一ノ瀬志希「ほころび」
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53:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 21:58:17.36 ID:D/gZfYJM0
「分かっています」

 小さい声でボソリと呟き、夕美ちゃんは顔を上げた。
 言葉遣いにさえ、普段の快活なカンジはどこにも見当たらない。

「そのためには、私がPさんに、本当の事を言わないといけないんですよね?」

 プロデューサーは、少し苦しそうな顔をしながら、黙って頷いた。


「この写真の人は、私じゃありません」

 週刊誌に視線を落とし、夕美ちゃんは言った。


「それじゃあ夕美……お前はこの日、どこにいたのか、教えてもらえるか?」

 糾弾するつもりは無い、ってさっき言ったじゃん。
 なーんて――茶化せる雰囲気じゃないよね。


 夕美ちゃんは、顔を上げた。
 とても悲しそうな顔だった。

「……どうしても、言わないとダメですか?」

 その返答に、プロデューサーは大いに狼狽えた。
 首を掻きながら「いや」とか「あの」とか、必死で言葉を探している。



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