25: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:05:56.09 ID:BHjCA0Mo0
姉さんはカッコよくて、俺の憧れだった。
いや、今じゃ形や熱は変わっているけれど、根本的には変わらず同じ感情を抱いてるのだと思う。姉さんはいつもアイドルを頑張って、家事をしてくれて、俺を守ってくれる絵本の中の強いお姫様。
ずっと姉さんの背中を逞く思い、その影に隠れていた。沢山の辛いことを知らずに、沢山の痛みから守られて、多くの幸せと喜びだけを貰っていた。それが当たり前だと思っていた。
だけど、成長していき、いろいろと理解が増えるたびに、気がついたことがある。父親のいない家庭、母親の仕事、姉がアイドルを始めた理由、俺がどれだけ無知で愚かだったのか。
だから俺はまず家事を始めた。守られるだけの弱者にはなりたくなかったから。少しでも家族の役に立つように。だけど、そんなの姉さんだって小さい頃からやっていたし、それに加えて仕事をして生活を支えていた。自分で『アイドル』という道を切り開いて、母さんと俺の幸せを守ってくれていた。
俺もそうありたかったけれど、姉さんがアイドルデビューをした年齢をむかえたとき、俺は結局姉さんみたいに家族を守れる存在にはなれなかった。そしてその年齢を数年越した今も、それは変わっていない。守られるだけの、愚かな弱者そのままだ。
今のアルバイトだって、本気で家計の足しになるなんて思ってやってるわけじゃない。ただ、何もできない自分から目を逸らしたくて、言い訳のように母さんにバイト代を押し付けていた。
変わらなければ...変わらなければいけないのに...粘っこい暗黒色のヘドロのような思考に溺れながら、いつしか俺は眠ってしまっていた。
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