高山紗代子「敗者復活のうた」
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308: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 17:56:22.46 ID:ZRhpxi3E0
 元気に答える紗代子だが、さすがに息があがっている。
 一瞬、棄権しようかという思考がプロデューサーの脳裏をよぎる。
 黒井社長が審査員である以上、紗代子はトータル得点で他のアイドルより10点は低く集計されることは間違いない。
 そして今現在残っている娘は、全員が今年デビューしたアイドルの中でも、それこそトップの娘らだ。
 1点の損失が命取りになりかねない。
 つまり、紗代子が優勝できる可能性はほぼ0だ。
 ここで身体を壊すような無理をすべきではないのではなかろうか……

P「紗代子、黒井社長が審査員になった以上、彼が紗代子に入れる点はおそらく0点だろう。だから……」

 プロデューサーが棄権という言葉を口にしかけたその瞬間、それより早く、紗代子は意外な言葉を口にした。

紗代子「じゃあ、今まで以上の……最高の歌声で歌う必要がありますね!」

 プロデューサーは、唖然として出るべき言葉がなかった。
 いや、紗代子のあきらめない心と、熱意はよくわかっている。
 だがそれにしても、それは現実を無視するものではないはずだ。
 それなのに紗代子は、まだあきらめていない。まだやるというのだ。

P「わかっているのか、紗代子!? 他のアイドルより10点のハンデを負って戦うんだぞ。あの娘らとだ!!」

紗代子「なら、他の審査員が10点以上! 11点や12点をつけてくれるような歌を歌うだけです!!!」

 どうかしている。
 どう考えても普通じゃない。
 しかし紗代子は、それでも輝く瞳で彼を見つめている。


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