63: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:46:17.67 ID:86/EQe0g0
「聖母サマがわざわざウチのクラスに来るなんてねー」
隣の友達が腕を組み、うんうんと頷きながらそう言う。
「別に、クラスにぐらい来るんじゃないの?」
「今ぐらいの用事、例の子豚ちゃんに言えば、ぶひぶひ言いながら喜んでやってくれるのに」
なるほど、確かにそうかも知れない。
64: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:46:52.35 ID:86/EQe0g0
放課後になり、J組に行った方がいいのかな……と思っていると朋花の方から来てくれた。
また、私の周囲がザワつく。
私は少し、鼻が高い。
「私がJ組に行ったのに」
65: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:47:42.95 ID:86/EQe0g0
朋花の家は、住宅街に忽然と現れる森のような場所にあった。
正確には、門付きの森。
森の正面に門がくっついているのだ。
その森も、中ではあちこちに季節の花が咲いている。
66: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:48:26.18 ID:86/EQe0g0
「朋花です。ただいま戻りました〜」
彼女はそう言うと、門の中へと入っていく。
「と、朋花。朋花!」
「はい〜?」
私は朋花を必死で呼び止める。
67: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:49:04.72 ID:86/EQe0g0
私の困惑に、朋花が言葉を添えてくれる。
「花は誰も見ていなくても、自ら美しくありますよね〜。礼儀作法とは、そういう美しさだと……まあこれはお爺様の受け売りですが〜」
なるほど。朋花の言葉に少し私はわかった気がした。
誰かが見ているからではなく、いつも美しく咲いよう……というのは、確かにいい考え方だと思った。
「えっと、渋谷凛です。ただいま戻り……えっと違うよね。初めまして……かな」
68: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:49:51.58 ID:86/EQe0g0
門から玄関までかなり歩き、玄関で靴を脱ぐ。
その動作や課程ひとつひとつに、朋花がこの大きなお屋敷のお嬢様だという実感が伴う。
廊下を歩いていると、朋花はある部屋の前で膝をついた。
手を揃えて頭を下げると言った。
69: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:50:33.29 ID:86/EQe0g0
どうしよう。
これ、私も何かごあいさつ……とかするべき?
廊下に膝をついて、手を揃えて頭とか下げた方がいいの?
「こちらへ、凛さん〜」
悩んでいると、朋花は既に立ち上がっていて私にそう言った。
70: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:51:17.19 ID:86/EQe0g0
茶室というのが、お茶を飲む部屋以上の意味がある場所だというのはわかっていた。
いわゆるテレビなんかで見る、茶道の席みたいな部屋だろうとは思っていた。
だが朋花は庭に出ると、また森のような場所を通り小屋みたいな所に私を連れて行った。
茶室は部屋ではなく独立した、ちょっとしたした家ぐらいある別の建物だった。
71: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:51:54.73 ID:86/EQe0g0
朋花は茶室の障子を開けるとその廊下に腰掛けた。
「凛さんもこちらへ〜」
私は頷くと、朋花の隣に座った。
「本日、凛さんにおいでいただいたのは、写真を撮っていただきたかったからです〜」
「え? 写真?」
72: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:52:52.10 ID:86/EQe0g0
「では」
数分の後、朋花は再び口を開いた。
「凛さん、撮っていただけませんか〜? 私の写真を〜」
「う、うん……え? 私が撮るの!?」
「先ほどから、そう言っているではありませんか〜」
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