304: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 17:53:26.41 ID:ZRhpxi3E0
このみ「961プロから出場予定のアイドルもいたんだけど、出場を取り下げたのよ」
P「なんだって? 961プロにだって今年活動を開始した娘はいるのに……まさか、会場を爆破したりとかするつもりじゃないだろうな」
瑞希「なんでも、961プロは海外も既に視野に入れて活動をしており、今更日本予選などには出ない……と、黒井社長さんはおっしゃっておられたとか」
305: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 17:54:02.69 ID:ZRhpxi3E0
言い掛けて、プロデューサーは口をつぐむ。
この娘はここまで、こうやって登ってきたのだ。
止めない歩み、あきらめない心、それがあってこその紗代子なのだ。
P「……5回パフォーマンスをやるなら、順序も大事だ。最初はスローテンポの曲でいこう」
306: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 17:54:33.20 ID:ZRhpxi3E0
大会は進行していく。
紗代子の歌はやはり、観客や審査員の心を捉えた。
今や、劇場でも紗代子の歌声は名声を博しつつある。紗代子の歌目当てのお客さんもいるほどだ。
その歌を、表現豊かなダンスやフリが支えている。
彼女は疲弊しつつも、順調に勝ち進んだ。
307: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 17:55:37.96 ID:ZRhpxi3E0
司会「ここで皆様に、ひとつお知らせがございます」
四回戦終了後、残っているアイドルは5人になったところで、唐突に登壇した司会者が言った。
308: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 17:56:22.46 ID:ZRhpxi3E0
元気に答える紗代子だが、さすがに息があがっている。
一瞬、棄権しようかという思考がプロデューサーの脳裏をよぎる。
黒井社長が審査員である以上、紗代子はトータル得点で他のアイドルより10点は低く集計されることは間違いない。
そして今現在残っている娘は、全員が今年デビューしたアイドルの中でも、それこそトップの娘らだ。
1点の損失が命取りになりかねない。
309: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 17:57:56.07 ID:ZRhpxi3E0
P「なぜだ……」
紗代子「え?」
P「どうして紗代子は、そんなにも希望を持っていられるんだ……希望を捨てずにいられるんだ……どうして……」
310: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 17:58:27.49 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「プロデューサーに教わるまで、私はこんなステップどころか普通にダンスをすることもできませんでした」
P「? ああ」
紗代子「今は、歌えば歌声をほめられたりします。でも、発声の基本も、歌に気持ちをのせる方法も、プロデューサーが教えてくれました」
311: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 17:59:12.59 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「夢の、あきらめかたです」
312: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 18:00:43.90 ID:ZRhpxi3E0
P「!」
紗代子「私のプロデューサーは、将来を夢見たアイドルを引き抜かれても、周りからひどいことを言われても、それで心に傷を負って人前に出られなくなっても、夢をあきらめなかった人です」
P「俺は……」
313: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 18:01:10.31 ID:ZRhpxi3E0
P「わかった」
紗代子「え?」
P「今、わかった。俺は今、プロデューサーとしての真価を問われているんだ」
314: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 18:09:07.00 ID:ZRhpxi3E0
P「豊川さん、紗代子をお願いします。できたら可能な限り疲労を取ってやって欲しいんですが」
風花「わかりました。水分補給と、マッサージをしてあげてます」
紗代子「すみません、風花さん」
344Res/278.89 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20