134: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:06:26.20 ID:sMuggt4e0
「──────ふぅっ!」
短く、息を一つ吐く。これから激しく絶望的な戦いが始まろうって言うのに、焦燥や恐怖は意外なほど感じない。
その代わり脳裏に浮かぶのは、ある男の人の…………私達の、司令官の姿。
「能代より比叡、敵航空隊の陣形転換を視認!目標を基地航空隊追撃からこちらへ切り替える様子!」
「比叡より連隊各艦、陣形を維持!三隈、高雄は主砲三式弾装填急げ!」
「高雄、了解!三式弾装填!!」
「三隈、三式弾切り替え終わりましたわ!」
初めは、ただの“上官”でしかなかった。
青ヶ島鎮守府が作られる前、東南アジアにおける制海権奪回作戦の真っ最中に彼の下に配属されたのが司令との顔合わせ。
当時は彼自身も“民間出身ながらかなりのキレ者がいる”と噂になっていた程度で、任されている艦娘は私が加わったことでようやく一個艦隊分。あくまで呉司令府所属の提督の一人という立ち位置に過ぎない。
何なら、私個人の印象だけで言えば“ただの上官”よりもう少し悪かったかもしれない。金剛姉様はいないし、榛名も加入はもう少しあとだった為金剛型としては一人ぼっち、おまけに栄えある大日本帝国海軍の戦艦ともあろう自分が、ナヨナヨとした外面の一般人の指揮下。
ボイコットこそ流石にしなかったけど、穏やかではなかった心中を割と我慢せず司令に対しての態度で出してしまっていた自覚はある(その結果轟沈を覚悟するほど龍驤さんにシメられた)。
「接敵まで120秒!敵機群散開運動に移る!」
「比叡より高雄並びに三隈、射角50度にて照準調整!合図あり次第三式弾一斉射!!
駆逐、軽巡各位は射角30度〜水平にて弾幕射用意、急降下爆撃並びに雷撃への警戒を厳と成せ!」
いつ頃からだろう、司令の下で戦い、司令の力になれることを幸せと思うようになったのは。
いつ頃からだろう、任務や使命のためではなく、ただ“彼のため”に戦うようになったのは。
「接敵まで60秒!!また、航空群の後方に深海棲艦の艦隊も目視!!約10個艦隊、急速に接近中!!」
「【第一連隊】各位、固守態勢崩すな!!不惜身命の覚悟を以て戦線を維持!!」
………いつ頃からだろう、
「青ヶ島を、私達の鎮守府を死守せよ!!!」
司令の隣に居るのが、私だったらと思うようになったのは。
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