Bye-byeばさらガール
1- 20
3: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 12:55:52.14 ID:86/EQe0g0
 やってきた女の子は、明らかに3番目のタイプのお客さんだ。
 年の頃は私と同じぐらいだろうか。
 とても可愛い。いや、美人といえる顔立ちだ。
 淡いブルーを基調とした花柄のワンピースで、長めの髪を頭上でおだんご状に結んでいる。
「なにかお探しですか」
以下略 AAS



4: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 12:56:45.38 ID:86/EQe0g0
「定番のアンスリウムの仏炎苞も良いものを選んでいますし、芍薬もいい色合いですね〜」
 実際に仕入れたのは父親だが、誉められれば嬉しい。
 そしてその花々を誉める少女の横顔も、なんだか神々しい。いや、絵になっている。
「ただ〜」
「え?」
以下略 AAS



5: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 12:57:39.46 ID:86/EQe0g0
「花束に入れると、綺麗だから……」
 自分で言って、驚いた。
 そんなこと、店に並べた時は思いもしなかった。
 なのにその言葉は、自然に出てきたのだ。
「……証明、できますか〜?」
以下略 AAS



6: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 12:58:27.63 ID:86/EQe0g0
 私は店の花を見回すと、いく本かの花を手に取る。
「四種いけ……?」
 少女のやや批難じみたつぶやきが聞こえたが、その意味はよくわからないし相手にしている余裕が今はない。
 ただ一心不乱に、花束を作った。
 これまでも「お任せで」と言われて花束を作ったことはあったが、ここまで集中して作ったのは初めてかも知れない。
以下略 AAS



7: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 12:59:19.43 ID:86/EQe0g0
「意に添わぬ花でも、生けた全体からすれば見事な一点になることもある……そう言ったと伝えられていますが。確かにこのラナンキュラスは調和がとれ、自身の個性も際立ちましたね〜」
 もしかして、誉めていてくれてるのだろうか。
 そう考えていた矢先。
「ですけど〜」
「え?」
以下略 AAS



8: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:00:11.83 ID:86/EQe0g0
「これ……生け花じゃないから」
「あ」
「花束だから」
 少女は驚いた表情を見せるとしばらく後、心底可笑しそうに笑いだした。
「私としたことが、これは大変失礼いたしました〜。そうですね、生け花ではありませんでしたね……口げんかでは誰にも負けないつもりでしたが、これは一本とられましたね〜」
以下略 AAS



9: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:01:02.23 ID:86/EQe0g0
「このお花、おいくらですか〜?」
「え?」
「いただいてまいりますね〜」
「あ、ありがとう……ございます」
 代金を渡すと、少女は笑顔で花束を抱いた。
以下略 AAS



10: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:01:48.37 ID:86/EQe0g0

「ほう、そんなことがあったのか」
「うん。大変だったよ」
 夕食の席で、私は今日の顛末を話したのだが、鷹揚なお父さんと違いお母さんが厳しい声を上げる。
「だからもっとちゃんとお花のことを勉強しなさい、っていつも言っているでしょ」
以下略 AAS



11: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:02:30.09 ID:86/EQe0g0
「いいとも。ま、しかし凛も若いんだ。青春を……人生を賭けられるようななにかが見つかったら店のことはいいからな」
 これはお父さんの口癖みたいなものだ。
 お父さんは、自分が花に人生を賭けたように、私にも何かを見つけて欲しいらしい。
「そうね……でも、それまではしっかりお店のこと、頼むわよ」
 この点ではお母さんも同じ思いらしい。
以下略 AAS



12: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:03:12.80 ID:86/EQe0g0
「あなた……」
「うん……凛、その娘はたぶん、華道の家元とかそういう家のお嬢さんだな」
「えっ?」
 確かにあの娘、なんとはない気品というか風格みたいなものがあった。
 同世代とはいえ、初対面の自分とも物怖じせずに話すような娘だ。
以下略 AAS



101Res/65.97 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice