33:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:03:11.85 ID:66ORp3Ez0
『もう少し準備をしたら、君に呪いをかけた人に会ってくるよ。』
魔法使い「私も連れて行って。絶対足手まといにはならないから。お願い。」
戦士「おいおい、そりゃ無茶だろ。」
34:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:04:21.52 ID:66ORp3Ez0
勇者「そうだよな・・・仕方ない、正式に被害を訴えよう。この件にどのくらい上の人間が関わってるのか分からないけど、あんな事を国が容認しているとは思えないし、ちゃんと話せば何とかなるよ、多分」。
戦士「もし、上手くいかなかったら?」
勇者「その時は二人で何とか切り抜けよう。」
35:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:05:14.12 ID:66ORp3Ez0
魔法使い「私を監禁していた兵士たちはどうなったの?」
先ほどの笑顔が消え、暗い表情で彼女が尋ねる。
『殺してはいない。まだあの塔にいると思うけど、また君を捕まえに来るようなことはないから安心してくれ。』
36:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:06:03.10 ID:66ORp3Ez0
戦士「殺しておかなかったのが、結果的に功を奏したな。最初の予定通り城の呪術師を脅して呪いを解かせるなら、殺して口を封じておいた方が後々楽になっただろうが、正面切って文句を言いに行くなら証人として生かしておいた方が都合がいい。」
戦士が吐き捨てるようにそう言った。なんだか少し声に不機嫌さが滲んでいる。
勇者「どうかした?なんだか、殺しておきたかったと思ってるように聞こえるよ。君は戦いが好きなだけで、無意味な殺しはしないんじゃなかった?」
37:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:06:47.01 ID:66ORp3Ez0
戦士「うるせえな、お前こそあいつらをどう思ってたんだよ。殺してやろうと思わなかったのか?」
勇者「正直、少しはそう思ったよ。腹が立ったし、悲しかった。どうしてこんなことができるんだ、って考えると絶望的な気分になったよ。こんなにも自分の理解から外れた存在がいるのか、って。」
戦士「それで?あいつらと話して、何がしたかったんだ?理解して改心させようとでも思ったのか?」
38:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:07:58.34 ID:66ORp3Ez0
勇者「言っただろ。知らなくちゃいけないと思ったんだ。
何が起こったのか。どうしてこんなことが起きたのか。
だってそうしないと、先に進めないだろ。
何が原因だったのか。どうすれば防げたのか。どうすれば、この不幸を乗り越えられるのか。
確かにあの人たちは悪人だったけれど、特別邪悪に生まれたわけじゃないと思うんだ。
39:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:08:58.98 ID:66ORp3Ez0
勇者「多分、僕なんかじゃ到底理解できないような欲望を持った人はこれからも生まれてくると思う。そのほとんどはその欲望を抑えて生きていくけれど、その中の一部の人がそれを発散する機会を得てしまって、犠牲者が生まれる。もちろんその人達を罰することで、その人達が犠牲者を増やすことは防げるよ。でも、それだけじゃ被害にあう人はゼロにはならない。」
この人のように、と考えて魔法使いの手をぎゅっと握る。彼女は何か考えているのか、先ほどから下を向いて黙り込んでいた。
戦士「じゃあ、どうするんだ?」
40:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:10:12.19 ID:66ORp3Ez0
勇者「いよいよだね。」
「町のはずれの塔で監禁されていた魔法使いについて訴えたいことがある」といって国王との面会を申し込む。
城の外で待っていると、案の定刺客が差し向けられた。口封じが目的だろう。その刺客を返り討ちにした後、裕に1時間以上待たされてからようやく応接室に通された。
戦士「ようやくかよ。ったく、いつまで待たせんだ。」
41:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:11:34.82 ID:66ORp3Ez0
役人「お待たせしました。」
嫌な予感が的中する。応接室に入ってきたのは、王ではなく役人を名乗る男だった。
魔術師のような恰好をした男を連れている。おそらくこいつが兵士の言っていた呪術師だろう。
42:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:12:42.01 ID:66ORp3Ez0
勇者「ええ、少し負傷はしていますけど。」
役人「いえ、構いませんよ。どうせなら処分しておいて欲しかったくらいですから。」
勇者「何ですって?」
43:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:13:23.12 ID:66ORp3Ez0
役人「ええ。私が部下に命じたのは「魔法使いの説得」です。あの塔でどんなことが行われていたかは分かりませんが、実行犯はあくまであそこの兵士たちです。私の罪状は監督不行き届きで済むでしょうね。それに私は他の役人や大臣と持ちつ持たれつの関係でしてね。数年の刑期を言い渡されたとしても、それよりずっと早く牢から出られるでしょう。何か不満がおありですか?」
役人が意地悪く笑みを浮かべながらそう言う。
まずい、と思った。
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