162: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:43:37.78 ID:ZRhpxi3E0
P「なんだ……俺の早トチリか……良かった……」
紗代子「プロデューサー、もしかして私を心配して来てくれたんですか?」
プロデューサーの傍らに、紗代子は腰を下ろす。その顔つきは、心配と申し訳なさがない交ぜになっている。
163: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:44:56.58 ID:ZRhpxi3E0
P「いや、無事で何よりだ……」
青空がプロデューサーの目に映る。確かにいい天気だ。
もう人前に出ることもない。そう考えていた自分が、気がつけばここまで夢中でやって来て、空を見上げている。
それがなんだか可笑しかった。無性に可笑しかった。
164: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:45:22.08 ID:ZRhpxi3E0
麗花「じゃあ紗代子ちゃんは、お迎えに来た白馬の普通の人にお任せしちゃいますね」
P「べ、別に俺は1人で帰るつもりだ……が」
165: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:45:52.45 ID:ZRhpxi3E0
麗花「紗代子ちゃんのプロデューサーさんは、山登りをする人なんですね?」
この娘は、おそらく自分の服装や装備を見てそう思ったのだろう。
プロデューサーは、そう思った。確かにそれなりに準備をしたとはいえ、着ているものも持っている装備も、いささか年季が入ってはいるが、それなりのものだ。
166: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:46:21.03 ID:ZRhpxi3E0
北上麗花は、顔に風を受け微笑んでいた。
幸せな気持ちだった。
どうして紗代子が急に山に行きたいと言い出したのか、彼女はなんとなく言葉を濁していたが、彼女のプロデューサーに出会ったことで、麗花は全てを理解した。
167: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:48:13.37 ID:ZRhpxi3E0
麗花と別れた後、2人は駐車場に停めてあったプロデューサーの車に乗り込む。そして車が走り出しても、2人は無言のままだった。
それぞれ、お互いに話したいこと、聞きたいことはたくさんある。
だが、そのきっかけが掴めない。
168: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:50:04.55 ID:ZRhpxi3E0
P「いや、それはいい……んだが、そもそもなんで山に登ろうと思ったんだ?」
プロデューサーの問いに、急に紗代子は俯く。その頬は少し赤くなっている。
P「どうした?」
169: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:51:20.17 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「ひとつは、プロデューサーの言ってた事は本当だった、ってことです」
P「俺が?」
紗代子「必死な人の懸命な声は人の魂に届く、という話です。プロデューサーの私を呼ぶ声、聞こえました。確かに……」
170: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:54:34.95 ID:ZRhpxi3E0
P「いや、わかった。行くよ、明日は劇場に」
紗代子「良かった! 私、全力でがんばります。そして……」
P「え?」
171: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:55:47.52 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「小さい頃、いつも一緒に遊んでいた幼馴染みの女の子。その子と、約束したんです。2人ともアイドルになろうね、って。そして一緒のステージで歌おう、って」
P「そうだったのか」
紗代子「きっとあの子も、がんばっているはずです。だから、私も……」
172: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:56:13.89 ID:ZRhpxi3E0
P「今日のことや、そういうことを懐かしく話す日もあるかも知れない。だが、紗代子も俺もまだ道半ばだ。今はただ、目の前だけを見ていこう」
紗代子「……わかりました」
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