【ミリマス】馬場このみ『衣手にふる』
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229:(8) ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/11(木) 22:07:12.95 ID:E/BVepxA0

このみがふと莉緒の方を向くと、そこで莉緒と目が合った。
莉緒は、なにやらニヤニヤと微笑んでいた。

「な、なによ。莉緒ちゃん。」
以下略 AAS



230:(9) ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/11(木) 22:08:12.12 ID:E/BVepxA0

『春の嵐』。
春香がかつて主演を務めた舞台の名前だ。
この舞台は、その頃の春香が世間から注目を集めたきっかけの一つで、後のアイドルアワードの受賞にも繋がったとも言われている。
アイドル天海春香が持つ可能性を女優という新たな領域で示した、と当時評されていたのを、このみは覚えている。
以下略 AAS



231:(10) ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/11(木) 22:09:06.30 ID:E/BVepxA0

莉緒の言葉に、春香は、何かあったかな……といった様子で考え込んだ。
しかし、少し経ってから、何かを思い出したように、ゆっくり話し始めた。

「ええと、上手く言えないんですけど……。私が舞台に立ったとき、『演技って本当に人それぞれなんだ』って。……そう、感じたんです。」
以下略 AAS



232:(11) ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/11(木) 22:09:46.98 ID:E/BVepxA0

莉緒は首を傾げながら、このみに聞く。
このみは一瞬言葉に詰まり、少しの間考えを纏めるような素振りを見せた。

「莉緒ちゃん、前に雪女の役をやった事があったでしょ?……私、鶴を演じるのに、最初の頃は莉緒ちゃんの雪女をイメージしながらやってたの。」
以下略 AAS



233:(12) ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/11(木) 22:10:33.56 ID:E/BVepxA0

このみは莉緒と春香を見つめて、そう言った。
その声は、まるで誓いを立てるかのように真っ直ぐで、芯が通っていた。

「莉緒ちゃんの雪女は、普段の莉緒ちゃんとは全然違う子だけど、すごく莉緒ちゃんらしくって。
以下略 AAS



234:(13) ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/11(木) 22:11:01.44 ID:E/BVepxA0

このみは、前を見た。
そこには変わらず、莉緒と春香がいて、いつもと同じ高さで目と目を交わした。
二人は何だか嬉しそうだった。

以下略 AAS



235:>>219の続きからです ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/11(木) 23:52:05.51 ID:E/BVepxA0
***

あのオーディションまでの日々から何か月かが経ち、季節も移ろいでいた。
年は明け、1月も後半に差し掛かった頃で、劇場のまわりには乾いた寒風がぴゅうと音を立てて吹いていた。

以下略 AAS



236: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/11(木) 23:52:31.56 ID:E/BVepxA0

扉を開けると、ピアノの音に支えられた、透き通った歌声たちがこのみの元に飛び込んできた。
舞台袖からは、まつりたちがステージ上に投げかけられた一筋のライトに照らされ、歌っているのが見えた。
 瞳の中のシリウス──貴音、まつり、美也、海美の4人が織りなす透明な世界には、
風吹く冬の夜の冷たさだけではなくて、心が融けだしていくような、そんな暖かな輝きがあった。
以下略 AAS



237: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/11(木) 23:52:57.93 ID:E/BVepxA0

舞台袖は、劇場のアイドルたちや、公演を支えてくれるスタッフたちで一杯だった。
アイドルたちは、何人かで集まって自撮りしていたりする子たちもいれば、進行表をチェックしに来た子や、次の出番に向けてダンスのステップを確認している子もいて、様々だった。
このみがなんとなしに辺りを見回すと、スーツを着たプロデューサーと目が合った。

以下略 AAS



238: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/11(木) 23:53:24.17 ID:E/BVepxA0

このみの着ている衣装は、しんしんと野に降り積もる雪のような、まっさらな白を基調とした和服だった。
袖には白地に赤と黒の模様があつらわれていて、それは白い翼を携えて雪の上で佇む鶴を思わせた。
胸の帯には、椿の花が凛と咲いていた。
衣装の名前は、『鶴翼紅華衣』。
以下略 AAS



239: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/11(木) 23:53:50.54 ID:E/BVepxA0

この公演は、「最後の公演は、舞台の演劇とリンクさせるようなものにしたい」というこのみ自身の希望からだった。
しかし、公演が実現できたのは、舞台の制作側の好意によるところも大きかった。
舞台の脚本・演出との綿密な擦り合わせをした上で、舞台の制作チームの要求する水準を担保する、という条件の下で、ようやく公演の許可が下りたのであった。

以下略 AAS



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