199: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/09/12(月) 22:11:51.27 ID:nL4eep7DO
「お茶用意するから適当に座って待ってて」
「ありがとう。外見てもいい?」
「いいよ。そこから鍵を開ければ出られる」
いろはは鶴乃に断ってベランダに出ると、レナと一緒に外の風景を眺めた。
視線の先には里見メディカルセンターが見え、ゆっくり歩いても三十分程で、
到着出来ると思われる距離だった。
立地のためか、車両の走行音が遠くに聞こえ、マンション周囲は静かな環境だった。
区画された更地の住宅用地が眼科に見えたが、工事は中断しているらしい。
晴れにもかかわらず、重機にはカバーがかけられている。
鶴乃に声をかけられると、二人はベランダを後にし、戸を閉めて居間へ戻った。
「どうぞ。お店で出してた黒茶だよ」
「ありがとう、いただくね」
「ん…おいしい…!」
「人にお茶を出すのも久しぶりだよ。店を閉めてから、時間が出来て変な感じでさ」
「ずっと続けてたお店だったもんね。無理もないと思うよ」
「レナ、最初聞いた時、数ヵ月遅れのエイプリールフールかと思ったわ」
「お父さんとは話し合ったんだけどね。あの時は反対したけど、今ならお父さんの
言ってたことも、受け入れられるんだ。だけどさ……」
「…………」
「何かあるの?」
「お父さんに『お前はお前の中華万々歳を築けばいい』って、言われたんだ。
でも、それはちょっと違うんだよね」
「鶴乃は鶴乃の店を持ちたかったわけじゃないの?」
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