ネイチャさんの商店街メシ
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8: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:12:38.02 ID:4Xl2PJ5H0

 この商店街が取り扱っているのはほぼすべてが食品であり、それゆえ、この商店街は「北九州の台所」とも称される。市民の大事な食卓を囲うのみならず、市内の老舗の料亭もこぞってここを訪ねて食材を買い付けに来るそうだ。

 特に魚のモノのよさは目を見張るものがある。瀬戸内と日本海の両面に接する北九州は、言わずと知れた魚の宝庫であり、その種類といい鮮度といい申し分ない。サワラやカマス、サバといった旬の魚が、まるで生きているかのような澄んだ目をして氷の上に陳列されている。

以下略 AAS



9: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:13:25.86 ID:4Xl2PJ5H0

「ありゃ。おじさん、お久しぶりです。ええ、ご覧の通り元気ですよ。おじさんはどう?」

「こっちも見ての通りよ! ……そういえば、小倉に何しに来とん? レースは今やっちょらんやろ?」

以下略 AAS



10: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:13:55.53 ID:4Xl2PJ5H0

「旦那じゃなくてトレーナーさんね。今日は仕事で小倉レース場なんです」

「かーっ。こんな遠い場所でこんな別嬪なねーちゃん置いて仕事っちゃア、いけん男やなあ」

以下略 AAS



11: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:15:12.86 ID:4Xl2PJ5H0

「ったく、しんみりしていけんな。……おお、そうだ。ねーちゃん、『例の』ポスターも、ばっちり貼っちょるよ」

「ポスター?」

以下略 AAS



12: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:16:43.72 ID:4Xl2PJ5H0

「こ、これは……?」

 顔を赤らめながらネイチャは尋ねた。

以下略 AAS



13: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:18:05.97 ID:4Xl2PJ5H0

「はあ……」

 ネイチャは大きく息を吐いた。

以下略 AAS



14: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:18:31.38 ID:4Xl2PJ5H0

 だが、その虫はどうやら腹に移動したようである。ぎゅる、とネイチャの腹が鳴った。まだ正午を迎えるには十分に時間があったが、恥ずかしさから何度も声を上げたおかげで、エネルギーをつい消費したようであった。

 多くの商店街は、定食屋や喫茶店、ラーメン店や居酒屋といった飲食店がある。一方で、この商店街は飲食の専門店という体裁の店は少なく、魚屋や総菜屋が丼モノや定食を提供するといった形式の店が多い。さらには、商店街の中には近くの公立大学が開放するスペースがあり、そこでご飯が盛られた丼を買い、店々の食材を少しずつ購入しながら自分オリジナルの丼を作るというユニークなものもある。

以下略 AAS



15: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:18:57.52 ID:4Xl2PJ5H0

 紺の暖簾に白抜きで書かれた五文字と、卵でとじたカツのイラストを描く立て看板がネイチャを誘った。トレーナーへすぐに仕返しできないフラストレーションを昇華したいという気持ちもあったのか、彼女は食べ応えのあるモノを食べたかった。そこに、油っ気のある香ばしい匂いが漂うと、ネイチャの気持ちを一層誘った。

 ネイチャは暖簾をくぐり、木戸をガラガラと引いて中へ入った。

以下略 AAS



16: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:19:27.17 ID:4Xl2PJ5H0

 さて、ネイチャは例のポスターの隣に掛けられたメニュー表を眺めた。メニュー脇に画鋲でぞんざいに留められた「ただ今、新米使用」の張り紙が、胸を躍らせる。外の暖簾に銘打っていたトリカツ丼の他にも、親子丼や唐揚げ定食もあるようだ。親子丼は鶏肉の種類で2つに分けられており、凝っている。とはいえネイチャはトリカツ丼を欲してここに来たのであり、鋼の意志のごとく揺るがない。ネイチャを少し悩ませたのは、トリカツ丼の大きさが、小盛りに並盛り、大盛り、そして特盛りと多様にあったことだ。

 ネイチャは少し考えた後、厨房で作業をする女将に声をかけた。

以下略 AAS



17: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:20:28.71 ID:4Xl2PJ5H0

 ネイチャは一昨日も練習メニューを軽く済ませ、前日は東京からの移動とトークイベントがあっただけで、あまりエネルギーも消費していない。それゆえ並盛りでも十分足りたのかもしれないが、トレーナーへの鬱憤を晴らしたいという気持ちが、ネイチャを大盛りへと誘ったのかもしれない。

 ネイチャが注文を済ませてしばらくしていると、絶え間なく客が来店し始めた。昼も近づき、書き入れ時である。次々と注文を受ける女将の動きもペースが上がり、忙しなくなる。

以下略 AAS



18: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:21:36.33 ID:4Xl2PJ5H0

「はい、お待たせしました。とりかつ丼大盛りですね」

 ネイチャが丼と汁椀を乗せた盆を受け取ると、ずしりとしっかりした重さを感じた。

以下略 AAS



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