空銀子「竜王の側室にでもなるつもり?」夜叉神天衣「否定はしないわ」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:23:33.41 ID:H0ikd4c1O
「銀子ちゃん、待った?」
「遅い」

弟弟子という存在を私は初め、便利な持ち駒に過ぎないと、そう捉えていた。

「ごめんごめん。今日に限ってあいが寝過ごして、俺まで寝坊しちゃってさ」
「そのまま永眠すれば良かったのに」
「酷くないっ!?」

酷くない。酷いのはいつも八一だ。
きっと、桂香さんならわかってくれる。
私はいつでも、いつだって待たされて、置いてけぼりで、もう立っているのすら辛い。

「八一、手」
「へ? ゆ、指とか折らないでよ……?」

恐る恐る差し出される八一の手に触れて、自分の指を彼の指に絡ませると、それだけで大駒一枚、いや二枚分は強くなれた気がした。

「行くわよ」
「あ、うん。あの……手、繋いだまま?」
「デートなんだから当然でしょ?」

私は歩き出す。力強く飛車先を突くように。
昔、よちよち歩きで私の後を追っていた竜の雛の道を、姉弟子として切り拓くように。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:25:47.47 ID:H0ikd4c1O
たとえば、九頭竜八一と私がそれぞれ別々の師匠の元へと弟子入りしたとして。

小さい頃から内弟子として長い長い時間を共有していなければ、どうなっていただろう。

師匠である清滝鋼介から教わったことは数え切れないほどあって、棋風は元より将棋に対する姿勢や考え方は私も八一も師匠の影響を多分に受けている自覚はある。
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:27:41.53 ID:H0ikd4c1O
「銀子ちゃん、何か飲む?」
「ん」

差し出されたメニューから飲み物を選んだ。
訪れたショッピングモールの中で、どこにでもあるチェーン店の喫茶店に立ち寄り、そこで弟弟子の八一とひとときを過ごす。
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:29:33.78 ID:H0ikd4c1O
「最近、小童どもと何かあった?」
「へ? い、いや、別に……何も」

姉弟子の私に恭しくケーキを献上した弟弟子はどこか気が抜けていてぼんやりしている。
その表情が八一の対局を気にかける師匠と重なり、直感で弟子について尋ねてみたが、どうやら図星だったらしく、目を泳がせた。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:32:26.64 ID:H0ikd4c1O
「でも、それはあくまでも憧れでして……」
「憧れって意味なら、私も入門したその日から師匠に恋をしていると言えなくもないわ」
「あのジジイ。逆破門してやる!」

私と同じく憤慨した様子の八一を眺めて溜飲を下げて、閑話休題。本題へと移ろう。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:38:26.45 ID:H0ikd4c1O
「だいたい、銀子ちゃんはズルいよ」
「へ?」
「性格最悪な癖にさ。テレビに映る時だけは澄ましちゃって。あれじゃあ大きなお友達が群がるに決まってるじゃん。ほんと酷いよ」
「おいこらワレ。喧嘩売ってんの?」

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:40:23.19 ID:H0ikd4c1O
「嫉妬なんて無意味よ」

八一の気持ちはわかる。痛いほどに。
それでもそれは要らぬ心配なのだ。
私自身、主に八一の節操の無さが理由で幾度も『熱い』嫉妬の炎で身を焼き焦がしてきたので、どの口が抜かすのかと思われるかも知れないが、これだけは言わせて貰おう。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:41:56.14 ID:H0ikd4c1O
「あっ……ごめん。ついムキになって」
「バカ八一」
「ごめんってば」

声が震える。嬉しさと、そして、"恐怖"で。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:45:14.95 ID:H0ikd4c1O
「お客様、そろそろ閉店のお時間です」

結局、それから閉店まで暗譜で指し続けた。
何度負けても萎えることはない熱さがある。
熱い。この"熱"を好きな人を共有することが出来て私は嬉しかった。店を出ると八一が。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:47:06.21 ID:H0ikd4c1O
「そこの黒いの、あんたの師匠が余計なお世話だって言ってるのがわからないの?」
「そう仰らずに、お乗りくださいなお姉様」

猫撫で声に怖気が走る。なにを企んでいる。

以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:49:31.52 ID:H0ikd4c1O
「ど、どうしちゃったんだよ、天衣」

突然嗤いだした弟子に困惑する師匠の八一。
しかし、私は知っている。この小学生をここまで歪ませたのは他ならぬ八一であると。

以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:51:09.65 ID:H0ikd4c1O
「八一」
「は、はひっ!?」
「私、言ったわよね?」

熱い。マグマのような嫉妬が、溢れ出る。
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/14(金) 20:53:23.65 ID:H0ikd4c1O
「それでは、師匠。お姉様。ご機嫌よう」

最後まで猫撫で声で神経を逆撫でして、夜叉神天衣は去っていった。はらわたが煮える。

「あれがあんたの悩みね?」
以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage]
2020/08/16(日) 13:50:40.26 ID:ekTyASISO

あれ?だらぶちは?




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