31:名無しNIPPER[saga]
2020/10/04(日) 01:36:26.83 ID:WsJ2cUxc0
「……黒剣錬成はキッチリ働く、と。この分だとチャームや蝙蝠化なんかも特に問題無く働くんだろうな……あれ、だとしたら何コレ? ヌルゲーじゃね?」
葛葉は一瞬にして両の手に闇を纏わせるとそれをゆっくりと左右二体のゴブリンにそれぞれ照準した。慌てる必要はどこにもない。ゆっくりと照準する時間がそこには出来てしまっていた。
ゴブリン達は動けない。それは死の恐怖か、生への諦念か。
そして一度目と同じように葛葉はその掌の闇を剣の形へと変貌させ射出する。今度はそこに気合すら伴わなかった。
正しく作業。結局、ゴブリン二匹には安易な敵対を、もしくは本能を、後悔する余裕すら与えられなかった。
首から上を失い、断続的に血を流す装置と化したそれを吸血鬼は感慨の無い瞳で見つめる。生理的嫌悪感すらそこには浮かんでいなかった。普段の彼であればこんなことはまず無いだろう。
「お前らは血すら不味ぃんだよな……昔、兄弟に騙されて飲んだ事有っけど」
スプラッタ。有機物の死体は本能的な怖気を呼び起こすものだ。少なくとも本間ひまわりの知る葛葉という少年ならば、この惨状を見て胃の内容物を地面にまき散らす作業に躍起になるはず。その冷たい瞳は――解釈違い。恐慌など最初から世界に無いかのように彼は振舞う。
実際、戦士アレクサンドルにそういった感情は無い。いや、より正確に言えば「有ったのかも知れない」。忘れたのではない。無くしたのではない。事実として「葛葉」である間はこういったものに恐怖も吐き気も感じている。
アレックスにとって「それ」は邪魔なだけ――だから殺している。
「俺、こう見えて割とグルメなヴァンパイアだからさ」
そう、どこまでヒトに寄り添っても彼は、本人の言うとおりに本質はアンデッドであっただけの話。
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