【ミリマス】馬場このみ『衣手にふる』
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196: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:16:35.16 ID:9DhA16vx0

このみはもう、彼のその言葉の先に何があるかを知っていた。
逸る気持ちに胸が高鳴ることを自覚しながら、このみは彼を見て、確かめるように呟いた。

「そ、それって……。」
以下略 AAS



197: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:17:44.90 ID:9DhA16vx0

「例え大切な人と会えない日が続いても、
 次会える日まであと何日だろう、って数えてみたり、
 どういう服を着ていこうかな、って考えてみたりするのも楽しくて。
 しばらく会えなかったとしても、その会えなかった日の分だけ、会えたときにほっとして嬉しくなる。
以下略 AAS



198: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:18:21.38 ID:9DhA16vx0

このみには、あの心地良い歓声が聞こえてくるようだった。
気が付けば劇場のみんなと舞台の上に立っていて、大勢の観客たちの前で歌を歌っていた。
ふと前を見れば、色とりどりの光の向こう側に、特別な人たちがいた。
一人、また一人と、ステージからの光に照らされるようにして、大切な人たちの顔が見えた。
以下略 AAS



199: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:19:11.33 ID:9DhA16vx0

胸の中にずっとしまい込んでいたものがあった。
本当はそう信じていたかった。
でも、もし違ったら。そうでなかったのなら。
……傷つくのが怖くて、ずっと見て見ぬふりをしてきたのかもしれない。
以下略 AAS



200: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:19:59.87 ID:9DhA16vx0

劇場のステージで、大切な人たちへ想いを届けようとしたはずなのに、いつだってそれよりもっと大きなものを貰っていた。
私は、自分の気持ちをいつも伝えられずにいて、受け取ってばかりだ、と。ずっと、そう思っていた。
だけど、今はもう分かる。
私がずっと伝えたかった想いは、きちんと私の大切な人たちに届いていたんだ。
以下略 AAS



201: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:20:38.26 ID:9DhA16vx0

声を詰まらせながら、このみは自問するようにそう呟いた。
ただ、このみはその答えが何であるかを既に知っていた。
知っていたから、涙が溢れて止まらなかった。

以下略 AAS



202: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:21:33.39 ID:9DhA16vx0

指で涙を拭いながら、このみはゆっくり顔を上げた。
差し出されたハンカチを受け取りながら、このみは声をもらした。

「……ごめんなさいね、プロデューサー。私……。」
以下略 AAS



203: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:22:27.11 ID:9DhA16vx0

「そ、それは……。」

彼は右手で、ぐしぐしと自分の涙を払った。
それから、彼は指先を頭に当てて小さく呼吸をした。
以下略 AAS



204: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:23:18.24 ID:9DhA16vx0

ぽたり、ぽたりと雫が落ちた。
シャツの袖口は、一つ二つと、どんどん濡れて色が変わっていく。
えぐえぐという声を漏らす彼に、このみの涙がまた頬を伝っていった。

以下略 AAS



205: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:24:16.97 ID:9DhA16vx0

彼がいくら手で拭っても、涙は止まらなかった。
このみは、自分の手の中にあった彼のハンカチを見た。
しかし、そのハンカチはもうこのみの涙で濡れてしまっていた。
このみは、横に置いてあった自分の鞄に手を差し入れて、そこから一枚のタオル地のハンカチを取り出した。
以下略 AAS



206: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:24:56.73 ID:9DhA16vx0

それから、幾ばくかの時間が過ぎた。
彼は時折、深く息を吸ってみたり、目をぎゅっと瞑ったりしていた。
しばらくしてから、彼は顔を上げ、ゆっくりした調子で言った。

以下略 AAS



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