45: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:37:05.73 ID:BHjCA0Mo0
「昔の姉さん」その言葉を聞いて思い出した。そういえば、プロデューサーさんが言っていた、「姉さんは初めから強かったのか」という問い、ズルのような気もするけど、可奈さんなら答えを知ってるかもしれない。
「可奈さんは、姉さんは初めから強い人間だったのだと思いますか?」
46: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:38:22.60 ID:BHjCA0Mo0
それから可奈さんはニコニコとパンケーキを平らげ、満足そうに帰って行った。「またくるね〜」とご機嫌だったので、また新たな常連客を獲得できたのかもしれない。
「陸くん、ちょっといいかな?」
47: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:39:23.86 ID:BHjCA0Mo0
「確かにニコニコさんもすっごく可愛いと思うんだけど、やっぱり陸君にお似合いなのは隅子さんだよ。仲直りした方がいいよ。」
...へ?どうやらマスターはありもしない三角関係を妄想し続けて、俺にアドバイスをくれているようだった。確かにあるよね、現実的でなくても空想し続けてると、だんだん現実じゃないかって誤認すること。
48: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:41:47.70 ID:BHjCA0Mo0
「りっくん、ごはんだよー。」
49: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:42:48.61 ID:BHjCA0Mo0
「こらこら喧嘩しないの、お父さんももう帰ってくるから、テーブルに座って待ってましょう。」
そう言って、母さんが俺と姉さんの間に入る。言い合いは一旦やめにして、テレビを見ながら父さんの帰りを待つことにする。
50: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:44:05.66 ID:BHjCA0Mo0
テレビから流れてくるアイドルの歌に耳を傾けていると、玄関が開く音がした。ドタドタドタと大人の男性の足音がして、ガチャっとリビングの扉が開く。
「ただいまー、メリークリスマス。」
51: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:45:12.94 ID:BHjCA0Mo0
気がつくと俺は庭にいた。中ではさっきまで俺が座っていたテーブルに、俺が座っているのが見える。知らない庭に、知らないリビング、知らない家。
ふと横を見ると姉さんがいた。俺はすぐに気がついた、これは中にいる姉さんと違う姉さんだ。姉さんはチラリと家の中を一瞥し、ふっと軽く微笑んだ。
52: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:46:28.60 ID:BHjCA0Mo0
目蓋を開けると、真っ白な天井が見えた。消毒液の匂いがツーンと鼻を刺激し、ここが病院なのだと気がついた。ぼやけた頭が徐々に覚めていき、右手がさっきまでみていた夢のように温かいことに気がついた。
53: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:47:39.41 ID:BHjCA0Mo0
それから医者と看護師さんが駆けつけて、病状を説明してくれた。恐らく疲れと睡眠不足で一時的に自律神経系のバランスが崩れただけで、明日には問題なく退院できるようだ。
「今日は早く上がれたから、家で晩ご飯作ってたの。そしたら店長さんから電話が来てね。病院まで付き添ってくれたのも店長さんみたい。とっても心配してくれて、私が病院に着いたら必死に謝ってくれたわ。」
54: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:49:06.46 ID:BHjCA0Mo0
あれはいつだったろう?俺と母さんは、あるテレビ番組の密着取材を受けたことがある。番組のタイトルは『北沢志保 悲劇のアイドルの奮闘』。
よくあるドキュメンタリー風のバラエティだ。芸能人の過去の悲劇を勝手に掘り起こして、こんな境遇でも頑張りましたと締めるあの手の番組。
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