白雪千夜「アリババと四十人の盗賊?」
1- 20
145:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:49:02.52 ID:tRJaplXx0
 塀に沿って歩く。物陰に注意しながら、耳もそばだてた。そしてすぐに、そう注意する必要はなかったと知った。

 見えないロープを手繰ってきたように、殆ど分かっていたように、都の元へ辿り着いた。ピンクの花と黄緑の葉の花壇に、俯いてしゃがんでいた。

 しかし、ちょっと人目から隠れる場所とはいえ、劇場の敷地内に居る彼女を、誰も見つけられなかったとは思えない。どうやら気を遣われたのだな、と先生や頼子、志希の顔を思い浮かべた。
以下略 AAS



146:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:49:48.41 ID:tRJaplXx0
「私で残念でしたね」
「あっはっは、千夜さんで良かったです! 探しましたよ!」
 《探した》はこちらの台詞ですが――というのは飲み込んだ。実際のところ、先に消えたのは千夜だった。

「先程は、失礼な物言いでした」
以下略 AAS



147:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:50:42.18 ID:tRJaplXx0
「何を書いているのですか」
「よくぞ聞いてくれました! ジャジャーン、『探偵手帳』!」

 はぁ、と相槌を打ったつもりだったが、溜め息に終わったかもしれない。散々に書き込まれたそれを開いて示しながら、少女は見ているものへと千夜を誘う。今更に機嫌を改めてやるのも癪だから、手帳に《千夜さんをよく見て、立ち位置に注意》と書いてあるのは見なかったことにした。



148:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:51:09.37 ID:tRJaplXx0
「ここに千夜さんのダイイングメッセージがあると聞いたので、行き先を示すのではないかと推理していたんです」
「成る程、私は死んだのですね」
 倣ってしゃがむ。それは黒い糸…… 蟻の行列だった。その不自然な線は、巣から出てきたり戻ったりするものではなく、何か奇妙な形を成して蠢いていた。

 ――ああ、角砂糖でも持って来れば良かった。志希のあんまりな実験は結局、黒い働き者たちから正常な仕事の能力を奪ってしまったのだ。ちょっとの甘味を求めていただけだろうに……。
以下略 AAS



149:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:51:53.77 ID:tRJaplXx0
 蟻たちは常に動きながら、歪んだ円のように並んでいる。その歪みは一定のパターンを繰り返して変化しているようだった。
「ここ! ここで、下部の変化が一旦止まるでしょう」
「はい」
「改行中なのだと思います! 私の見立てによれば、これは筆記体による、二つの文字列なのです!
 はい、この手帳をご覧のように、w2l=Ar2c≠繰り返している」
以下略 AAS



150:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:53:13.22 ID:tRJaplXx0
 それから、口を開いた。
「文字列が循環して前後を特定する手段がないなら、これは順序を必要としない情報なのかも。《一回ずつでいい》というのもヒントになるでしょう。つまりこの二つは並列して処理すべき、アルゴリズムそのもの…… そう考えれば、2は換字を指示するtoとも解釈出来る。toでは一筆書き出来ないのを嫌ったのでしょう。
 WtoL、RtoC。WをLに、RをCに…… ふむ」
 思い当たって、スマートフォンで検索を始める。

以下略 AAS



151:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:53:51.61 ID:tRJaplXx0
 首を傾げ、
「ああ、蟻ですね!」

「関係する語から、分けて、要素にWとRを、そして少なくとも一方を二つ以上持つものを試してみればいい。
 蟻にまつわる英単語は幾つかあります。ant(蟻)、queen(女王)、soldier(兵隊)……
以下略 AAS



152:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:54:19.42 ID:tRJaplXx0
「worker!
 ええと、WをLに、RをCに。《一回ずつ》……
 locker=I
 ろ、……」
「ロッカー」
以下略 AAS



153:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:55:12.22 ID:tRJaplXx0
「千夜さん、流石です!」
「いいえ」
「これで真実は、都と千夜さんのものだっ!」
 都は言い放ち、聴衆の喝采に応えるかのように、気取って一礼して見せた。

以下略 AAS



154:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:56:17.64 ID:tRJaplXx0
 このまま突っ立っていては、すごいすごい″U撃を延々と捌き続ける羽目になるようだ。
「何かがロッカーに隠されているのかもしれませんし、行ってみましょう」
「おおっ、私も今言おうと思っていました! 気が合いますね! 行ってみましょう!」

 ぐいっと、手を引かれ――
以下略 AAS



155:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:56:46.11 ID:tRJaplXx0
 しかし、
「そうだ」
「ん」
「もう一つ、解けてない謎があるんです」

以下略 AAS



234Res/183.06 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice