小日向美穂「グッバイ、ネヴァーランド」
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104: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 19:58:28.36 ID:nY0iWbpOO
「……さて、申し開きは?」

「週刊誌の記事の、通りです」

 明確なようで曖昧な関係に甘え続けた俺たちを待っていたのは一寸先の闇だった。大きなライブが終わったあと、俺の部屋に行きたいと言った彼女を招き入れる瞬間をパパラッチれていたんだ。うんたら砲だなんて頭の悪い言葉は面白おかしく拡散されて、願わない形で美穂はトレンドになってしまった。
「やってくれたね」

「申し訳ありません」

 頭を下げる俺を部長は忌々しげに見ている。いつかの日、謝らなくていいのに謝った俺を彼は呆れながら笑っていたけど、俺の謝罪なんか一文の価値もないと言いたげに冷たい瞳だ。

「君が彼女を大切にしていたことは知っているし、君も彼女は理想的なアイドルとプロデューサーだった。だからこそ残念だ、アイドル小日向美穂の価値を、君が地に落としたのだよ」

 それからのことはあっという間だった。プロデューサーとしての大罪を犯した俺は左遷を命じられ、アイドルとしての信頼を裏切った美穂は女優としての道を歩むことになった。美穂にとって演じる仕事は一つの夢であった。だけどアイドルとして中途半端に終わってしまった彼女は、女優としてなかなか芽が出なかった。結局は心地良い関係に甘えた結果、俺たちは失敗してしまったのだ。テレビで見る助演女優の表情は憂いを帯びている。消せもしない後悔を抱いた、女の顔だった――。



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