19: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:22:22.68 ID:4Xl2PJ5H0
河岸で早朝から働く人々、また土地柄オフィスワーカーも多い場所であり、しっかりと胃を満たすことを目的にこの店へとやって来る。とはいえ、油気が多いと胃が堪えるものだ。量的な重さと質的な重さは似て非なるもので、ゆえに二つのバランスが重要なのだが、そのバランスの黄金比をこのトリカツ丼は見出している。
一切れ、また一切れと食べ進めるうちに、気付けばネイチャは三枚あったトリカツの一枚を食べてしまっていた。これはなかなか危険である。今日のネイチャでも、食べようと思えば特盛、いわゆる二人前でも完食できたかもしれない。もしも腹を空かせた大食いのウマ娘がここを訪れたら、どうなることかと一旦ネイチャは想像したが、空恐ろしく途中で止めた。
箸休めに吸い物を一口啜る。わかめと麩が入ったシンプルな澄まし汁だが、みりんが効いてほんのりと甘く、丸みを帯びた柔らかな味わいである。軽妙な味わいのトリカツ丼との相性もよい。
丼を半分ほど食べ進めたネイチャは、トリカツに三つ葉を乗せ、それを一口で食べた。大ぶりの一切れを頬張るのは、親子丼ではできない行いである。鶏肉の旨味、揚げ衣のほのかな油気、割り下を含んだ玉子と玉葱の風味、そして、三つ葉の鮮烈ではあるが優しい香りがそれぞれ混ざる。舌を刺激し、鼻を抜ける風味は見事に調和している。
カツの衣は割り下を吸い、程よく柔らかくなり、甘みを含み始めた。このことがさらに一層の調和を生み出した。さらにその割り下は、トリカツの下に敷かれた白米にも染み始めている。これはBNWか、TMか、はたまたTTGを彷彿とさせる渾然一体の様である。これらすべてを同時に一口で食べたら、一体どうなるのだろうか。ネイチャは思わず喉を鳴らす。ネイチャは箸でトリカツ一切れとご飯を器用に乗せるようにして取り、大きく口を開けて、そして食べた。その快感にネイチャの両耳はへにゃりと横に倒れた。うら若いネイチャには少々刺激が強すぎたのかもしれない。
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