20: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:36:47.15 ID:nY0iWbpOO
「プロデューサー殿! 悠貴殿! ご無事でしたか!」
「亜季!?」
ジープの運転席から飛び出すように降りた亜季はこの異常事態でも変わらずパッと敬礼をする。あまりにシームレスにされるものだから俺と悠貴もつられて敬礼してしまう。
21: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:37:53.55 ID:nY0iWbpOO
「プロデューサーさん! 悠貴ちゃん!」
「美穂! 無事だったんだな」
「はいっ。朝起きたら外がすごいことになってて、寮の子もほとんどいなくなってたんです……私、もう何がなんだか分からなくなっちゃって」
22: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:38:43.52 ID:nY0iWbpOO
「すみません、私は昨日早くに寝てしまったので……」
「私もですっ」
「私もいつも日付が変わる前には寝るようにしてますね」
23: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:41:07.54 ID:nY0iWbpOO
「まあ100円くらいで買えちゃうからあんま意味ないんだけどね」
「だけどそれが役に立つなんて、先輩さまさまだな」
「それは言えてる。ところで私も気になってたんだけど、その車どうしたの? 亜季さんのマイカー?」
24: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:42:00.90 ID:nY0iWbpOO
「とりあえず……他にも誰かいないか探したいけど頼みの綱がこれじゃあなあ」
携帯は圏外で使い物にならない。
「携帯電話、使えませんもんね。みんな大丈夫かな……」
25: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:42:36.84 ID:nY0iWbpOO
「あれ! 時計台が!」
美穂が指差す先には事務所のシンボルともいえる時計台は拷問器具と形容するのがふさわしいくらいに針が高速でグルグル回っている。これじゃあ時間なんてわからない!
「と、とにかく! まずは何か食べましょう! みんなお腹空いてますよね? 腕によりをかけて作っちゃいますよ!」
26: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:43:32.29 ID:nY0iWbpOO
結論から言うと、不思議なことに事務所の中は電気も水道もガスも生きていた。それどころか食材の備蓄も豊富にあり、賞味期限もまだ先だ。
「食は存外簡単に確保できましたな」
不本意ながらサバイバル状態に陥った俺たちだったが神様はそこまでエゲツない真似をする気はないらしい。食事と最低限のライフラインは用意してくれているようだ。
27: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:46:34.76 ID:nY0iWbpOO
「とりあえず手分けして周辺の散策をしよう。車が運転できるのは俺たちだけだな」
社用車は複数台あるが免許を持っているのは俺と亜季の2人だけだ。
「あのっ、私もゲームセンターのカーレースなら出来るから運転出来るかもしれませんっ」
28: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:47:07.85 ID:nY0iWbpOO
「いつかはまた2人での仕事もとってくるつもりでいたけど……」
カボチャよりもスイカの方がムードに合いそうな炎天下の中車を走らせる。いつも聞いていたカーラジオは何も流れず静かな車内というのは地味に新鮮な気持ちだ。
「なんだか、魔法にかかったみたいですね」
29: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:49:12.42 ID:nY0iWbpOO
「でもそれなら、美嘉ちゃんや他のMasque:Radeのメンバーがいないです」
ここにいるみんなと、いないみんな。あるなしゲームのような何かが共通点としてあるのだろうか。それにその中だと亜季の存在がイレギュラーだ。確かに以前美穂と一緒に廃校になる学校の思い出作りに行ったけど、そこで歌ったわけじゃないしそれならば奏がここにいるはずだ。
「……でも、亜季って美穂と同じ誕生日だった、よね?」
30: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:49:45.97 ID:nY0iWbpOO
「お疲れ様であります、プロデューサー殿。何か発見がありましたか?」
「いや、こっち側はずっと海しか見えなかった。それどころか、地図だとこの辺りか? そこから先は海で阻まれたみたいになっていて、進めなかった」
車を走らせて1時間くらいだったか。まるでゲームの背景みたいに大きな海が行方を遮って先に進めなかった。距離にするとどうだろうか。周りに船がある様子もなく、これ以上の探索は難しいと悟った俺たちは藍子のカメラに映った大きな鯨以外の土産を持って帰ることができなかった。
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