249: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 16:38:46.37 ID:ZRhpxi3E0
瑞希が2人を連れてきたのは、いつぞや善澤記者が紗代子と瑞希を連れてきたカフェだった。
瑞希が善澤の名前を出すと、さして詮索もされず件の個室に3人は通された。
Shah「もしかしたら会えたりするかもとは思っていたけど、本当によーちゃんに会えるなんて! ネットで見たよ。アイドルとして、がんばってるんだ」
250: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 16:39:33.84 ID:ZRhpxi3E0
Shah「なんで……って、私のせいでよーちゃんがあの人の片棒を担がされて……やっぱり、あの人に脅されたりされてるの?」
紗代子「お、脅される!?」
瑞希「待ってくださいShahさん。話が噛み合っていません……脅されるとはなんのことですか?」
251: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 16:40:18.70 ID:ZRhpxi3E0
Shah「あの人……あのプロデューサー、私を脅迫してたの」
紗代子「きょう……はく?」
Shah「アメリカは訴訟に対しては寛容よ。だけど、脅迫となるとそれは別。明らかに反社会的な行為として咎められるわ。コーエンは事を重く見て、CIAに相談したって言ってた。国を跨いでの犯行予告だったし」
252: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 16:41:11.02 ID:ZRhpxi3E0
心配そうに紗代子を見ながら、それでも瑞希は聞く。
瑞希「当初は、ということは。その後が……あるのですか?」
Shah「ええ……しばらくすると、文章は妙に紳士的なものになったわ。でもそこから先は、一切がラングレーが証拠として管理をしだしたから、私はよく知らないの」
253: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 16:43:07.07 ID:ZRhpxi3E0
Shah「あの人は、今に見ていろ、俺の実力を証明してやる……なんの……なんの才能もないやつを、誰も見向きもしないような者を、俺だけの力でプロデュースしてトップアイドルにしてみせてやるからな……って……」
紗代子の顔から、顔色と表情が抜け落ちた。
涙すら出なかった。
凍ったように世界が止まった。
254: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 16:44:33.82 ID:ZRhpxi3E0
Shah「慰めのつもりじゃないけど」
ポツリとShahが口を開く。
Shah「私は、よーちゃんの実力も才能も信じてるよ。それから……あの人のことも」
255: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 16:45:25.45 ID:ZRhpxi3E0
Shah「あの人は、あの人なりに真剣だった。私に期待をしてくれていた。それに応える時間も機会もなく、私はアメリカに連れて行かれてしまったの……あの人は、私やコーエンを脅迫したかもしれないけど、あの人なりに傷ついた」
瑞希「……しばらく、人前には出られなくなってしまっていたそうです」
Shah「私は、自分のしでかした事を見ておきたくて、今日あそこへ行ったの」
256: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 16:46:58.96 ID:ZRhpxi3E0
紗代子とShahは抱き合い、別れた。
そして悲壮な表情で、紗代子は劇場に帰ってきた。
P「どこに行ってたんだ? これから……」
257: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 16:47:42.19 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「あの子を脅迫したっていうのは、本当なんですか?」
P「ま、待て。それは……あの時、俺はどうかしていた……」
紗代子「あの子を見返すために……自分の力を認めさせるために、私の担当になったんですか?」
258: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 16:48:56.08 ID:ZRhpxi3E0
紗代子を抱えるようにして乗り込んだ、帰りの電車内。彼女は一言も発しなかった。
瑞希も言うべき言葉がなく、黙っていた。
帰宅した紗代子を見て、さすがに母親は何が起こったのかはともかく、娘の精神状態は察し、黙って娘を自室に送る。
「わざわざ心配して送り届けてくれたんでしょ? ごめんなさいね」
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