22: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 22:00:37.04 ID:BHjCA0Mo0
「まぁ、こんなに...。」
そう言って母さんは何か思いを飲み込むように深く息を吸って、すーっと吐いた。どこか目は寂しげだ。封筒を見てポジティブなリアクションが返ってくると思っていたので、呆気にとられてしまう。
「陸、こんなに受け取れないわ。あなたが頑張って稼いだお金でしょ、あなたのために使いなさい。」
母さんの言葉を聞いて、パキッと空気にヒビが入ったような音が聞こえた。母さんから差し出された封筒を受け取れずにいると、横から姉さんが封筒を手に取り、俺の目の前に置いて言った。
「陸、生活費ならお母さんとお姉ちゃんのお給料で十分だから、あなたのお金はあなたのために使いなさい。」
パリンと空気が割れるような音がする。割れた隙間から空気が漏れ出ていき、息苦しくなるような錯覚がする。
「でも、俺さ、家のためになると思って頑張ったんだ。受け取ってくれよ、な?」
姉さんの眉間がキュッと狭くなって、目も鋭くなる。さっきより少し低くなった声色で俺に言葉を返す。
「前々から思ってたの、高校生のうちからアルバイトをするよりも、その分部活とか勉強を頑張ってほしい。ウチは十分にお金があるのに、なんで陸は自分のためじゃなくて『家のために』アルバイトをするの?」
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