54:名無しNIPPER[sage]
2019/09/20(金) 23:24:15.64 ID:xAIihgQXo
待ってる
55:名無しNIPPER
2019/09/30(月) 22:49:11.89 ID:P1xDypFl0
じゃー……ちち、ち、ちっ、ちっ……。
プラスチックのかたかた鳴る音とともに、ルーレットが止まった。数字はまたも2。先ほどから1〜3しか出ず、それなのに必要のないところで8や9が出て、よくないマスへと突き進む。
「会社が倒産。500万支払う」。
56: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 22:50:07.53 ID:P1xDypFl0
しれっとした顔で不知火は言う。大局は既に決している。最初はやる気を奮っていた彼女も、今や消化試合を続ける面持ちで、けれど自らが誘ったという負い目からか、何とか私にそれを悟らせまいとする意地が見え隠れしていた。
人生ゲームは果たして二人でやるゲームだったろうか。いや、結局は私が弱すぎるのが悪いのだ。というよりも、不幸すぎるのが。
完全情報ゲームならばまだしも、不完全情報でここまで差が開いてしまうのは、逆に申し訳なくなってしまう。
57: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 22:51:18.12 ID:P1xDypFl0
「色々持っているのね」
感心してしまう。
58: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 22:53:29.09 ID:P1xDypFl0
玉を握った私が先手だ。7六歩。まずは角道をあける。
「ポーラは読めません。荒唐無稽と言いますか、一貫性がないのです。ちまちま稼いでると思えば急に全財産を賭けてみたり……酩酊の為せる業なのかもしれませんね。
グラーフはいかにもドイツ流です。確率を計算し、期待値通りに動きます。定石のある場面ではきちんと定石を打ってくる。場面によってぶれない。質実剛健とは彼女のためにあるような言葉ですね」
59: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 22:55:44.15 ID:P1xDypFl0
「一番強いのはグラーフさん?」
「いえ」
60: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 22:56:54.93 ID:P1xDypFl0
その気持ちを少し考えてみて、わかるようなわからないような、不思議な気分になる。たとえば姉さまが急に幸福の連続に見舞われたとしたら、逆に心配になるだろう。そののちに不幸な目に遭ったとき、喜びさえ覚えるかもしれない。
酷薄だという非難は尤もだが、てんで的外れでもあった。変わらない日常が何よりも貴重である――そんな使い古された文言は、当然この世のすべてではないけれど、少なからず使い古されてきたなりの重みや実感を伴う。
ぱちん、ぱちり。
61: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 22:58:48.62 ID:P1xDypFl0
後藤田提督は頭を掻きながら、先ほどまで不知火が座っていた場所へと腰を下ろす。安物のスツール。私だけがベッドに横になっていることが申し訳なくなるくらい。
大きなひとだった。肩幅が広い。背丈もある。筋肉、特に首筋から胸元にかけてが丸太のようだ。事務仕事を主とする艦娘相手の提督には珍しいタイプ。
「体調はどうだ」
62: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 22:59:39.56 ID:P1xDypFl0
後藤田提督は頭を掻きながら、先ほどまで不知火が座っていた場所へと腰を下ろす。安物のスツール。私だけがベッドに横になっていることが申し訳なくなるくらい。
大きなひとだった。肩幅が広い。背丈もある。筋肉、特に首筋から胸元にかけてが丸太のようだ。事務仕事を主とする艦娘相手の提督には珍しいタイプ。
「体調はどうだ」
63: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 23:02:57.05 ID:P1xDypFl0
後藤田提督は頭を掻きながら、先ほどまで不知火が座っていた場所へと腰を下ろす。安物のスツール。私だけがベッドに横になっていることが申し訳なくなるくらい。
大きなひとだった。肩幅が広い。背丈もある。筋肉、特に首筋から胸元にかけてが丸太のようだ。事務仕事を主とする艦娘相手の提督には珍しいタイプ。
「体調はどうだ」
64: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 23:04:14.81 ID:P1xDypFl0
「うちの?」
「俺たち『浜松泊地』のことを」
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