モバP「持たざる者と一人前」
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16: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:22:02.09 ID:FCK0uUJh0
『大丈夫ですか、これで。なんか不足とか……』

「ええと、特になさそうです。ご協力、感謝いたします」

『いえ、こちらこそお手数をおかけしたようで。ありがとうございました』

 そう言って一気に立ち上がる。もうすでに彼女は交番の外へと出ていた。急いで、後を追う。

 いた、交番からほんの数メートル。いまにも雑踏に溶け込もうとしている彼女の姿。

『あのっ!』

 彼女は応えない。もう、イヤホンを耳につけているのかもしれない。でも言わなきゃ。

 何を? 俺の連絡先? 名前を教えてほしいっていう思い? スカウトの言葉?

 ――違う、そうじゃあない。いま伝えなきゃいけないのはそうじゃない。俺は息を吸い込んで、そして言った。決して大きくはないけれど、万感の思いを込めて。



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