【にじさんじ】社築「家族旅行は異世界で」
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25:名無しNIPPER[saga]
2020/09/22(火) 02:43:19.67 ID:3G5NISVX0
「どこの川沿いに築かれた文明だ、ソイツは! 酔っぱらってんのか! 眼ぇ開けて寝てんじゃねえぞ、ほんひまァ!」

「はぁ? ヨーロッパめっちゃ川有りますしぃ。ヴェネツィアとか水の都ですしぃ。え、葛葉くんもしかして知らないのぉ?」

「無知なのはオメーの……と、ちょっとそこで止まれ姉ちゃん」

 どこまでも続くと思われた軽口は唐突に中断され、一段葛葉の声のトーンが落ちた。その様子に本間ひまわりはビクリと体を震わせる。これと同じような経験は現実世界で何度もしてきた気がしたからだ。そう、それは一人称視点型ガンシューティングなどで。

「……敵?」

 声を押し殺し、恐る恐る少年に少女が問いかける。葛葉は手近な茂みに向けて親指を指し示した。そのハンドサインの意味を即座に理解した姉はなるべく音を立てないようにそこへと身を屈めて移動する。

「居る。数は三」

 確信を持ってそう言う弟の横顔は歴戦の兵士の持ち物によく似ている気がするなどと、ひまわりはぼんやりと思う。異世界、初めて迎える未知との遭遇。でありながら不思議と不安を少女は感じていなかった。

「まだ距離が有るっぽいから小声なら喋ってもいいぞ、姉ちゃん」

 顔を前に向けたまま、そう言う弟をひまわりは全力で信頼していた。葛葉が居るから大丈夫だ、と。

「第一村人発見、とかではないの?」

「それだとありがたいが今回は望み薄だな。人間は鳥みたいにギャアギャアなんて鳴き声でコミュニケーション取らねえ」

「そっか。……ドーラたちのところに一度戻った方がよくない?」

「気付かれて後ろから襲われるのとどっちがマシか考えたら正直ここでやっておくべきだと俺は思う」

 背後から襲われる怖さをこの二人はよく知っていた。それは戦力差を容易く覆す。何百回何千回と潜り抜けた仮想の銃撃戦はこの姉弟をプロの兵士もかくやと言わんがばかりの戦況判断の鬼へと変貌させていた。


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