な人生。

 まるで、そうなるために生まれて来たような人生を歩む少女に、
 明日美は何も応えてやれていない事に気付く。
521 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:23:22.18 ID:V0zga9kFo
明日美「……十一月末まではここに残っているわ。
    ……それに、辞めた後も、ひだまりの家まで来てくれれば、
    いつでも稽古をつけてあげましょう」

空「ほ、本当ですか!?」

 ささやかな応援の代わりだったが、
 想像以上に嬉しそうに驚いた空の様子に、明日美は微かに面食らう。

明日美「え、ええ……あなたが望むなら、ですけど」

空「是非、お願いします!」

 明日美が気を取り直してそう付け加えると、空は嬉しそうに頭を下げた。

 空は……確かに心は強くなったかもしれない。

 エール・ソヴァールと言う新たな、大きすぎる力も得た。

 だが、それに比して本人の力量は、
 臣一郎や茜、風華やクァンと言った達人達に比べればまだまだ凡庸の域だ。

 自身の非力さ故に、背負った物をそれ以上に重く考える事もあるのだろう。

 機関から離れ行く老骨の自分が、少しでもその重圧を和らげる事が出来るならおやすい御用である。

明日美「じゃあこの話は一旦ここまでにして……あなたも用があって出て来たのでしょう?」

空「あ、はい」

 明日美の言葉に、明日美も用があって出て来た事に気付いたのか、
 空は少し慌てた様子で応えると“失礼します”とだけ言って、その場を辞した。

 受付横の階段を下り、格納庫方面に向かう空を見送りながら、
 明日美は微笑ましそうな表情を浮かべる。

ユニコルノ<……心持ち、表情が穏やかになりましたね、明日美>

明日美<……そう? ………そうなのかも、しれないわね>

 思念通話とは言え、珍しく口を開いた愛器に、明日美はどことなく自嘲気味に返した。

 機関から離れる事に、まだ微かに不安はある。

 だが、若い世代は確実に育ち、その微かな不安よりも大きな期待を感じされてくれる程になっていた。

 その事が、何よりも彼女を安堵させたのだ。
522 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:23:52.60 ID:V0zga9kFo
 一方、明日美と別れた空は、そのまま格納庫を訪れていた。

 整備班の邪魔にならぬよう、内壁上部に据え付けられた広い通路の壁に寄りかかり、
 合体状態の愛機が整備されている様子を見遣る。

 天井ギリギリの位置まで届きそうな機体には、
 左右からクレーンで吊り上げるようにして固定されていた。

空「………」

 空はエールのドローンを胸の位置で抱き上げ、無言で愛機を見上げる。

エール<空……後悔、しているのかい……?>

空<ううん、そんな事ないよ……>

 思念通話で不安げに尋ねる愛器に、空は穏やかな調子で返す。

 二人の間で言い交わせた後悔とは、
 今、目の前にある力……エール・ソヴァールを引き継いだ事だ。

 人間には過ぎた力と言わざるを得ない。

 だからと言って放棄する事も出来ない。

 後悔していないと言えば嘘になるかもいしれないが、
 空はそれ以上の可能性をXXXに感じていた。

 おそらく、今までに戦った事のあるどのイマジンだろうと、
 一瞬で捻り潰せるだけの力がこのXXXにはある。

 それは、多くの人々を守る事に繋がる筈だ。

 そして、それは空の信念にも合致する。

 この力があれば、前以上に多くの人々を守れるだろう。

 きっと、世界を救える力。

 ソヴァール……仏語で救世主と名付けられたこの機体には、その願いと祈りが込められている。

 そして、その願いと祈りは、きっとずっと大昔から紡がれて来た普遍の思いだ。

 空が感慨深く愛機を眺めていると、不意に近付いて来る人影に気付いた。

 茜と美月だ。

 彼女らも肩に愛機のドローンを乗せたり、胸の位置で抱き締めている。

茜「やっぱりここにいたか……」

美月「中々戻って来ないから心配で来てしまいました」

空「茜さん、美月ちゃん……ごめんなさい」

 方や呆れたように、方や心配そうな二人に、空は振り返って苦笑いを浮かべた。

 二人は空の元まで歩み寄ると、空と同じようにエール・ソヴァールを見上げる。

 空も視線をエール・ソヴァールに戻す。

茜「まあ、無理も無いな……私も、色々と思う所はある」

 茜は溜息がちに呟き、肩に乗せたクレーストを見遣った。

美月「……私は、よく分からないです……」

 美月は腕の中のクライノートを見下ろし、彼女を抱く腕に少し力を込めた。

 何もエール・ソヴァールを託されたのは空だけではない。

 空、茜、美月。

 三人で引き継いだ力なのだ。

 祖父から託された力、まだ右も左も分からない内に託された力。

 それぞれに思う事は様々だが、少なからず重圧を感じているのは確かだ。

茜「……テロやら今回の事やら、色々と躓いて進まない今回の出向だが……
  終わったら、正式にこちらへの異動を申請しようと思っている」

 茜はエール・ソヴァールを見遣りながら、不意にそんな事を呟いた。
523 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:24:34.89 ID:V0zga9kFo
空「茜さん……ロイヤルガードを辞めるんですか?」

茜「……ああ」

 驚いたように問う空に、茜は感慨深く頷いて答え、さらに続ける。

茜「私達三人は、出来るだけ近くにいた方がいい……。

  それに、ギガンティック機関は権限の強い独立性の高い組織だからな、
  妙な思惑の連中絡みで政治利用される事も避けられる」

 茜が懸念しているのは、ロイヤルガードに戻った自分が
 エール・ソヴァールの力を持つ三人の内の一人として、政治利用される事だった。

 今でこそ人類存続のために協調し、国家の枠組みも殆ど失われて久しいが、
 古い議員の中には我が国こそはと言う意識を持つ者も少なくはない。

 ロイヤルガードのシンパの議員連にもそう言った者は存在している。

 彼らに利用される可能性を少しでも避けるため、ギガンティック機関に纏まっていた方が良いだろう。

 それに、エール・ソヴァールがあれば実力行使などと言う愚行を犯す者もいなくなる筈だ。

 それはそのままテロリストへの抑止力にも繋がる。

 だが、そんな茜の思惑とは無関係に喜んでいたのは美月だ。

美月「では……これからもずっと、アカネとソラと、一緒にいられるんですか?」

 美月は驚きながらも次第に目を輝かせ、興奮した様子で尋ねる。

 意外と落ち着いて見えるが、彼女なりに大興奮しているのは間違いない。

茜「ああ……一緒だ」

 珍しく興奮した様子の美月に、茜は微笑ましそうな笑みを浮かべて答える。

クライノート『良かったですね、美月』

 クライノートにも彼女の喜びようが伝わっているのか、
 顔を上げて主を見上げ、どことなく声を弾ませて言った。

クレースト『茜様の決断に、私も従います』

 クレーストは茜の肩の上で落ち着き払った様子で言っているが、
 言葉通りに彼女の選択を全面的に支持しているようだ。

空<……ねぇ、エール>

 仲間達の様子を見遣りながら、空はエールに語りかけた。

エール<何だい、空?>

空<……茜さんがいる、美月ちゃんがいる、クレーストがいる、クライノートがいる……
  それに、エールがいてくれる。だから、きっと大丈夫……>

 空はそう言うと、エールと共に愛機を見上げた。

 この場にいる者達だけではない。

 レミィとヴィクセン、フェイとアルバトロス、風華と突風、瑠璃華とチェーロ、
 クァンとカーネル、マリアとプレリー、臣一郎とデザイア、それに自分たちを支えてくれる多くの仲間達。

 故郷にいる真実、佳乃、雅美……親友達。

 多くの仲間達がいてくれる。

 迷わずに進んでいける……そんな自信が湧いて来る気がした。

 それだけで、肩に……心にかかった重みが、少しだけ軽くなった気さえする。

空<これからも一緒に飛ぼう……>

エール<うん……空。
    ……僕は君の翼だ……>

空<私は……あなたの羽ばたく空だよ……>

 二人はそう言葉を交わし合い、空はエールを抱く腕に少しだけ力を込め、
 エールも空の腕を抱き返した。
524 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:25:06.70 ID:V0zga9kFo
―10―

 同じ頃。
 旧オーストラリア大陸東岸、旧シドニー跡地――


 首都キャンベラを凌ぐ知名度で知られた大都市にかつての人類の栄華は欠片も無く、
 かつては国際スポーツの祭典すら開かれた大都市の姿は見る影も、いや、都市の残骸すら失われていた。

 変わって一面を覆い尽くすのは、凸凹の穴だらけになった黒く硬質な物体。

 おそらくはマギアリヒトが作り出した何らかの――恐らくはイマジンに関連した――構造体だろう。

 その構造体は一面、それこそ地平線の果てまで広がり、オーストラリア東岸を覆い尽くし、その範囲は海にまで及ぶ。

 構造体の発する微かな熱は積もる雪を徐々に溶かし、吹雪の中でさえその黒い異様を晒していた。

 黒い荒野……でなければ地獄のようにも思える殺風景な黒い大地の一角に、
 数十メートルは有りそうな巨大な物体がそびえ立っている。

 その物体は黒い大地の延長と思われる雰囲気を持ちながら、
 微かに薄く柔らかな構造をしており、内部を見る事が出来た。

 不意に、その物体が薄気味悪く蠢く。

 びくん、びくん、と繰り返す。

 まるで心臓の鼓動に同調するかのように、蠢く。

 と、そこに一羽の鳥……いや、鳥型の超大型イマジンが飛来する。

 狙いは、今も蠢くこの物体のようだった。

 イマジンは外界では基本的に弱肉強食。

 強いイマジンが弱いイマジンを食らい、その力を増す。

鳥型イマジン『GIIIIIIIiiiiiッ!!』

 身動きできないソレを弱者と見たのだろう、鳥型イマジンは嘶きながらソレに襲い掛かった。

 そう、つまりはこの物体もイマジンで間違いない。

 身動きの取れないソレは最早、鳥型に捕食されるだけの運命……かに思えた。

鳥型イマジン『ッ、GI,GIGIIIiiiッ!?』

 果たして鳥型イマジンがその物体に触れようとした瞬間、彼は何事かに怯え、その動きを止める。

鳥型イマジン『………Giiii……』

 しばらく滞空していた鳥型イマジンは、怯えきった様子でその場で旋回すると、東の空へと向かって逃げ出す。

 その様子を、黒い物体……いや、その中にいるイマジンはずっと“見て”いた。

 爛々と輝く鬼灯のような真紅の目と、額に生えた一本の角……外殻を覆う黒と同じく漆黒の鎧のような肌を持つイマジン。

 それはまさに、神話の中から現れたような鬼を思わせた。

 仮に名付けるなら黒鬼型とでも言うべきイマジンだ。

黒鬼型イマジン『……………』

 黒鬼型イマジンは無言のまま、逃げ去る弱者を見遣っていた。

 すると不意に、鳥型イマジンの下方から、黒い霧のような物が立ち上り、鳥型イマジンを覆い尽くした。

鳥型イマジン『GIGI!? GIGIGIIIIIiiiiッッ!?』

 何故だ!? 見逃したじゃないか!?

 そう言いたげに暴れ狂う鳥型イマジン。

 黒い霧の正体は、おそらくは黒鬼型に属する何かだ。

 翼長で百メートルはゆうにあった鳥型は一瞬にして黒い霧に飲み込まれ、霧散して行く。

 そして、霧は鳥型であったマギアリヒトを欠片も残らずに飲み込んで、また下へと消えて行った。

 直後、黒鬼型を包んだ物体が、再び、びくん、と蠢いたのだった……。


第24話〜それは、受け継がれる『虹の意志』〜・了

第二部 戦姫激闘編・了
525 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/11/25(水) 20:31:45.87 ID:V0zga9kFo
今回はここまでとなります。
前回「あと少々、お待ち下さい」と書き込んでから一ヶ月以上、
前回更新から四ヶ月もお待たせしてしまい、申し訳ありませんでしたorz

加えて大絶賛スランプ継続中のため今後も似たような投下感覚になるかもしれませんが、
宜しければお付き合い下さい。

その間に気分転換で書いた物を一次・二次創作を問わずに投下するかもしれませんので、
その際はスレのジャンルを問わず、当スレでスレ立ての報告もさせていただいます。
(二次の場合、艦これ、イレハン、ゼノブレの何れかになると思います。)


あと久しぶり過ぎるので安価置いて行きます

第14話 >>2-39
第15話 >>45-80
第16話 >>86-121
第17話 >>129-161
第18話 >>167-201
第19話 >>208-241
第20話 >>247-280
第21話 >>288-320
第22話 >>325-359
第23話 >>379-413
第24話 >>420-464 >>476-524

特別編 >>366-374
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/25(水) 23:38:44.85 ID:5Q3OASmE0
おお、来てた!
週末、ゆっくり読ませて頂きます〜
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/26(木) 00:21:09.08 ID:Gy8N0Bbto
乙乙!
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/16(水) 01:28:43.81 ID:5MElNWkv0
すっかり遅くなりましたが乙っしたー!
さて今回、色々考えさせられた事が。
月島・・・考えは分かるし、それは確かに成し遂げなければならない事だけど、彼の理念には『何のためにそれを成し遂げるのか』が欠けていると感じました。
もちろん、口ではイマジンに対抗し、人類が世界を取り戻すため・・・と言うのはありましたが、本来大儀となるはずのそれさえもう、単なる看板になってしまったというか。
結局彼の思惑通りになっても、その末に出来上がったのはウルトラで言うところのダーク・ザギのような存在になってしまったかもしれませんね。
このところの世の中、単に「反対!」を叫ぶためだけに反対を唱える人の声が大きいですが、何の方法も案も出さない彼らと違ってカレドブルッフを作りながらも、月島はそうした人々と同じ場所へ堕ちてしまった・・・そんな気がします。
さて、そんな月島とカレドブルッフを倒して、エール・ソヴァールと言う偉大な遺産と力を託された空達・・・これは重い!
ある意味、月島からも大きな課題を託されたも同然ですからね。しかも、それを実感する出来事として、彼を倒すと言うシチュを乗り越えて「しまって」いる。
重みは相当なはずですが、エール・ソヴァールが三人で操る、エールたちも加えれば6人で操るギガンティックなら、その重みは6人で分け合えます。支えあえるわけですね。
そして、彼女たち6人はさらに大勢の人達に支えられているなら、力への覚悟や自覚もきっと、多くの人達へ伝わっていく・・・とまで言うと、言い過ぎかもしれませんがww
そんな彼女たちは勿論、人類が未だ知らないところで育っている、大食らいの黒鬼・・・今後の展開、楽しみにお待ちしております。
529 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2015/12/16(水) 21:26:26.06 ID:/TtE5V6jo
お読み下さり、ありがとうございます。

>月島@『何のためにそれを成し遂げるのか』
深読みすると何となく“これかな?”と思える程度には匂わせましたが、
基本的に大それた観点で理由と目的が近似の“大義、斯くあるべき主義”で動かしていましたからね。
そう言う意味では大義が看板になってしまったと言うのも言い得て妙かもしれません。

>その末に出来上がったのは
ミサイルを作った偉い科学者も“今日はロケットの完成した記念すべき日だ”と喜んだそうですし、
殺傷能力と制圧能力の高いガトリングガンも医者が味方兵士の安全を願って作り上げた武器だそうです。
在り来たりな物言いをしてしまえば“光ある所に闇がある”ワケですが、
誰しもより良き物を作ろうとして兵器を凶悪化させてしまうのは人の業なのかもしれません。

>「反対!」を叫ぶためだけに
連中の場合は結局は“気に入らないから意見の違う多数派の人間を邪魔をしたい”ってエゴイズムがあって、
そこに他人を納得させ易そうな理由を貼り付けているだけですからね。
過程と信条はどうあれ、結果と行動がはた迷惑な点はどちらも同じと言うのは考えさせられます。
まあテロもどきとテロの差なんて実害程度しか差が無いんでどっちもどっちですが。

>偉大な遺産と力
正直、これの扱いに困っているのは空達でも機関でも政府でもなく筆者だったりしますw
あと、最終決戦向けにスペック調整したので強すぎと言う二重苦にも悩まされていますorz

>多くの人達へと伝わっていく
コレは結編から……もっと言えばグンナー達の世代から通しての課題ですからね。
それがどんな伝わり方をして行くかは、これからの話次第と言う事になりますが大筋は決めています。

>大食らいの黒鬼
12話でも軟体の本体と白騎士を食らう瞬間にちょいと出しましたが、
三部からは他の超級イマジン達と合わせて本格的に出番が巡って参ります。


次回からいよいよ最終第三部。
少しだけ時を進めて約四年後の79年春が舞台となりますので気長にお待ち下さい。
530 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2016/01/09(土) 06:17:05.71 ID:ddl33Ct8o
セルフ保守
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/29(金) 22:17:30.36 ID:qBN6Uf7l0
穂種
532 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2016/02/21(日) 11:46:35.50 ID:ZDFG+8VSo
セルフ保守  現在の進捗度 15%

スランプのストレス解消にスルーしてたニンニン全部ポチって来ました
533 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2016/03/15(火) 05:24:56.67 ID:BFITlCM3o
セルフ保守  現在の進捗度 20%

相変わらず序盤中盤より終盤のネタばかり思い浮かぶ病
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/17(木) 02:12:18.35 ID:KyoGL/WR0
葡種 &

>序盤中盤より終盤のネタばかり思い浮かぶ病

あるあるww
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/31(木) 09:42:07.77 ID:Dn78j9i4O
http://i1.wp.com/img.grotty-monday.com/wp-content/uploads/gotokill003.jpg
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/31(木) 19:06:19.45 ID:lriTr0j90
>>535グロ注意
537 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2016/04/09(土) 19:16:44.13 ID:GL4ObnD2o
生存報告
そう“生存報告”………………………………………orz

>>536
グロ警告ありがとうございます。
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/27(水) 01:40:28.60 ID:WfyU7Pog0
穂首
539 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2016/05/13(金) 05:58:09.63 ID:yo5e5OvQo
保守ありがとうございます。

進捗率25%
牛歩の歩みですが徐々に進めておりますorz
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2016/05/29(日) 01:34:34.94 ID:A30prR/E0
age
541 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2016/06/17(金) 07:59:06.07 ID:+Dc03SBEo
セルフ保守
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/15(金) 01:23:06.89 ID:r6kmiLhP0
帆主
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/06(土) 21:07:15.43 ID:JlHXgvNU0
歩首なのよ
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 05:53:20.80 ID:+FHFluo7o
保守ありがとうございます。
進捗率45%

風華の新技がどうやっても螺旋丸の亜種
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/05(月) 12:14:46.54 ID:vNQd9FYL0
546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/05(月) 13:21:36.01 ID:vNQd9FYL0
しゅ
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/09(金) 00:39:05.35 ID:suEDYczt0
a
548 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2016/09/15(木) 05:09:17.22 ID:2xKJ/Vkko
保守ありがとうございます。

今日で5周年………進捗率55%
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/25(日) 02:18:28.97 ID:93FzhTDco
550 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2016/10/15(土) 05:41:03.75 ID:NcMAFDl4o
セルフ保守
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/08(火) 22:31:31.07 ID:wsec2OtV0
慌てず無理せず書き進めて下さいな
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/30(水) 01:17:29.78 ID:FwIbHyiu0
553 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2016/12/04(日) 19:26:01.29 ID:DEkNW4Vjo
セルフ保守
PC買い替えにつき再調整中です

一太郎どこに仕舞っただろう………ATOKが恋しい……orz
554 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2017/01/01(日) 03:59:26.01 ID:2KZvliDLo
あけおめセルフ保守

エンジンが暖まってきました
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/21(土) 01:29:42.85 ID:46nqApwu0
謹賀ほしゅ
556 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2017/02/01(水) 04:44:22.06 ID:Z9a1LIpYo
定期セルフ保守
557 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2017/02/28(火) 04:17:00.23 ID:006t40XGo
定期セルフ保守
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 00:51:02.94 ID:RxvTzTYv0
aaa
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 18:41:34.15 ID:CHKYBBZCo
セルフ保守
もうね……壱號から弐拾六號までならべて順番に尻尾をモフったらそれはそれは癒されるんだろうなと
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/03(月) 06:09:33.36 ID:z0v8fAj1o
561 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2017/04/07(金) 04:01:52.51 ID:IroNluSio
>>559
酉忘れてますが本人です
562 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2017/05/05(金) 20:11:00.40 ID:VoZVTZeFo
定期セルフ保守
563 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2017/06/05(月) 04:38:06.22 ID:SzHg+4nUo
定期セルフ保守
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 01:16:48.47 ID:l10YlLW70
ふぉしゅ。
565 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2017/07/07(金) 05:17:29.95 ID:KrKMD0SRo
定期セルフ保守
566 : ◆lWNwJts14k :2017/08/06(日) 01:53:32.69 ID:TrnEvGDwo
test
567 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2017/08/06(日) 03:04:30.67 ID:UvCIJyHBo
定期セルフ保守
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/28(月) 23:13:31.54 ID:MukUkNNN0
保守
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/07(木) 04:39:37.95 ID:61opO8uOo
セルフ保守
570 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2017/10/07(土) 06:31:01.73 ID:KiNLv/1/o
セルフ保守
571 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2017/11/06(月) 07:09:16.96 ID:Hyv8afyPo
忘れる前にセルフ保守
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/25(土) 21:35:14.71 ID:BaQo60LE0
保守だよ!
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/24(日) 05:16:56.14 ID:/Zl5z+r3o
セルフ保守
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 22:34:01.56 ID:viA+KNOl0
あけましておめで保守
575 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2018/01/23(火) 04:13:44.26 ID:/tOY7zsVo
リアルごたごたがピークを迎えるかもしれないのでセルフ保守
576 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2018/02/24(土) 16:54:37.68 ID:cgPoh2Rb0
ピークは来たけど過ぎた
しかし、アレが最後のピークとは思えない
きっと第四、第五のピークが来て欲しくもないのにやって来る……orz



いい加減、書きたい
577 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2018/03/25(日) 04:09:23.99 ID:mWCqGSzW0
セルフ保守
578 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2018/04/30(月) 04:49:43.75 ID:S2UM5w3U0
せるふほしゅ
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 16:47:39.97 ID:Gf1QPzEe0
セルフ保守
580 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2018/07/03(火) 18:39:50.41 ID:uVedWBrD0
セルフ保守
581 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2018/08/12(日) 04:11:14.25 ID:SdqKpIaA0
セルフ保守
生きてますよ
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 05:27:10.55 ID:lvp51yXj0
セルフ保守
書いてますが今後の投下はちょっと状況次第です
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/22(木) 00:29:44.13 ID:thAq2dnv0
久々に来たらSS速報が復活していた保守
584 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2018/12/29(土) 03:55:08.99 ID:/hxR6Yyw0
セルフ保守

何となく瑠璃華お当番回の方向性が定まって来たけど
肝心のお当番回は今書いてる話の三つ後の話………
585 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2019/01/31(木) 04:29:07.69 ID:70w37ViA0
セルフ保守
586 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2019/03/10(日) 05:49:51.61 ID:XsRLHmVL0
セルフ保守
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/29(金) 01:00:55.03 ID:PSAWlD7o0
捕手
588 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2019/04/29(月) 05:41:02.02 ID:0hXA3Yq40
セルフ保守
589 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2019/05/31(金) 04:48:12.88 ID:Ji1kmnFR0
セルフ保守
590 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2019/07/13(土) 04:05:19.10 ID:sKz/jy7+0
セルフ保守
591 : ◆22GPzIlmoh1a [saga sage]:2019/08/15(木) 03:48:53.53 ID:C65XkkAw0
セルフ保守
592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/25(水) 04:40:14.57 ID:1iZvVw1S0
セルフ保守
百合ハーいいよね百合ハー
593 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2019/11/01(金) 04:31:24.19 ID:/aXSRgp80
セルフ保守
594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/11/12(火) 21:07:42.18 ID:PPdNYh/j0
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/12(火) 21:15:38.45 ID:zCXenXSl0
何だこの見慣れないスレと思ったが四年も投下ないのかよ…
596 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2019/12/03(火) 03:35:01.71 ID:6NHrBhpv0
セルフ保守
597 : ◆22GPzIlmoh1a [sage]:2020/01/05(日) 15:40:28.73 ID:vhfeY9LJ0
セルフ保守
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