24:名無しNIPPER[saga]
2020/09/22(火) 02:41:51.85 ID:3G5NISVX0
姉の軽口には気も留めず葛葉が歩き出し、ひまわりはその後を追った。弱いという発言に気を悪くしたのではないことは姉には理解が出来ている。この程度の丁々発止など彼らの間では日常茶飯事であった。
「どこ行くん? 当ては有んの?」
「無えよ、そんなん。けど水の音がした。ってことは近くに川がある。川があるってことはその流域に集落がある可能性は極めて高えんじゃねえの?」
25:名無しNIPPER[saga]
2020/09/22(火) 02:43:19.67 ID:3G5NISVX0
「どこの川沿いに築かれた文明だ、ソイツは! 酔っぱらってんのか! 眼ぇ開けて寝てんじゃねえぞ、ほんひまァ!」
「はぁ? ヨーロッパめっちゃ川有りますしぃ。ヴェネツィアとか水の都ですしぃ。え、葛葉くんもしかして知らないのぉ?」
「無知なのはオメーの……と、ちょっとそこで止まれ姉ちゃん」
26:名無しNIPPER[saga]
2020/09/22(火) 02:44:18.38 ID:3G5NISVX0
「でも、武器が無いよ」
ひまわりの指摘に葛葉は取り合わず立ち上がった。
「……ねーちゃんはそこでちょっと隠れててくれ。最悪、走ってきた道を引き返せよ?」
27:名無しNIPPER[saga]
2020/09/22(火) 02:47:15.85 ID:3G5NISVX0
次回、「葛葉、死す」
デュエルスタンバイ!
28:名無しNIPPER[sage]
2020/09/22(火) 07:41:11.33 ID:IV1A73r6O
死んじゃったよ!?
29:名無しNIPPER[saga]
2020/10/04(日) 01:18:20.82 ID:WsJ2cUxc0
見守られている側、葛葉は初陣でありながらほとんど緊張はしていなかった。それもその筈、初陣なのはこの世界においてでしかない。
嘘みたいな本当の話、葛葉の戦闘経験は豊富である。ゲームでの話ではない。実践の話で、実戦での話だ。
アレクサンドル・ラグーザ――彼の実家の魔界での職業は衛士。つまり、元職業軍人である。ひまわりは先ほど弟の横顔をして「歴戦の兵士に似ている」と評したが、似ているどころでは本来は無い。
30:名無しNIPPER[saga]
2020/10/04(日) 01:27:09.02 ID:WsJ2cUxc0
その声は露骨に落胆が混じっている。しかし、それは相手が強敵でなかった事への不満ではない。
じっと敵を見据えた所で「HPバーが見えない」「モンスター名が視界に表示されない」といった風に、ライトノベルでのオヤクソク(とは言え葛葉は小説のアニメ化を見る勢であったが)がこの世界ではまるっと無視されていた件に対してだった。
ユーザーインターフェイスが行き届いていない、と葛葉は思わず天を仰いだ。
31:名無しNIPPER[saga]
2020/10/04(日) 01:36:26.83 ID:WsJ2cUxc0
「……黒剣錬成はキッチリ働く、と。この分だとチャームや蝙蝠化なんかも特に問題無く働くんだろうな……あれ、だとしたら何コレ? ヌルゲーじゃね?」
葛葉は一瞬にして両の手に闇を纏わせるとそれをゆっくりと左右二体のゴブリンにそれぞれ照準した。慌てる必要はどこにもない。ゆっくりと照準する時間がそこには出来てしまっていた。
ゴブリン達は動けない。それは死の恐怖か、生への諦念か。
32:名無しNIPPER[saga]
2020/10/04(日) 01:46:01.57 ID:WsJ2cUxc0
しっかしなあ、と葛葉は地面に崩れ落ちたゴブリンの首無し死体、あるいは生首を見ながら思う。酷いところに飛ばされたものだ、と。ああ、本当に。考え得る限り最悪とも思える類の異世界である。
彼曰く「ヌルゲー」。でありながら「考え得る限りの最悪」。しかし、この二つは決して矛盾せず共存する。
「……獲物には当然に毒、か」
33:名無しNIPPER[saga]
2020/10/04(日) 02:01:15.99 ID:WsJ2cUxc0
「姉ちゃん、ちょっと二人のトコに戻ろう」
「え、なんで? ご飯は?」
「それなんだけどな。モンスター倒しても金っぽいアイテムを落とさなかった。つまりスーパー見つけても俺らはこの世界の通貨を持ってないから何も買えねーんだわ」
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