95: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 19:38:37.43 ID:nY0iWbpOO
「おはようございますっ!」
「おはよう美穂」
「ふふっ、良い天気ですね!」
96: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 19:42:07.18 ID:nY0iWbpOO
「すみませんね、美穂ちゃんと仲良くしてたところ邪魔しちゃって。今度の新年ライブの資料を確認しておいて欲しくて」
ライブの当日だというのに先のライブの資料にも目を通さなくちゃいけないとはな。
「あの、それと……風の噂で聞いたんですけど」
97: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 19:43:23.93 ID:nY0iWbpOO
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98: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 19:43:59.16 ID:nY0iWbpOO
「ハッピーバースデー! 美穂ちゃん!」
「わわっ! ケーキ!?」
本番のステージは冬の寒さに負けないくらいの熱気に包まれていた。アイドル、ファン、スタッフ。ここにいる誰もが美穂の誕生日を心から祝ってくれていた。美穂もそれを感じてくれていたはずだ。そんな中でステージの上にやってきたクマの顔を象ったケーキには驚きも一塩だろう。こっそり用意してくれた3人も満足げだ。
99: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 19:48:06.83 ID:nY0iWbpOO
「今日のライブすごく楽しかったです……! みんなにお祝いしてもらって……幸せです!」
ライブが終わり宴もたけなわ。気を遣ってくれた藍子達はタクシーで帰宅し、車の中には俺と美穂だけ。何の気なしにつけたカーラジオからはしっとりとしたクラシック音楽が流れている。
「あの、プロデューサーさん」
100: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 19:50:13.38 ID:nY0iWbpOO
「美嘉ちゃんが読んでた本に載ってたんです。冬の夜景が綺麗な場所だ、って」
それはいわゆるデートスポットの一つだ。カリスマギャルが買うような雑誌に載ってしまった時点で穴場という言葉は消えてしまう。俺たちの他にも何組かカップルがいたけどみんな星空と隣の恋人に夢中なようでこちらに一切の興味を向けやしない。アイドルの小日向美穂がいるぞ! と叫んでも然程気にはならないだろう。
「えっとあの星がベテルギウスだから……プロデューサーさん、冬の大三角形ですっ!」
101: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 19:54:22.72 ID:nY0iWbpOO
「東京でもこんなに綺麗に星が見えるんですね。熊本の星空が恋しくなっちゃうな」
「仕事がひと段落したら、一度地元に戻ろうか。親御さん達も美穂の話聞きたいだろうし」
年末年始は仕事が詰まって忙しいけど、それが終われば少しは時間が出来るはずだ。僅かな間でも地元の友達やご家族と過ごす時間を作ってあげないと。
102: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 19:56:41.62 ID:nY0iWbpOO
「そっか、お前アメリカに行くの断ったんだな」
数日後、俺は部長にアメリカ研修の件を丁重に断った。部長はそうか、と一言残してそのあとすぐインフルエンザから復帰したばかりの先輩に話を持ちかけたそうだ。
「俺もアメリカには行きたかったからな」
103: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 19:57:53.39 ID:nY0iWbpOO
「プロデューサーさん、お疲れ様です」
「お疲れ美穂。良い演技だったよ、監督も褒めていた」
「えへへ、練習した甲斐がありましたね」
104: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 19:58:28.36 ID:nY0iWbpOO
「……さて、申し開きは?」
「週刊誌の記事の、通りです」
明確なようで曖昧な関係に甘え続けた俺たちを待っていたのは一寸先の闇だった。大きなライブが終わったあと、俺の部屋に行きたいと言った彼女を招き入れる瞬間をパパラッチれていたんだ。うんたら砲だなんて頭の悪い言葉は面白おかしく拡散されて、願わない形で美穂はトレンドになってしまった。
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