132: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/26(木) 23:59:44.24 ID:+lVnpH3p0
接敵とほぼ同時に行われる、雲霞の如き航空戦力の大規模投入。
今や“朝の起き抜けに飲むホットコーヒー”と同レベルの、殆どルーティーンと化したそれはこの戦場でもしっかりと実行された。
『『『─────…………』』』
133: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:02:39.64 ID:sMuggt4e0
陣形を崩し、大きな出血を強いることに成功した。鮮やかな戦果と言っていいと思う。
でも、この優勢が長続きしないことは私でも解る。向こうの航空隊は確かに総崩れに陥り相当な撃墜数も出しているけど、尚規模は少なく見積もってこっちの10倍強。後続戦力だってきっと無尽蔵に近いだろう。
対する私達の側は、【学園艦棲姫】を止めるために八頭司令と龍驤さん達第一・第二艦隊のほぼ全員、お姉様の名を冠したイージス艦【こんごう】等主戦力の大半が出払っている。航空戦力も、基地航空隊については今し方交戦を開始した50機ちょっとで打ち止めだ。
134: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:06:26.20 ID:sMuggt4e0
「──────ふぅっ!」
短く、息を一つ吐く。これから激しく絶望的な戦いが始まろうって言うのに、焦燥や恐怖は意外なほど感じない。
その代わり脳裏に浮かぶのは、ある男の人の…………私達の、司令官の姿。
135: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:08:41.75 ID:sMuggt4e0
無論、バカな私でも解っている。司令官の隣は、今や“あの人”の指定席だって。“あの人”と司令官の間に、私が入れる隙間なんて1ミリもありはしないって。
それでも、私はバカだから、できないんだ。戦いもせず、ただ諦めるなんて。
(………龍驤さんには、恋も、戦いも、負けません!!)
136: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:11:19.70 ID:sMuggt4e0
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137: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:15:00.65 ID:sMuggt4e0
精神状態良化・高揚に伴う艤装性能限界突破現象───という正式名称は長ったらし過ぎるので“キラ付け”なんて俗称がつけられたこの状態は、駆逐艦娘が戦艦棲姫を沈めるほどの劇的な効果さえ時としてもたらす。故に各鎮守府、特にここを含めた【海上機動迎撃網】の構成府や最前線である東南アジアの特派府・泊地群はその維持に腐心している。
そして実際、眼前の比叡さんの暴れぶりを見ていれば関連事案を法制化するほどの重要視ぶりも納得だ。あくまで数値的には榛名さんに対空性能で遅れを取り、噴進砲や電探連動型の高角砲等の特殊装備もなし、三式弾だって改装前の通常型。
にも関わらず、比叡さんは殆ど単艦に近い状態であの大編隊を押し返しているのだから。
138: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:17:53.75 ID:sMuggt4e0
かく言う私自身はといえば、無論提督さんのことを憎からずは思っている。とはいえそれは龍驤さんや比叡さんのような恋慕ではないし、妙高さんが抱いている世話焼き的な母性(……或いは野次馬根性)とも違う。
榛名さんや大鳳ちゃんがよく口にするその力量に対しての「敬意」と、“かわうち”の悪友的な「友情」、その中間というのが多分一番近いかな。
では二人と比較して、私のこの戦いに対する覚悟や決意は弱いのか?…………そう問いかけられれば、胸を張り、声を大にして言える。
139: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:20:18.88 ID:sMuggt4e0
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140: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:29:11.45 ID:sMuggt4e0
この鎮守府に留まらず、【海上機動迎撃網】全体へと行われた一大攻勢。経路・艦隊規模・戦況推移、何れも横須賀司令府が事前に立てていた予測内容とほぼ完全に一致する。
当然、とまでは言えないが十分に納得はできる結果だ。何せ八頭や海自屈指の秀才(かつ危険人物)と名高い例の一等海尉を筆頭に、三自衛隊と在日米軍、各司令府所属の提督達が各々の知略をフル回転させ総力を挙げて解析と議論、改訂を重ねているのだから。
仮に“全て”予測通りであったなら、少なくとも日本列島戦線に関しては持ち堪えるどころか十分な余力を以て反転攻勢さえ可能としただろう。
141: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:34:29.08 ID:sMuggt4e0
「あ、あの………小栗提督代理、大丈夫ですか?」
「ん………あぁ」
凄まじい勢いで戦況報告と艦娘や館内人員、妖精たちへの指示が飛び交う中で漏れ聞こえてくる暗く陰鬱な“噂話”。否が応でも耳に入ってきてしまうそれらに思わず眼鏡をずらし眉間を抑えていると、手元にスッと湯気を立てたお茶が差し出される。
142: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:37:43.75 ID:sMuggt4e0
突拍子もない申し出ではあったが、その御蔭で落ち着けたこともまた事実。そして辺りを見る余裕が出てくれば、司令室全体が不安と疲労に擦り潰されそうな有様となっていることが直ぐに感じられた。
休養はとても取らせられる状況ではないにしろ、“一息”ぐらいは入れさせなければそれもまたどこかで致命的な決壊を招くだろう。
「いえ、やはり流石にここの指揮は私の職務ですので、戦況が安定するまでは離れられません。
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