66:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:28:12.83 ID:W5lmC8VA0
使命という言葉は好きじゃない。
だけど、強いて私にも、この世界に生まれ持って携えた使命がもしあるとしたら――。
名も無き部品として、世界を傍観していくことじゃない。
大それたものでなくても、歯車の一つになって、私も干渉し続ける。
67:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:29:26.46 ID:W5lmC8VA0
見渡す限り、まっさらで何も無い野原。
こっちに背を向けて、中腰の姿勢でせっせと何かに勤しむ女の子に、気づくと私は声をかけている。
68:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:32:25.32 ID:W5lmC8VA0
「お水?」
「そう! うえきちゃんに☆」
その子が一歩身を引いたそこに植わっていたのは、頂部の花のつぼみに相当する部分が人の顔のようにも見える、奇妙な植物だった。
69:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:34:46.71 ID:W5lmC8VA0
促されるまま、彼女の後をついていくと、頂上へ着くのはあっという間だった。
うえきちゃんの顔の横、大きな葉っぱの上に二人並んで座り、眼前に広がる街並みを眺める。
あれ?
70:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:37:09.99 ID:W5lmC8VA0
そうだ――藍子ちゃんが言っていたんだ。
相手を嫌な思いにさせてやろうなどとは微塵も考えない、346プロの中でも有数の気ぃ遣い屋さんなのだと。
71:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:39:14.66 ID:W5lmC8VA0
「……ううん。とっても楽しかったよ」
夢の世界とはいえ、まさかこの私が、幼少時代に聞いたおとぎ話の追体験をするなんて。
「でも、こんなに高いと、さすがにキリンの首も届かないかも知れないね」
72:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:42:21.08 ID:W5lmC8VA0
「……あはっ♪」
この子はなんて楽しい視野を持っているんだろう。
そして、私と同じ世界を見ていると、言ってくれもした。
73:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:43:21.01 ID:W5lmC8VA0
「ちとせさん……」
――――。
74:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:45:14.49 ID:W5lmC8VA0
「……魔法使い」
首を横に倒すと、部屋の隅に置かれた丸椅子に、魔法使いが足を組んで座っていた。
75:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:47:09.62 ID:W5lmC8VA0
「…………」
藍子ちゃんは、何も言わなかった。
私の額にそっと手をやり、口をギュッとつぐんで、今にも泣き出しそうだった。
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