10: ◆ncieeeEKk6[sage saga]
2020/05/19(火) 17:49:53.11 ID:U1swVBcn0
ちなみに、なぜ休みのはずの麗花がいたのかというと昨日メールでこんなやり取りをしたからだ。
『劇場がお休みだから、明日もプロデューサーさんに会えませんね(´・ω・`)』
『何か用でもあるのか? 一応、明日なら話は聞ける。仕事をするために事務室にいるから』
11: ◆ncieeeEKk6[sage saga]
2020/05/19(火) 17:50:40.73 ID:U1swVBcn0
chapter 3. 90℃ / coffee
「プロデューサーさん、だいたい90℃なんですよ」
12: ◆ncieeeEKk6[sage saga]
2020/05/19(火) 17:51:23.61 ID:U1swVBcn0
別にそれはいいのだけれど、1つだけ疑問がある。
「麗花ってコーヒー飲むのか?」
「実は、この前初めて飲んだんです。ジュースを買おうと思ったら、プロデューサーさんがいつも飲んでるコーヒーがあって、つい買っちゃいました!」
13: ◆ncieeeEKk6[sage saga]
2020/05/19(火) 17:52:03.23 ID:U1swVBcn0
劇場に常備してあるコーヒー豆は浅煎りのようだ。パッケージにそう書いてある。
「ということは……やっぱりお湯は90℃くらいがいいみたいです」
と、麗花がスマホを見ながら言った。ディスプレイにはコーヒーの淹れ方についてまとめたサイトが表示されている。
14: ◆ncieeeEKk6[sage saga]
2020/05/19(火) 17:52:34.95 ID:U1swVBcn0
「……プロデューサーさん」
麗花は笑顔のままカップを机においた。コーヒーからは、まだ少しだけ湯気が立っている。
「こうやって2人でお話するの、久しぶりですよね?」
15: ◆ncieeeEKk6[sage saga]
2020/05/19(火) 17:53:36.09 ID:U1swVBcn0
chapter 4. Body Temperature / me:get lonely easily
今週は、出張の間滞っていた業務の後処理に奔走した週だった。
帰路の途中、疲れに耐えかねたのでコンビニで休憩することにした。いつものブラックコーヒーを車の中で飲むと、モヤがかかった頭の中が徐々に晴れていくような気がした。
16: ◆ncieeeEKk6[sage saga]
2020/05/19(火) 17:54:32.93 ID:U1swVBcn0
※
事務室の蛍光灯は窓側だけ点いていた。部屋中のどこを探してもバースデーパーティーの面影はない。光っている一部の蛍光灯がまるでスポットライトのように、ソファーに座っている誰かの後ろ姿を照らしている。
麗花だ。
17: ◆ncieeeEKk6[sage saga]
2020/05/19(火) 17:55:11.32 ID:U1swVBcn0
「私、寂しかったんです」
くぐもって聞こえることを差し引いても、聞いたことのない声音だった。もしかすると、今の麗花は見たことのない顔をしているのかもしれない。けれど振り返れない以上それを見ることはできない。
「プロデューサーさんと全然お話できなくて、全然会えなくて、寂しかったんです。プロデューサーさんがいつも飲んでるコーヒーを飲んでも、ただ苦いだけでした」
18: ◆ncieeeEKk6[sage saga]
2020/05/19(火) 17:55:37.83 ID:U1swVBcn0
だって、後ろを向いたままでは麗花を抱きしめられないから。
19: ◆ncieeeEKk6[sage saga]
2020/05/19(火) 17:56:16.71 ID:U1swVBcn0
「ぷ、プロデューサーさん……?」
麗花は驚いている。思えば麗花に抱きつかれることはあっても自分から抱きしめることはなかった。本当は、もっと早くこうするべきだったのかもしれない。
「大丈夫だ、麗花。もう大丈夫。ここ最近は、ちょっとタイミングが合わなかっただけなんだ。もう仕事の山は越えたから、明日からは普通に会える」
20: ◆ncieeeEKk6[sage saga]
2020/05/19(火) 17:57:05.92 ID:U1swVBcn0
「私、プロデューサーさんと一緒にご飯を食べたいです」
「ああ」
「一緒に、ドライブしたいです」
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