藤原肇「千夜さん、一緒に釣りに行きませんか?」
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65:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:31:19.91 ID:/ZuqsV3u0
「詰まるところそれは、必要なものなのでしょうか」

 千夜さんの抑揚の無い言葉に、思わず私は息を呑みます。

「ひ、必要、というと……?」


「物事には総じて、優先順位というものがあります。
 行った方が良いことなのか、行わなければならないことなのか」


 言いながら、千夜さんは視線を落としました。

 寂しげに――いや、どこか不安や戸惑いを帯びたような眼差しです。


「私は、暇という空白が好きではありません。
 楽しい思いを享受する事、それ自体はおそらく、私にとってもありがたく、喜ばしいものです。
 ですが……」

 千夜さんは、新幹線の窓の外へと、視線を預けました。

「私のような者が、漫然とそれを享受して良いものか……。
 こうしている暇に、もっと他にすべき事が本当に無かったのか。
 必要性のあるものを優先的に処理できていないのではという恐れが、胸にこびりついて離れません」



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