8:名無しNIPPER
2019/05/25(土) 23:41:28.44 ID:9lPtmwgdO
バスの後を追って、私も徒歩で南下していく
くねくねと曲がるS字の道路のせいで、このあたりの道路は直線距離で考える以上にずっと時間がかかる
じりじりと照り付ける太陽は、私の長い黒髪に集まり、焼けるような熱を纏わせてくる
9:名無しNIPPER
2019/05/25(土) 23:41:55.68 ID:9lPtmwgdO
T字になっている交差点の横断歩道を越えた所で、スタートの準備をする。
足を半歩先に、体を前に。脇を閉めてスクールバックを体に寄せて固定する
アスファルトを蹴り上げる。後ろ脚を発条仕掛け玩具の様に弾ませて、私はランニングを始めます。日に焼けた地面の照り返しも無視して私は、目的地へと一直線に駆け出して行きました
10:名無しNIPPER
2019/05/25(土) 23:42:29.48 ID:9lPtmwgdO
千歌さんの実家が見えてきました、その右手には砂浜も広がっています
幾度となく練習した、思い出の砂浜です。いつだったか、手を取り合っ夕陽の中海へ入ったことも有りました
木の枝や、石の多く落ちたこの砂浜は、満ちては引いてを繰り返す波によって染められていました
11:名無しNIPPER
2019/05/25(土) 23:42:55.32 ID:9lPtmwgdO
水族館を越えた先のトンネルの入り口まで、私は一切のスピードを落とさずに走って来ました
洞窟の中は朱色で照らされていて、まるで日常とは切り離されたようでした。暖色に鈍く光る照明がどこか息苦しさを感じます
狭い歩道の中、私はまだ、走り続ける
12:名無しNIPPER
2019/05/25(土) 23:43:31.99 ID:9lPtmwgdO
トンネルを抜けて、再び海が見えてきました。もう目的地は目と鼻の先です
私は、脚を回すのを辞めません。体を駆動する度に、スピードをが上がっていく、その感覚がいやに心地良かったのです
キラキラと煌めく海が、私の心でした。
13:名無しNIPPER
2019/05/25(土) 23:44:00.42 ID:9lPtmwgdO
年甲斐もなく、はしゃいでしまいました。それも、家の中でも無く、道すがらで
私が思うに、思い出とは押し花の様な物なのだと思います
本棚の奥、忘れ去られるような場所に隠されていても、何かの拍子に不意にそのページを開いた時、その香りと色が胸に去来するのです!
14:名無しNIPPER
2019/05/25(土) 23:44:33.82 ID:9lPtmwgdO
ひとしきり眺めて、私は海に背を向けます。目的地はこの海では無く、その後ろにあります
私の生家、町の外れの古くからある館の様な家が、私の生まれ育った家です
車を通り過ぎるのを待って、道路を渡る
15:名無しNIPPER
2019/05/25(土) 23:45:05.24 ID:9lPtmwgdO
おわり
16:名無しNIPPER[age]
2019/05/26(日) 01:48:10.35 ID:+L0S41Nvo
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17:名無しNIPPER
2019/05/26(日) 20:47:42.28 ID:RQvizXvlO
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18:名無しNIPPER[sage]
2019/05/27(月) 11:42:45.00 ID:vrS9ehZJ0
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