ネイチャさんの商店街メシ
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18: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:21:36.33 ID:4Xl2PJ5H0

「はい、お待たせしました。とりかつ丼大盛りですね」

 ネイチャが丼と汁椀を乗せた盆を受け取ると、ずしりとしっかりした重さを感じた。

 トリカツ丼はネイチャが想像していたよりも大盛りであった。トリカツは一枚一枚が小ぶりだが、とはいえ十分な大きさで、それが三枚乗っていると十分な迫力である。これはなかなか食べ応えがありそうだ、とネイチャは心構えた。

 しかし、湯気とともに漂う甘みを含んだ割り下の香りは食欲を誘う。女将の火加減の見極めも見事だったのか、玉子は半熟でとろりと光沢を帯びている。

 ネイチャは手を合わせ、それから割り箸を手に取った。

 まず手始めに、トリカツを一切れ箸で持ち上げた。断面は鶏モモ肉の繊維がしっかりとしており、肉汁もうっすらと滲み出ててらてらと輝き美しい。

 半分ほどかじると、衣がサクリと小気味よい音を立てた。カツをとじることなく、上から玉子を乗せたことで、揚げたてのカツの軽妙な食感が残されているのだろう。おかげで、カツを取った下に敷かれた白米は、まだ割り下が浸み込んでおらず、白く無垢のままである。肉は手塩にかけて飼育された若鶏を使っているのか、柔らかで独特の臭みもなく、噛むと肉汁と旨味があふれる。それから、割り下の甘みと出汁の風味、濃厚な玉子の滋味が追って来る。カツの残り半分を口に運び、さらに下に隠れたつややかな白米を頬張ると、得も言われぬ幸福感がネイチャを襲った。思わず頬が緩む。

 なにより絶妙なのは、パン粉の付き具合である。目も細かいパン粉を使っているおかげで衣は薄い。おかげでパンチのある重たいカツにはなっていないが、鳥の淡白な味わいには丁度よく、優しげな印象を受ける。これならばネイチャが衝動で注文した大盛りでも十分に食べられそうだ。ネイチャは「うんうん、こりゃいいじゃん」と心の中で頷いた。




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