196: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/09/12(月) 22:04:08.01 ID:nL4eep7DO
翌日。
その週の最後の登校日。いろははレナと昼休みに屋上へ向かうと、そこには鶴乃がいた。
二人は声をかけたが、一点を見つめたままで返事がなく、近くまで寄って声をかけると、
そこでようやく二人に気が付いた。
197: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/09/12(月) 22:06:17.78 ID:nL4eep7DO
「鶴乃ちゃんのお父さん、大丈夫なの?」
「ずっと入院してるって聞いてるけど……」
「人間ドックの結果が良くなくて、それからずっとだよ。引っ越し先が病院から近いから、
お見舞いには毎日行ってるんだけどね、店をやってた頃から一気に老けちゃって……」
「…………」
198: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/09/12(月) 22:08:36.58 ID:nL4eep7DO
そこまで話したところで、ふと、鶴乃は思い出したように時計を見た
時間は予鈴が鳴る五分前となり、三人は慌てて立ち上がると、教室に向かって駆け出した。
「ごめんね、いろはちゃん、レナ。話に付き合わせちゃって」
「それはいいよ。鶴乃ちゃんと話せてよかったから」
199: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/09/12(月) 22:11:51.27 ID:nL4eep7DO
「お茶用意するから適当に座って待ってて」
「ありがとう。外見てもいい?」
「いいよ。そこから鍵を開ければ出られる」
いろはは鶴乃に断ってベランダに出ると、レナと一緒に外の風景を眺めた。
200: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/09/12(月) 22:18:27.35 ID:nL4eep7DO
「私が守りたかったのはさ、曾お爺ちゃん、お爺ちゃん、お父さんが守ってきた
中華万々歳を、再興したかったってこと。私は将来、三代に渡って続いてきた
お店を継ぎたかったの。自分の店を持つっていうのとは、ちょっと違うの……」
「鶴乃ちゃん……」
「お父さんがね、廃業前に最後にもう一度営業するって言ってた。全商品を半額で
201: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/09/12(月) 22:27:10.78 ID:nL4eep7DO
「ありがとう。チャーハンとスープを用意するよ」
「いいわね。もう二度と食べられないと思ってたし」
「万々歳と言えば、メニューを制覇したなぁ」
「連絡をくれれば、材料用意して希望のメニューも作れるよ」
「そこまでしてもらうのはちょっと、悪いかな……」
202: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/09/12(月) 22:30:19.04 ID:nL4eep7DO
それからニュースは次の内容へ移り、先日の地震で発生した土砂崩れで亡くなった、
林間学校に参加していた生徒の、親族へのインタビューに切り替わった。
地震は天災であるため現実を受け止めるしかないと言う親族もくれば、地震発生の
予測の可否を問う親族、林間学校を企画した学校に責任を問う親族もいた。
203: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/09/12(月) 22:33:46.03 ID:nL4eep7DO
「これよこれ、レナの知ってる万々歳の味よ!」
「美味しいよ、鶴乃ちゃん!」
「そういってもらえて嬉しいよ。私も一緒にさせてもらうね」
鶴乃も夕飯の席に加わり、三人でしばし談笑しつつ、食事を勧める。
204: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/09/12(月) 22:38:57.36 ID:nL4eep7DO
「この数ヵ月で、あっという間だったよね」
「ほーんとね。にしても、態々万々歳のその後を見に行くなんて、
レナも人のこと言えないけど、鶴乃のこと気にかけてるのね」
「昨日、ラビさんたちと話があって、その帰りにタクシーで遠回りしてね」
「ふーん…って、リーダー同士での会話って、しかも珍しい相手ね。何かあった?」
205: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/09/12(月) 22:46:27.93 ID:nL4eep7DO
「ありがとう。鶴乃さん、色々あったらしいけど大丈夫?」
「心配してくれてありがとう。葬儀も引っ越しも済んで、鶴乃ちゃんも登校を再開してるよ」
「ここに来るとき、お店に寄ったらお店がなくなってたんだけど……」
「鶴乃ちゃんのお父さんがお年でね、それで……」
「そうだったんだ。鶴乃さん、本当に大変だったんだね」
206: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/09/12(月) 22:50:00.16 ID:nL4eep7DO
静香の話によると、霧峰村の近くを通る川の底には、魔法少女の遺骸が沈んでいるという。
遺骸を引き上たあとは分寺に埋葬するが、遺骸は既に白骨化してしまっている。
引き上げた後は遺骸を故人ごとに分けたいが、どの遺骸が誰なのかを正確に判別できない。
そのため、引き上げた遺骸は一つの場所に埋葬することとし、分寺の敷地内に亡くなった巫の
慰霊碑を立てようとしている、ということだった。
235Res/340.48 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20