藤原肇「千夜さん、一緒に釣りに行きませんか?」
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61:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:24:16.38 ID:/ZuqsV3u0
気づきを得たのは、翌日のこと。
皆さんとの、大阪市内の観光を終えようとしている頃でした。
「なーはまたそういう変なもの買おうとするよね」
62:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:25:39.14 ID:/ZuqsV3u0
「いざって時には、千夜ちゃんがいるからね♪」
そう言って、ちとせさんは彼女に笑いかけます。
63:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:28:11.91 ID:/ZuqsV3u0
帰りの新幹線で、私は千夜さんと隣同士になりました。
ボックス席の向かいに座る颯さんと凪さんは、遊び疲れて寝ています。
64:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:30:04.11 ID:/ZuqsV3u0
「千夜さんが謝ることなんて、ありませんよ」
私は慌てて手を振ります。
「それに、こういうものにはきっと、良いも悪いもありません」
65:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:31:19.91 ID:/ZuqsV3u0
「詰まるところそれは、必要なものなのでしょうか」
千夜さんの抑揚の無い言葉に、思わず私は息を呑みます。
「ひ、必要、というと……?」
66:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:32:10.09 ID:/ZuqsV3u0
「千夜さん……」
私は、言葉を失いました。
同時に、先日ちとせさんが言っていたことの意味が、少し分かった気がしました。
67:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:35:12.55 ID:/ZuqsV3u0
「これまでも、似たようなことがあったの」
東京に戻ると、公演の成功に沸く、事務所スタッフの皆さん。
68:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:38:37.20 ID:/ZuqsV3u0
「千夜さんには……引き取られた黒埼家に捨てられたくない、という焦燥が……?」
「うーん、そういうのはたぶん、無いかなぁ」
夕暮れ時の事務所のラウンジで、私の隣に座るちとせさんは、ボンヤリと頭を振りました。
69:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:42:30.64 ID:/ZuqsV3u0
千夜さんの部屋には、物がほとんど無いそうです。
欲しいものが無いから、自分のための買い物もしない。
主たるちとせさん以外の何物にも興味を示さず、何も求めず、ただ主のためだけに尽くす日々。
70:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:44:11.06 ID:/ZuqsV3u0
その日のうちに私は、Pさんに相談しました。
「難しい問題だな……」
Pさんは腕組みをしながら椅子の背にギィッともたれ、悩ましげに息をつきます。
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