17: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:49:33.45 ID:BHjCA0Mo0
「いただきます。」
3人で声を合わせて食事を始める。ご飯に味噌汁、サラダに煮物、豚生姜焼き、今や日本中に名を知らぬものがいない大女優北沢志保の家の夕飯とは思えない、普通で平凡なメニューだ。
18: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:51:45.91 ID:BHjCA0Mo0
姉さんは俺のリアクションが気に入らなかったらしく、眉をひそめてジトーっと俺の顔を見る。
「なんか怪しい。」
19:名無しNIPPER
2020/06/12(金) 21:53:01.27 ID:BHjCA0Mo0
「いや、モテてないだろ?何を根拠に。」
全く、一般人平民アルバイト高校生な僕にちょっかいかけてくる女性は、今目の前にいる人とそっくりな『隅子さん』しか知らないんですけどね。ジトーっとした視線を投げ返すと、姉さんは不敵に笑った。
20: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:53:54.54 ID:BHjCA0Mo0
>>19
酉入れ忘れました。でへへ〜
21: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:57:51.30 ID:BHjCA0Mo0
夕飯も終わり一息ついた頃、ここぞと俺はポケットから封筒を取り出し、母さんに渡す。
「母さん、今月もこれ。」
22: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:00:37.04 ID:BHjCA0Mo0
「まぁ、こんなに...。」
そう言って母さんは何か思いを飲み込むように深く息を吸って、すーっと吐いた。どこか目は寂しげだ。封筒を見てポジティブなリアクションが返ってくると思っていたので、呆気にとられてしまう。
23: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:02:10.03 ID:BHjCA0Mo0
なんでって...それは絶対に言いたくなかった。情けなくて、カッコ悪くて、絶対に口になんてできない。姉さんの鋭い目から逃げるように、視線だけ下に逸らす。姉さんは逃げ場を塞ぐように、強さを増した口調で問いかける。
「もう一回言うけど、お母さんと私のお給料で、家のお金は十分。陸を大学に行かせてあげるだけの貯金も十分にある。陸もそれはきっとわかってると思うの。」
24: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:03:48.11 ID:BHjCA0Mo0
姉さんも相当頭にきているようだ、言葉の端々から怒気が漏れ出ている。もう何年も聞いたことのないような強い口調だ。だけど、こっちもキューっと喉元まで上がってきてる怒気を抑えるだけで精一杯なんだ。
「離せよ。」
25: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:05:56.09 ID:BHjCA0Mo0
姉さんはカッコよくて、俺の憧れだった。
いや、今じゃ形や熱は変わっているけれど、根本的には変わらず同じ感情を抱いてるのだと思う。姉さんはいつもアイドルを頑張って、家事をしてくれて、俺を守ってくれる絵本の中の強いお姫様。
26: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:07:46.69 ID:BHjCA0Mo0
数日後、
俺はあるカフェの奥の席で人を待っていた。コーヒーをブラックのまま口にする。苦味が口に広がって、思わず顔をしかめてしまう。でもまぁ、今の家の空気よりはマシな苦味だけど...なんて、その苦味の元凶が言うのはズルイと思いつつ、スマホの時計を確認する。
27: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:09:30.42 ID:BHjCA0Mo0
そう、俺が待っていたのは、かつて765プロシアターで姉さんたちのプロデューサーをしていた人、通称プロデューサーさんだ。姉はもうシアターを卒業して、765プロに直接出入りしているらしい。その頃から、俺もプロデューサーさんには会ってない。
プロデューサーさんは、久しぶりに自分を訪ねてきた生徒を迎える先生のような笑顔で俺に話しかけてきた。
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