32:名無しNIPPER[saga]
2020/10/04(日) 01:46:01.57 ID:WsJ2cUxc0
しっかしなあ、と葛葉は地面に崩れ落ちたゴブリンの首無し死体、あるいは生首を見ながら思う。酷いところに飛ばされたものだ、と。ああ、本当に。考え得る限り最悪とも思える類の異世界である。
彼曰く「ヌルゲー」。でありながら「考え得る限りの最悪」。しかし、この二つは決して矛盾せず共存する。
「……獲物には当然に毒、か」
しゃがみ込んで検死するアレクサンドル・ラグーザはゴブリンの持っていた武器が粘性の液体を付着されていることに気付く。吸血鬼である自分にこういった毒の類は効かない。だが、それは自分が特殊なだけだ。もし、一かすりでもしてしまえばこれが例えば人間ならばどうなるだろう。
「容赦が無ェな。この世界、甘さが足りてない。微糖……ビトゥー……」
「くずはー! 何も聞こえんくなったけど、終わったんかぁー?」
背後から声が掛かる。俺がやると言っておいたのに、あの馬鹿と少年は独り言ちた。
「おー、終わった終わった。心配ないからそれ以上こっち来んなよ。俺がそっちに行く」
この光景を姉が見たら卒倒しかねない。かと言ってこれ以上待たせたら寄って来かねない。まだ調べたい事は有ったがしぶしぶと葛葉はその場を後にする。
「どうだった?」
言いながら茂みから姿を現す姉に、弟は頭痛を感じ額を押さえた。
「おい、なんでちょっと俺の方に移動してんだよ。隠れてろって言ったのあそこだろ」
少し奥を目だけで指し示しながら葛葉が言う。ひまわりは胸を張った。
「そりゃあね」
なにが「そりゃあね」だ。弟の心、姉知らず。口に出してしまいそうな「検死結果」を、葛葉は済んでのところで飲み込む。
言う必要は無い、少女には。吸血鬼は思う。しかし、ファイアードレイクには伝えておくべきだろう。
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