白菊ほたる「傘を弔う」
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17: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/02/24(月) 19:17:50.54 ID:3k7Y9koF0
人気のない山林の奥、ひらけた場所に墓場はあった。

といっても、べつに墓石や十字架が建てられているわけじゃない。
言われなければ通り過ぎてしまうような、何の変哲もないただの空地だった。
今、その上には雪の絨毯が敷かれていて……

「ちょっと待っててくださいね」

茄子さんはそう言うと、さきほど拾った傘の亡骸を下に置き、手袋を外した。
そして再び亡骸を持ち上げると、慣れた手つきで傘の骨を折っていった。
ぱきん、ぱきん、と軽やかな音が雪の林の中に響く。
わたしは茄子さんの手が雪に冷えて赤くなっていく様子をただ眺めていることしかできなかった。

やがてバラバラになった骨と皮が雪の上に丁寧に並べられて、そこでわたしはようやく口を開く。

「それ、どうするんですか」
「ここに埋めるの」
「え、そんなことしていいんですか? いろいろ……ほら、不法投棄とか」
「大丈夫ですよ。許可は取ってあるし、死んだ傘たちはちゃんと自然に帰りますから」

わたしは何も言えずに再び黙った。
茄子さんは背負ったリュックを降ろすと中から小さなスコップを取り出した。



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