37: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:46:19.03 ID:HvshuUb/0
それは自分という人間がすぐ傍に居ることを解って貰いたいと願うように。
その知らせを告げる風が彼女の頬をくすぐるように。
38: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:47:29.49 ID:HvshuUb/0
言って、美也が桃子の頭に頬を寄せる。
それに対し、腕の中の少女は遠慮するように身じろいだ。
39: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:48:23.73 ID:HvshuUb/0
そんな私が見守る中、美也は改めて桃子を抱きしめた。
長く、長く、今までで一番力強い抱擁を受けたらしい桃子が、
自分の身体に回った腕へ、おどおどとした両手をそっと添える。
40: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:49:44.53 ID:HvshuUb/0
そして、だからこそ私だって彼女に伝えなくてはいけない。
この世には何を置いても形にしておくべき事柄というモノが確かに存在するのだから。
41: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:50:39.82 ID:HvshuUb/0
「でも、そうすると桃子ちゃんは? 今どんな気持ちでおりますかな〜」
さらには美也がいつかのように問いただすと。
42: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:51:52.87 ID:HvshuUb/0
だが、その目線はしっかり私を捉えていた。
ならば私も彼女を見つめ返し、真剣な気持ちで応えなくてはいかん!
43: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:52:55.26 ID:HvshuUb/0
「ん、まぁ、そうかもしれない……」
「……お日様も無くちゃ困るけどね」
44: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:54:46.46 ID:HvshuUb/0
===
さて――誠に勝手な事ながらも、その後に続く小騒動の仔細は敢えて省かせて頂きたい。
……いや、別にやましいことは何もないが、これ以上はある種のオフトーク。
45: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:55:46.84 ID:HvshuUb/0
「――それでプロデューサーは畳の上に?」
「他にドコに寝ろって言うんですか? まさか二人の間に挟まれなんて――」
46: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:57:13.58 ID:HvshuUb/0
とはいえ――私が美也たちと会場を抜け出してから暫く。
彼女から話を訊いた限り、どうやら突如として主役の消えた宴も時間と共にお開きを迎え、
今となっては参加者達も三々五々の体で家路についてしまったと言う。
47: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:58:23.07 ID:HvshuUb/0
「いいえ、不思議とそういう苦労は何も。
ただ運転できる人間の都合上、あずさの車に乗ることになった気の毒な子達が何人か。
――それもこれも、貴方にわたくし専属の運転手である自覚が足りないせいですわ」
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