13: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/02/24(月) 19:14:10.93 ID:3k7Y9koF0
☆
そういえばあのあと、茄子さんが『くらげくん』シリーズの劇場版一作目を借りてきたので二人で一緒に観た。
14: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/02/24(月) 19:15:24.05 ID:3k7Y9koF0
もちろん、『火星の王子さま』も茄子さんと一緒に観た。
記憶にあるよりもずっと子供向けだったけど、意外にもけっこう楽しめた。
ただ、あの物悲しい結末だけは、子供の頃に感じた痛みとほとんど変わらない印象をわたしの心に再び刻んだ。
「……そっかあ」
15: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/02/24(月) 19:16:15.53 ID:3k7Y9koF0
☆
あの小宇宙のような六畳間の空間は茄子さんそのものだった。
16: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/02/24(月) 19:16:46.15 ID:3k7Y9koF0
☆
初めて茄子さんとお墓参りに行ったのはわたしたちが出会ってちょうど一年経った頃だった。
17: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/02/24(月) 19:17:50.54 ID:3k7Y9koF0
人気のない山林の奥、ひらけた場所に墓場はあった。
といっても、べつに墓石や十字架が建てられているわけじゃない。
言われなければ通り過ぎてしまうような、何の変哲もないただの空地だった。
今、その上には雪の絨毯が敷かれていて……
18: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/02/24(月) 19:18:57.87 ID:3k7Y9koF0
―――さく、さく、さく。
まるで違う国に来てしまったみたいに、ここは静かだった。
―――じゃく、じゃく、じゃく。
19: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/02/24(月) 19:19:52.55 ID:3k7Y9koF0
☆
「ほたるちゃんほたるちゃん」
20: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/02/24(月) 19:22:13.27 ID:3k7Y9koF0
☆
「――お先に失礼します。おつかれさまでした」
21: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/02/24(月) 19:23:29.60 ID:3k7Y9koF0
……わたしたちがそれぞれ別の道を歩み始めたことについて、その具体的な経緯ははっきりと覚えていない。
気が付いたらわたしはこの街に暮らしていて、あのアパートの101号室は空っぽになっていた。
けど、わたしたちが別れることになった理由やきっかけを語るのは実はそんなに難しいことじゃない。
わたしに言わせればそれは単なるタイミングの問題。
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