51:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:49:08.49 ID:D/gZfYJM0
――――。
あたし、また何かやっちゃいましたか?
なーんて、流行りの言葉では言うらしい。
52:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:51:54.42 ID:D/gZfYJM0
「夕美……どうか、落ち着いて聞いてくれ」
事務室の応接スペースで、プロデューサーと夕美ちゃんが向かい合わせに座っている。
昨日、ようやく連絡が取れて、夕美ちゃんがここに顔を出すのも久しぶりだ。
53:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:58:17.36 ID:D/gZfYJM0
「分かっています」
小さい声でボソリと呟き、夕美ちゃんは顔を上げた。
言葉遣いにさえ、普段の快活なカンジはどこにも見当たらない。
54:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:01:40.95 ID:D/gZfYJM0
「推論が正しくないのなら、その証拠を提示しなければならない。これを反証とゆー」
二人の間のテーブルに、週刊誌の上から座り、あたしは夕美ちゃんに向けて首を傾げてみせた。
55:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:03:14.19 ID:D/gZfYJM0
「は?」
彼の口から間抜けな声が飛び出す。
顔を上げた夕美ちゃんも、一層の驚きに満ちた表情だ。
56:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:05:42.40 ID:D/gZfYJM0
1階のガレージに着き、扉を開けると――。
「うわ、くっっせぁ!!」
クサいとはなんだ。
プロデューサーは相変わらずこの匂いが好きじゃないらしい。
57:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:11:08.80 ID:D/gZfYJM0
あたしはプラケースに手を置き、二人を交互に見た。
「夕美ちゃんが、このピンクのキンモクセイの開発実験をしていたことにする」
58:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:13:43.49 ID:D/gZfYJM0
「じゃあ、ピンクの小物も身につけてよ。ピンクのキンモクセイを開発する理由の裏付けにもなるし」
あたしが冗談で言ってみると、プロデューサーは少し狼狽えた。
「う、ぬぬ……よし、とりあえず手帳とスマホケースはピンクにしてみるか!」
59:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:39:53.87 ID:D/gZfYJM0
まだ駆け出しで、全国ネットに出てくるようなアイドルではないことが幸いしたのかも知れない。
メディアが大きく取り上げるのは専らイケメン俳優の方ばかりで、夕美ちゃんへの注目度は想定していたほどではなかった。
しかし、ネット上ではかなり辛辣な意見が飛び交っている。
彼らにとっての問題は、有名かどうかではなく、安心して叩けるネタかどうかなのだろう。
60:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:42:16.40 ID:D/gZfYJM0
留意しなきゃいけないのは、あたしが用意した“真実”は、極めて薄氷に近い代物だということだ。
例えばの話、ライブイベント当日に事務所に引き籠もっていたはずの夕美ちゃんに関する目撃情報がどこかであった場合、一発でアウトである。
それは、あるいは不倫疑惑そのものをシロにする証明にはなり得るが、同時に、間違いなくあたし達の“真実”をクロにしてしまう。
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