14: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:21:00.56 ID:FCK0uUJh0
「うーん、もしそうだとしても一応規則ですからね。お手数ですけれど、確認と書類を作成しますのでご協力いただけますか」
「……まあ、いいですけど」
「申し訳ありません。ああ、そちらのお兄さんも。ちなみにそちらの方が持っている携帯電話で間違いないですか?」
15: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:21:35.34 ID:FCK0uUJh0
(……いや、これは完全にヤバい思考だ。ないな、うん、ない)
そろそろ暴走し始めていたので理性で押さえつけ、落ち着かせるために交番の天井を見上げる。無機質な白の天井。防音材か何かかは分からないけれど、所々穴が開いている。あれは何のためにあるのだろうか。
そんな取り留めもないことを考えていると、お巡りさんが二枚の紙ぺらを俺と、少女の方へ差し出した。
16: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:22:02.09 ID:FCK0uUJh0
『大丈夫ですか、これで。なんか不足とか……』
「ええと、特になさそうです。ご協力、感謝いたします」
『いえ、こちらこそお手数をおかけしたようで。ありがとうございました』
17: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:22:29.07 ID:FCK0uUJh0
『ありがとう。ケータイ、拾ってくれて』
その言葉に、彼女は一瞬だけ足を止めて、そして軽くこちらを振り向いた。ちらりと目が合う。胡乱だと思っていたその目はじっと俺を見据えている。……なんてことだ、胡乱なんて、とんでもないじゃないか。
彼女は微かな笑みを浮かべ、じっとこちらを見ていた。少なくとも俺にはそう見えた。そして射貫かれるような鋭い視線の中にあった、“良かった”なんていう安堵の色。
18: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:25:17.64 ID:FCK0uUJh0
本日はここまでになります。
また数日中には続きを投稿する予定です。
ありがとうございました。
19:名無しNIPPER[sage]
2019/08/01(木) 23:26:58.97 ID:6IDlGcD20
お帰り
7人目から読み返してくるかな
20:名無しNIPPER[sage]
2019/08/01(木) 23:46:34.39 ID:b9owjELd0
楽しみにしてます。
21: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:46:54.43 ID:FCK0uUJh0
書き忘れていましたがトリップを忘れて発行しなおしています。
以前は◆m03zzdT6fsでした。
>>19
ありがとうございます、覚えていてくださって恐縮です
22: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/08(木) 18:57:31.89 ID:caute9RW0
□ ―― □ ―― □
23:名無しNIPPER[sage]
2019/08/08(木) 18:58:07.48 ID:caute9RW0
『……消せねえ。消せねえよ』
俺はまた嘆息した。もちろん、この画像を使ってどうのこうのなんてするつもりは全くない。そんな気持ちは微塵もないのだ。
それでも名状しがたい罪悪感が存在する。そしてその罪悪感があってなお、消したくないという俺の身勝手が俺の自己嫌悪を加速させる。いっそのこと、ケータイを見つけてくれたのが彼女でなければ。そんな失礼な事さえ思い、さらに自己嫌悪。
24: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/08(木) 18:59:01.76 ID:caute9RW0
(……分かってる、そんなことはないんだって)
そうとも、きっと彼女とはもう二度と逢うことはない。この巨大な都市の中で、ほんの一瞬だけ交差した縁。ただそれだけの事。
それでもやっぱり、聞かずにはいられないんだ。自分の何もかも一切合切を投げ捨てたっていい。こんな”持たざる者”の持てる限りを、あの少女に賭けてみたい。
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