白菊ほたる「傘を弔う」
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13: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/02/24(月) 19:14:10.93 ID:3k7Y9koF0



そういえばあのあと、茄子さんが『くらげくん』シリーズの劇場版一作目を借りてきたので二人で一緒に観た。

「……それで『火星の王子さま』はレンタル中だったので、とりあえず一作目を借りてきました」
「わ、なつかしいー」
「クレイアニメなんですね、これ」
「そうだったっけ……全然覚えてないです」
「じゃあさっそく観よっか♪ あ、ついでにおやつも持っていく?」
「あ、はい。わたしもお茶用意しておきますね」

茄子さんの部屋にはテレビがないので映画を見る時やゲームをする時はいつもわたしの部屋に来ることになっていた。
つまり実質的に茄子さんの第二の部屋になってしまっていたわけだけど、それを言ったらわたしも茄子さんの部屋に入り浸っていたからおあいこだ。

テレビとベッドと机以外にほとんど物がない部屋でわたしたちは『くらげくんと星の旅人』を観た。
本編が30分、短編が15分だったのですぐに観終わった。

「おもしろかったー」
と茄子さんは満足そうに言っていたけど、わたしは正直いってそこまで楽しめなかった。
全体的に不気味だったし、そのうえセリフがない映画だったのでお話もよく分からなかった。

「これ、本当に子供向けだったのかなあ」
「ほたるちゃんは子供の時に観たことあるんでしたよね?」
「たぶん……」
「でも確かに、ちょっと不思議な作品でしたね。実験的というか……」

茄子さんの言う通りだった。
あとで聞いた話によれば、劇場版一作目はその前衛的な映像表現によって非常なカルト的人気を誇っているらしかった。
くらげくんシリーズは、それこそ映画化するくらいには当時人気があったから、こんな難しい内容でもそれなりにヒットはしたのだという。
「でも結局見るのは子供しかいなくて、当時はあんまり評価されてなかったんですって」
「じゃあこういうのはほんとに最初の映画だけだったんですね」
「うん。でも私、この路線でずっと作ってほしかったなあ」

そんな話をしたのは茄子さんがいつの間にか『くらげくん』シリーズの映画を全部借りて観るくらいハマった後のこと。
まあ、視聴環境的にわたしも一緒に全部観るはめになったんだけど。


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