207: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/03/15(日) 12:43:55.33 ID:lzhGd5a70
「はいはーい! 本当に時間ですよー!」
だから、佐世保の次席である吹雪が手を叩いてみなの時間を進めたとき、私は率直にほっとしたのだった。助けられたような思いがしたのだった。
吹雪はけれど慣れっこなのだろう。よく見れば佐世保の艦娘たちは、困った顔こそしているけれど、驚愕に目を見開いてはいない。吹雪が夕立の脚を引っ張って移動させているうちに、呉、パラオ、そして私たちと、先頭について案内を買って出る。
208: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/03/15(日) 12:44:48.01 ID:lzhGd5a70
「凄かったわね」
パラオの霧島だった。眼鏡の奥の瞳は興奮に濡れている。
209: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/03/15(日) 12:45:18.20 ID:lzhGd5a70
在り方、か。
それは妙に、私にとってもクリティカルな言葉だった。
「誰にだって在り方の一つや二つ、あるものだと思うわ」
210: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/03/15(日) 12:46:08.49 ID:lzhGd5a70
艦娘などその殆どがわけありだ。疎外やら機能不全家族やら賎民やら。しかし同時に、霧島の弁を借りるとするならば、それはあくまで運命である。「なるべくしてなった」。
それだけではひとは生きてはいけない。運命の導きが果たして本当にあるとして、結局我々は、あるべくしてあらねば生きていけないのだ。
組織に入った理由が、そのまま組織に居続ける理由になる必要はない。
211: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/03/15(日) 12:46:56.03 ID:lzhGd5a70
「CSAR、でしたっけ」
「え? あ、はい」
212: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/03/15(日) 12:48:08.62 ID:lzhGd5a70
――――――――――――
ここまで
無駄に設定に凝りだすのが設定中の背負った業。
213:名無しNIPPER[sage]
2020/03/15(日) 16:30:19.64 ID:qqLVo0cco
お疲れ様です
舞ってる次回
214: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/03/21(土) 10:46:20.24 ID:pQ00XHC/0
少し、飲みすぎてしまったかもしれない。日本酒党の私は、ポーラの持ってきたワインとは相性があまりよくないようだ。優れない気分を立て直そうと、夜風にあたるべく、大淀を起こさないように部屋を出る。
廊下は薄暗い。ぽつぽつ等間隔で夜照明に照らされている。当然ながら、人気はない。
と、脚が停まる。私は自分が佐世保の鎮守府にいることを思い出したからだ。例えば不用心に出歩いた結果、赤外線のセンサーに引っかかって警報が鳴る……最悪侵入者とみなされて撃たれては困る。
215: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/03/21(土) 10:55:54.20 ID:pQ00XHC/0
ということは、恐らくではあるが、外に出られないことはないらしい。まぁ当然か。周辺海域の見回りに緊急出動など、青葉ではないけれど、夜討ち朝駆けは艦娘の常套。そのたびにいちいち警報を切るのはあまりにも面倒だろう。
見るからに怪しいところに近づかなければ問題あるまい。研究所とか、備品庫だとか。そう判断して、私はふらふらと、階段を下りていく。
外に出るための扉には施錠はされていなかった。単にいつもそうなのか、それとも先ほどの空母が内鍵を開けたのか。
216: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/03/21(土) 10:58:22.80 ID:pQ00XHC/0
「あ」
先客がいた。こんな夜更けだというのに胴着さえ身に着けて、弓を構えている。確か夕食時は私服だったはずだ。また着替えたというのか。
さきほどの人影の正体がわかると同時に、一体なぜ、なにをしにここへ、といった疑問が湧いてくる。彼女は夕食後の宴会を早々に退散していたはずである。酔い覚ましとは考えにくい。
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