ネイチャさんの商店街メシ
1- 20
18: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:21:36.33 ID:4Xl2PJ5H0

「はい、お待たせしました。とりかつ丼大盛りですね」

 ネイチャが丼と汁椀を乗せた盆を受け取ると、ずしりとしっかりした重さを感じた。

以下略 AAS



19: ◆kBqQfBrAQE[sage saga]
2021/12/26(日) 23:22:22.68 ID:4Xl2PJ5H0

 河岸で早朝から働く人々、また土地柄オフィスワーカーも多い場所であり、しっかりと胃を満たすことを目的にこの店へとやって来る。とはいえ、油気が多いと胃が堪えるものだ。量的な重さと質的な重さは似て非なるもので、ゆえに二つのバランスが重要なのだが、そのバランスの黄金比をこのトリカツ丼は見出している。

 一切れ、また一切れと食べ進めるうちに、気付けばネイチャは三枚あったトリカツの一枚を食べてしまっていた。これはなかなか危険である。今日のネイチャでも、食べようと思えば特盛、いわゆる二人前でも完食できたかもしれない。もしも腹を空かせた大食いのウマ娘がここを訪れたら、どうなることかと一旦ネイチャは想像したが、空恐ろしく途中で止めた。

以下略 AAS



20: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2021/12/26(日) 23:23:11.35 ID:4Xl2PJ5H0

 カツを煮込まなかったおかげで、始めのうちはサクサクとした食感と香ばしさを楽しめ、次第にカツや白米が汁を吸うにつれ、しっとりとした食感と調和の取れた味わいへと変化する。カツをあらかじめ煮込まなかったのは、昼間のごった返す客を捌くべく時間をわずかでも節約するための、店の涙ぐましい努力が生み出した方策だったのだろう。しかし、その方策が結果として、一杯で二度美味しいトリカツ丼を生み出したのである。この変化の魅力は、まさにターフのマイル王からダートの怪物へと成り代わったクロフネさながらである。

 すっかりと丼に魅了されたネイチャは、食べることに没頭した。ここまで夢中になって一気呵成に食べる彼女の姿はなかなか見ることができない。なぜならば、揚げ物やにんじんハンバーグを何個も平らげるウマ娘を食堂で眺めては、「やれやれ、みんな若いねぇ。アタシなんてあんなに食べちゃったら最近は胃薬ないと胃もたれが……ねぇ?」なんて年寄り染みたことをのたまうネイチャである。そんな彼女が一口、また一口と頬張るのだ。玉子と玉葱、そして三つ葉を纏ったトリカツに、割り下が染みて一層輝き宝石のようにきらめく新米に魅了されたのだ。気付けば、丼の中はほとんど空になってしまった。

以下略 AAS



21: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2021/12/26(日) 23:23:40.31 ID:4Xl2PJ5H0

 丼を置くと、ネイチャは息を吐いた。その溜息は充足感と幸福感に満ちていた。

 ネイチャは最後に、残った吸い物を口にした。少し冷めてしまっているものの、締めには丁度よい。ほんのりと甘みのある吸い物は、口の中の油気を洗い流すが、トリカツ丼の余韻を残してくれた。

以下略 AAS



22: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2021/12/26(日) 23:24:11.16 ID:4Xl2PJ5H0

 がらりと戸を引いて外に出た。正午が近い商店街は、変わらず賑わいを見せていた。

 ふと、ネイチャはトレーナーのことを頭に思い浮かべた。彼の特別講義は正午過ぎまでする予定だと昨日言っていた。となれば、帰りの新幹線に乗る前に昼食を済ませるには、時間がないかもしれない。

以下略 AAS



23: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2021/12/26(日) 23:25:07.66 ID:4Xl2PJ5H0

 ネイチャは小倉駅の土産物屋を散策していると、レース場での一仕事を終えたトレーナーがやって来た。

「しばらく待たせたんじゃないか?」

以下略 AAS



24: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2021/12/26(日) 23:25:53.90 ID:4Xl2PJ5H0

「これは?」

「唐揚げ、商店街で買ってきたの。お弁当のおかずにチョイ足ししたら丁度いいかもって思ってさ」

以下略 AAS



25: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2021/12/26(日) 23:26:52.42 ID:4Xl2PJ5H0

「うん、そうだな」

「……えっ」

以下略 AAS



26: ◆kBqQfBrAQE[sage]
2021/12/26(日) 23:27:49.62 ID:4Xl2PJ5H0


今回取り上げた商店街は、小倉駅から競バ場へ一本で行けるモノレールの途中にあるので、小倉で競バを見に行った時には是非訪れてはいかがでしょうか。

続編はあるかもしれないし、ないかもしれません。
以下略 AAS



27:名無しNIPPER[sage]
2021/12/26(日) 23:51:30.17 ID:sHEmjnCi0
続かなくても大丈夫です


28:名無しNIPPER[sage]
2021/12/26(日) 23:56:27.34 ID:Gf4FEun/0

地元の風景を思い出して、僅かばかりに記憶に残る街の雰囲気がふわりと香る、ノスタルジックな気持ちにさせてくれる文章でした。
ネイチャと一緒にぶらりと商店街を歩きたくなりました

更新お疲れ様です


29Res/25.11 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice